妄想遊戯のガールズスキャット5
町で大爆発が起こっても気にしなくなりました。と言うかよく爆発します。リア充が多すぎる件について論文でも書きたい気分になります。面倒なので絶対にやりませんが。
しかし今回の爆発はちょっとだけ違いました。銀行が爆発してました。
その爆発してる中から少女が大金かついで一人で運び出していました。
少女は黒いロングのメガネで長髪でいかにも優等生って感じでした。と言うかケイと同じ学校なので間違い無く優等生です。黒いストッキング艶めかしいです。
まぁ犯罪妄想なら別にいいか。本当にやってるわけでも無いのに。優等生には優等生ならではのストレスというのがあるのでしょう。
と思ったら少女が大金担ぎながらこっちに来ました。
「あなた世界に選ばれているのね」
メガネをぐいっと押してから私をじろじろと見ました。失礼ですねこの人。
「貴方は世界につながってると鬼瓦ケイさんから教えて貰いました。貴方も世界と繋がっている人なんですね」
でなければ私にわざわざこんな話とかあり得ませんよね。
「鬼瓦ケイ……あぁメグのことか」
「本当はメグって言うんですか? 私はエタマジのキャラ名をメグにしてるのしか知りません」
確かに鬼瓦ケイって名前はイカツ過ぎます特に鬼瓦の部分が。
黒髪優等生ちゃんは柄にも無くげらげら笑い始めました。
「そっか、ケイがわざわざ言うわけ無いわよね。私とケイは基本的には不可侵。お互いにお互いがすることに極力干渉しない、世界に選ばれた人間が何人もいると世界をねじ曲げかねない。それに今ケイのしてる事は面白い。私も便乗しよう」
「どういうことですか?」
「内緒。私とケイは不可侵。だから教えない」
「そう言われると気になります」
黒髪優等生ちゃんは大金の入った袋をまだ燃えている銀行に放り投げた。銀行は何事もなく営業を再開しました。
「二人も世界に選ばれたのがいると何が起こるか解らないからとりあえず戻す。ストレス解消も済んだことだし昔話を少ししよう。それぐらいは教えてもケイだって怒らないはず」
私の一歩前を進み始める黒髪優等生ちゃんが振り返りました。
「私は永原美春よろしく」
私たちはファストフードのお店に入ってお互いにコーヒーを注文しました。うるさすぎる店内の中で妄想の話をしても誰も聞いてはいないでしょう
「ちょっと前にね。この能力を使って悪用する奴がいた」
「悪用ですか? 妄想が現実に反映されますから確かに大金持ちになれたりとかできそうですね。と言うかしていいですか?」
これなら友達どころか両親無しでも暮らせます。何故今まで思いつかなかったのか不思議なぐらいです。
「あぁ、それ私もやろうとした、現実世界に定着させるのが難しいからやらない方がいい。常識的に女子高生は大金を持ってないし、銀行強盗もしない。そのおかげで私はストレス解消ができる。常識のおかげで無茶苦茶しても元通り」
「さっきのですね。よくやってるんですか?」
「けっこうやってる。明晰夢って知ってる?」
「いえ」
「ようするに現実みたいな夢の事、私はこの能力はそういうものだと思ってる。意図的に明晰夢を起こせる能力。ええと――」
「大杉みのりです」
「みのりちゃんも色々出来るでしょ」
私は解りやすく説明するためにキャロへ変身して見せました。
「キャロか可愛いよね」
「エタマジやってるんですか?」
「今は詫び石でガチャだけしてる」
あぁ私もそういうゲーム生活がしたい……
「まぁそこそこ戦力はそろってるから後でフレンド登録しよう。そこそこ役立つと思うから」
「ありがとうございます」
エタマジの流行具合には感謝しかありません。
「昔さ。イマジンを悪用して人殺しする奴がいた」
「そんな事できるんですか?」
確かに私の妄想に死にかけていていましたが、それはあくまで私が死にたいと思っていたからにすぎません。
自殺と人殺しは違います。
「どういう理屈でやってたのか未だにわかんないけどソイツは強引に人の妄想を引っ張り出して人を殺してまわっていたんだ。いくら殺しても存在ごと消滅するからソイツには都合が良かったんでしょう」
「でもおかしくありません。さっきの美春さんみたいに無かったことにしてしまえばそれで十分ですよね」
少なくとも私はそうします。
だってストレス解消で殺すのが目的なら別にその後生きていても構わない訳ですし、不必要に人の数を減らす理由もわかりません。
私には解りませんが、夢に向かって一直線の人だっているでしょう。
私たちにそれを踏みにじる権利がどこにあるのでしょうか?
「私だってそうする、ケイだってそうした。でもソイツは頭がおかしかった。存在しない方を現実に反映させる事にこだわった」
「どうして?」
「そんなの私が聞きたいわよ。だから私とケイともう一人が手を組んでそいつの存在を無くすしか無かった。その時にもう一人がソイツと相打ちになった。平和にはなったけど、私とケイが一緒にいるともう一人の子の事を嫌でも思い出す。だからお互いに極力会わないようにしようって決めた。これが相互に干渉しない理由。それでも私にあった事は伝えておいて。よろしくって」
ケイと美春さんともうひとり。
きっとそこには本当の友情があったんだろうと思います。
ゲームの世界でモンスターを倒すのとは違う。存在をかけた戦いの中で育まれた友情が。
「美春さんはケイの事お嫌いですか?」
「まさか、でもケイは会いたがらない。私たちがいたらもう一人の子の事も思い出す。それよりみのりちゃんがケイとどうやって出合ったのか教えて欲しいな」
私はケイとの出会いや、その後の特訓やエタマジの話をしました。
「あの子まだエタマジやってるのか……元気そうで何より」
「そうですね。美春さんがケイの事大好きなのもわかりましたから」
美春さんがコーヒーを吐いた。
「ご、ごめんなさい」
美春さんがそう言いながら刺繍の入ったハンカチで周りを拭いた。悪いのはいきなりへんな事を言った私なのに。
「おかーさんみたいな好きでした」
「うん。見ていないと何しでかすかちょっと解らない所がある。好きだ。私ケイの事けっこう好き」
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