第2話 幽霊が見える少年
ーー此岸。
俺は佐伯陽士。なんてことはない幽霊とは死神とかが見えること以外なんも取り柄のないただの東京の私立高校に通う十七歳だ。
俺には先に言ったように幽霊とは死神とはが見える。つまり霊感があるってことだ。それのおかけで幽霊には助けを求められることが多々ある。
今現在その状況にある
「この辺に落としたのか?」
陽士が目の前のちょっと後ろが透けて見える幼女向かって言うと幼女は、
「うん・・・たぶんこの辺に落とした」
半泣きになりながら言った。
幼女は幽霊でこのビルと女の子系の洋服店が建ち並ぶ道路で一週間前に交通事故がありこの幼女はその交通事故に巻き込まれた。そのときに持っていたお母さんから貰った大切なくまぬいぐるみを落としたらしく陽士が偶然ここを通りかかったら声をかけられ、今捜索中なわけだ。
「うーん・・・見つからないなぁ」
陽士は、うんうんうなりながら歩道の道路側に置いてある花壇の後ろを見たり、中を覗き込んでみたり、植木の木に登って枝をかきわけてみたりといろいろやっているがなかなか見つからない。
「ほんとうにここで落としたのか?」
陽士は隣にいる幼女に向かって問いかけるが幼女は半泣きのまま首をかしげるだけだった。
もしかしたら一週間前の交通事故にあったとしたら記憶が薄れているのかもしれない。長らく幽霊がその場いると記憶が薄れてやがてなにもかも忘れてしまう。自分がなぜここにいるのかもわからなくなる。
「うん。しょうがない。あの道に行ってみよう」
「誰に話しかけてるの?」
「え?」
陽士は隣にいるはずの幼女に話しかけたつもりだったが、他の人にも聞かれていたようだ。というか忘れていた。この幼女は幽霊で俺以外には見えないということを。
陽士は声のしたほうへ向くとそこにはクラスメイトの如月由香が立っていた。
「如月。あ・・・いや、ちょっと捜し物でつい独り言」
「ふーん。私随分前からここにいたけど誰かに話しかけてたよね」
如月由香は、陽士のクラスメイトで小学校から一緒だ。そんなに一緒でも俺のこの霊感のことは話してはいない。
「あー・・・気にしないでくれ。ただの独り言だよ」
「・・・・そっか」
陽士が誰が見ても苦しい言い訳を冷や汗を浮かべながら言うと由香は不審な顔をしたがとりあえず納得してくれたようだ。
「じゃ、私も手伝うよ。何を探してるの?」
由香が陽士と同じように花壇の脇にしゃがみ込んだ。
陽士は笑みを浮かべて、素直に礼を言った
「ありがとう。くまのぬいぐるみなんだが」
由香はその台詞を聞くなり腹を抱えて笑い出した。
「男子がくまのぬいぐるみを探してるって・・あははは!」
「な、なんだよっ!ってか誰も俺のとは言ってねぇーっ!」
由香の笑いに陽士は顔を赤らめ怒鳴る。
その台詞を言ってから後悔した。俺のじゃなかったら誰のだと言おうかと悩んだからだ
「ふーん・・じゃ誰の?」
その当たり前の質問に陽士は慌てた。
(どう答えたら・・・)
そうとう慌てている陽士を見て由香はちょっとからかいすぎたかな、と思ったが、こうやって慌てている陽士はおかしくてついからかってしまう。陽士自身は自分が誰にも見えないものつまりは幽霊とかそういう類のものが見えていることを隠しているつもりようだがはっきりいって全然隠しきれていない。誰から見ても隠しているとは思えない。
でもそれがわかっていても陽士自身が隠そうしているなら何も知らないふりをする。
(だって友達だしね。)
由香がそんなふうに思っている間陽士は、必死になって頭をフル回転させていた。
どう答えたらいい・・・?如月には俺に妹がいないことは知っているから妹のだとは言えない。苦しいがしかたない・・・
「さっきの辺であった女の子がぬいぐるみを落としちゃったみたいで・・」
「そっか。じゃ早く探そうよ」
「おう!」
「お兄ちゃん・・」
由香とまた捜索を再開しようとすると陽士の後ろにいる幼女がぽろぽろ涙をこぼしながら陽士のこと呼んだ。
陽士は、由香がいるため声をかけることはできないためさり気なく後ろを向いて笑みを浮かべる。幼女は涙を拭いて笑った。
一時間以上二人は捜し回った。辺りはもう日が傾きかけていた。
「やっと見つかった・・・」
陽士と由香は、道路から小道に逸れた所にある公園にいた。ずっとくまのぬいぐるみを探して道路を歩き回り、もしかしたら小道に落とした可能性があると由香が指摘したため交通事故おあったすぐそばに公園に続く小道があったのを思い出し、そこへ向かったのがつい十分ほど前だった。
公園に着いたらすぐに見つかった。ぬいぐるみがあったのは公園のベンチの下だった。
「これだよね?」
由香は、そのぬいぐるみを持って陽士に問いかける。
陽士は、隣にいる幼女に視線を向けると幼女は・・・・
「うん!これだよ!良かった。ありがとう、お兄ちゃん!」
と、言って光りの粒になって消えた。
「これだよ。ありがとう、如月」
陽士は笑って由香に向かって言い、由香はどういたしまして、と言ってそこを離れた。
帰路につく由香を見えなくなるまで見送って交通事故のあった道路に戻ってガードレールのそばに置いてある数本の花が入った花瓶のそばにくまのぬいぐるみを置いた。ここに置いてある花瓶は交通事故にあった人に対しての弔いの気持ちに置かれた花だ。その花の前で手を合わせ目を閉じる。
しばらくそうした後陽士はその場を離れ、帰路についた。
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