妄想遊戯のガールズスキャット9

「大切な物は目に見えない」


 私はベッドの中でwikipedia等を見ながら星の王子さまを読了しました。子供向けの本だけあって読み終わるのは簡単でした。


 しかしカエルちゃんの求める答えはこれでは無いでしょう。


 大体私たちは大切に抱えている妄想が目に見えてしまうのですから…いやさすがに作者もイマジン持ちの事まで考えて書いてくれるわけないでしょうけど。


 生きる目的は大切な物だから目に見えない。


 なんともしっくりこない。まぁご丁寧に答える前に、ケイがカエルちゃんを殺してしまえば問題無いでしょう。元々ケイがカエルちゃんを一度殺してるみたいですし、人殺しの葛藤なんてあって無いような物でしょう。


 なんで生きているのか?

 それが解ったらきっと私は率先して死にに行くでしょう。


spring『私はミカエルと対峙する気は無いよ』


 ケイと美春さんは険悪みたいなので私が代わりに連絡してみました。私としては珍しいほどに自主的な行動です。

 基本的には干渉しないと言う事は、基本的でなければ協力することの裏返しと判断するのが正しいでしょう。


minori『どうしてですか? 前は三人仲良く金髪幼女をボコボコにしてたんですよね?』

spring『凄まじい語弊のある表現を使うわね。事実を端的に述べるならその通りだけど、でも今回は協力しない』

minori『それはケイの事が嫌いだからですか? ケイは貴方が仲間を殺したと言っていました』

spring『干渉しないと決めたからだよ。私ではケイの事を救えない。でもみのりちゃんなら救えるかも知れない。だからケイの事を頼むね。本当に危なくなったら私も行くから、それまではみのりちゃんが頑張って』

minori『やっぱり美春さんは優しいですね』


 笑顔のスタンプを送りつけて会話を強引に終了しました。美春さんは何か他にも言いたい事があるみたいですが、無視することにしました。


 私の中で美春さんは友達ではありません。干渉してこないと解っているのでこれ以上楽な相手もいないでしょう。


 翌日わたしはすみれちゃんに星の王子さまの感想を言い合ってました。やっぱりこの世はくそったれですね。と


「みのりちゃんはひねくれてるよ」

「素直に思った事を言ったのに」

「薔薇の事とか、星であった人に対してなにか思わなかったの」

「だからくそったればっかりですね。と」


 私もこんな奴らの仲間入りする日が来ると思うと反吐が出てきます。


「やっぱり感じ方が違うから話してて楽しいね。私は可愛そうな人達だなって、自分はそういう人間にはなりたくないなって思ってた」


 くそったれだと思うなら、なりたくないと思うのが確かに普通な気がしました。どうして私はそのくそったれと同じ存在になると確信していたのでしょうか?


「本当にそう思うんですか?」

「うん」


 嘘偽り無さそうです。


「私は友達達と会話をするために相手の喜びそうな言葉ばっかり選びました。相手と合わせることばかり考えて生きてきました」


 それが楽だから、それが友達だと思っていました。


「でもすみれちゃんはそれが楽しいんですか」

「うん。読書って読む人がいて初めて完成するんだよ。そして読んだ人によって物語が違うの。だからとっても楽しいよ。今まで人とこんなに本について話すことなかったもの」

「そうですか」


 なら友達と言うのも悪く無いのかも知れません。


 私は用事があると言ったのですが、すみれちゃんは一緒に帰る事に固執しました。まぁいいか。と思いすみれちゃんも駅前まで連れて来てしまいました。   


「友達? どうも鬼瓦ケイでーす」

「江藤すみれです」


 まぁぶっちゃけこの二人が仲良くする姿は想像できませんね。プリン頭になりかけたケイの頭を見ただけですみれちゃんときたら私の袖つかみっぱなしですし。


「じゃあねすみれちゃん。私ケイと約束があるから」

「さようなら」


 すみれちゃんは深くお辞儀をしながら来た道を帰っていきました。


 と、その時でした。巨大な蜘蛛みたいな機械生命体が人を食い荒らし始めたのです。


「レベル2かな。しかもかなり意図的に引き起こされた」


 私がキャロに変身している合間にケイがマシンガンで打ちまくり蜘蛛を瞬殺しました。

残骸もすぐに消失していき、残ったのはキャロのコスプレをする恥ずかしい少女だけでした。


「カエルちゃんが、私にも挨拶しに来たって事かな」

「さすがケイですね。瞬殺でした。やっぱり殺し合いをしてきただけあって手慣れていました」


 私はキャロのイメージを構築するのにそこそこ時間が掛かってしまいました。もしかしたら変身直後に一発攻撃を食らっていた可能性があります。


「みのりは戦い始めたばかりなんだ。そんなに焦らなくても大丈夫。私がいるから」


 むしろ私に頼ってくださいと言わんばかりの顔でした。せっかくなので頼りにします。

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