妄想遊戯のガールズスキャット6
その夜私はエタマジをケイとしながらぐだぐだと会話してました。
minorri『美春さんって人と会いました。昔は殺人鬼と戦ってて大変だったんですね』
megu『まじかよ。あいつなんか言ってた』
minori『あったことを伝えるのと、よろしくって』
ケイは露骨に不機嫌そうな顔をしたスタンプを送ってきました。
minori『ケイは美春さんが嫌いなんですか?』
megu『あいつが殺したんだ。仲間を』
ケイと美春さん。この真逆の感情は何があったんでしょう。
そしてもうひとりの仲間。
私は聞くべきだったのでしょうか? クラゲとしては深入りしてはいけない部分に思えました。
イマジンによる連続殺人はもう終わり、美春さんはストレス解消をして、ケイは妄想に巻き込まれる人を助ける慈善作業をしている。
うん。私が知ってるのは今のケイ。だから今のケイだけ知ってれば良いんだ。
ケイとのエタマジが終わると、またエタマジをすることになりました。今度はスミレちゃん。
初めて一日とは思えない物量。私もドン引きレベルの課金を行っているのが解ります。
violet『エタマジ始めましたけど凄く面白いです(*^_^*)』
minori『つまらないって話の為に始めたのに……』
でもプレイスタイルは初心者同然で一緒に始めたクエストも失敗。コツやポイントも教えながらやったのですが、やっぱりビギナーには難しいみたいですね。
violet『失敗しちゃいました』
minori『また次頑張ろうか』
ここが学校なら負けた犯人捜しです。
そうか。そういうのが無いならこのゲームも悪く無いですね。
ここはベーリング海の海でも人の荒波でもないです。失敗しても良いんだ。失敗しちゃいけないってみんなが縛り付けてくるだけで。
violet『でも、ミノリさんのキャラが』
minori『いいよ別に。どうせゲームだから次がんばろ』
そっかこれが友達なんだ。
私に初めて友達が出来た気がしました。
学校に行くと、私の友人グループに一名たりませんでした。
「京子っておやすみ?」
「みのり何そのギャグマジ受けるんだけど、ホラー映画? そんな奴いねーし」
グループの中心になっている子が笑いながら言いました。
えぇホラーですよ。ただしリアルの。
京子は私の友達グループの一人でした割とがさつな方で、死ぬような妄想をしている様子はありませんでした。と言うかまず妄想すらしていないのでは無いのでしょうか。バレー部に所属していて、毎日楽しそうにバレーしてましたし。
私とは対極的に人間の荒波を乗り越えていける人間向けの性格をしていました。さてそんな彼女がどうして世界の認識に喰われたのか…
思い当たるのが嫌だ。私はクラゲになりたい。
お昼休みを友達グループから抜け出してすみれと図書室の庭で一緒に食べます。友達ごっこの続きです。
「すみれちゃんはこういうの楽しいですか?」
「はい」
「私は食べながら喋るのってあんまり好きじゃないんですよね。食べるのか、喋るのか、口は一つしか無いのにどうして並行作業しなくちゃいけないんですか?」
そう言うとすみれちゃんはクスクス笑い始めました。
「笑うところですか?」
「うん」
何がツボか解った物ではありませんね。
すみれちゃんのお弁当はコンビニで買ってきたサンドイッチでした。
「オカズの交換とかもしたかったなぁ」
と言われたので私はすみれちゃんが食べてるタマゴサンドを横からパクつきました。
「駄目でしたか?」
私はお弁当の玉子焼きを献上しました。卵と卵であんまり交換する意味が無い気がしますが。
これはごっこ遊び。
でも、友人グループ達といるよりもよっぽど楽な気分。
だって生きていたくないって気持ちをスミレは解ってる。私もスミレが孤独でどうやって友達作って良いか解っていないのを知ってる。
そこに壁みたいなのがなくって―――壁の向こう側にいるみたいに。ごっこ遊びとは言え私はそこに居ても良いんだって気分が思えました。
それでも、いつか私も壁を作ってしまうのでしょう。それが友達だから。
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