第44話 2087年12月30日 全米連邦ニューメキシコ州 レジェンドオブニューメキシコ本社
全米連邦ニューメキシコ州、新興軍需産業レジェンドオブニューメキシコの本社内にて、閉め切った中層階の役員会議室の円卓の中心には平机に青年の回答者がノートPCを見つめたままに、そして11人の質問者の英語と妙訳なマシーン翻訳語が飛び交って行く
マシーン翻訳語と英語が入り交じる、無粋な円卓席より次々と
「まさか、あれが破壊されるとはね、」
「どうかな、衛星への信号が途絶えただけでは無いか、」
「生憎だが、今のタイミングでは全米最高議会に袖の下を送れない、どう申し開きするんだ、」
「結局は、沈黙せざる得ないか、」
「まあ、噂では全米海軍がきっちり回収したと聞く、今動いては失策だよ、」
「まあだ、未だ我らに追求が及ばないって事は、さすがはミス階上、完膚無き事だろ、」
「結局、破壊されるしかないか、」
「そう言うな、今回もデータは結構取れた、実験機位安いものだ、」
「いいえ、火星の転送データに大範囲でバグが有ります、最後辺りは特に修復不可能ですね、」
「破壊された最後が大切じゃないのか、全く、やる気のある極道に貸与したのに折角のハンドメイドが不意になったね、」
「いや、破壊出来た実績があるなら、暴走も止められる、充分商材として成立する、」
「全く、これ以上のアップデートなんて嬉しい限りだね、」
「そうだな、あと三回程、模擬戦に投入出来れば、完成なのかね、」
「それもどうかね、お伺いもせずに、全米政府から叱責されないものの、そろそろ控えてはどうだ、」
「構わんよ、現段階の黙認は、全米に納品を認めるって証拠だ、」
円卓から辺り構わず、ハイタッチが連なる
円卓中心の平机に座る一張羅の四方、ノートPCから徐に視線を上げ、日本語とマシーン翻訳語が対に
「皆さん、そうでしょうか、コードネーム:ネオハンマーキュービック、階上村での組み上げ改装は順調そのものでしたが、起動は見届けたものの、たった二時間でロストでは、あの全米最高議会が承認しますかね、二時間の応戦では決してペイ出来ませんよ、」
議長席のレジェンドオブニューメキシコCFOのハット、壮年の精悍な顔つきのままで、英語とマシーン翻訳語が対に、そしてくすりと
「Dr.四方、いや徹夜工事のアーティスト名が秀逸だが、その話は酒の席で聞こう、」ただ真摯に「良いかね、皆にも言っておくが、よく聞き給え、レジェンドオブニューメキシコ製はただ巧みだよ、如何にも未完成品扱いでは議論にもならないね、君達はネオハンマーキュービックを売り捌くのだから、普段から心して貰いたいね、」
不意に会話が途切れる役員会議室
四方、投げやりにも
「その割りには、上家衆に敵いませんでしたね、良いですか、彼等の噂は全て本当ですよ、些か呑気過ぎませんか、」
ハットCFO、ふわりと
「Dr.四方、上家衆には、最高の敬意を払うが、我々レジェンドオブニューメキシコは今や一大軍需産業の一角を担うのだよ、たった一基の破壊なんて、誰が気にも止める、何れも想定の範囲内だよ、ローラー作戦の運用上、その一基位、何ら問題無いよ、皆の手前そうしたいが、如何かな、」
四方、ただ円卓をぐるりと見渡し
「さて皆さん、やっと確認出来る、何処かのミサイル攻撃による沈黙で気が大きくなっていませんか、その前にあの強固なジャミングを突破したなんて、想像も出来ませんよ、それも踏まえてのネオハンマーキュービックの現在の価値ですが、そこからの適正評価にしませんか、」
ハットCFO、両拳を固めるも透かさず
「いいや、我々の気は大きくなっていない、よくあるバグの叱責はしないよ、Dr.四方、そういう事だろう、」
四方、ただ苦笑のままに
「この先もイプシロン計画を進めるなら、抜本的な運用プログラムの改変が必要ですが、ハットCFO、そう返答されますか、」ノートPCの電源ボタンを押しては画面を閉じ「はい、私へのお気遣いありがとうございます、お歴々の集まりの中で恐縮ですが、私の契約もここまでにしましょう、よろしいですね、」きりと
ハットCFO、大仰に
「たかがバグの露見であるのに、日本人は何事も律儀だね、良いだろう、慰労金はかなり上乗せさせて貰う、」
四方、立ち上がっては凛と
「それならハットCFO、この場で決裁頂けますか、これでも八戸の三つの隠れ家へと貯蓄全額投入してしまったので、無一文なんですよ、レジェンドオブニューメキシコの契約も終了となると、総本社ビル地帯から退去しないといけません、ホームレスでは研究もままなりません、」
ハットCFO、くしゃりと
「Dr.四方、その世の為の頭脳放ってはおけない、良いだろう、」自らスマートフォンのアプリを操作しては送金完了へと
通知音と共にスマートフォンを見つめる、四方
「これは、こんなに貰って良いのですか、」
ハットCFO、微笑しては
「ああ、レジェンドオブニューメキシコ本社とは別に、私のプライベートコーポレーションから感謝をかなり込めさせて貰った、如何かな、」
四方、深く一礼しては
「ハットCFO、そしてレジェンドオブニューメキシコの役員の方々、ありがとうございます、また機会があれば、お声を掛けて下さい、」
ハットCFO、大仰に首を横に振り
「Dr.四方、レジェンドオブニューメキシコに敗残兵はいらないのだよ、分かるかい、レジェンドオブニューメキシコは唯一無二の軍需産業なのだよ、それ乗り越え悟る前に自ら去るのは非常に悲しい事だ、」
四方、ただ一礼し
「ハットCFO、ごもっともです、そのプライド、今後の人生に役立てたいと思います、」
ハットCFO、両手を重ねながら
「Dr.四方、手厳しいと思うだろうが、全米連邦の中華侵攻作戦は常に最上位課題なんだ、ここはレジェンドオブニューメキシコの立場を是非共配慮して貰いたい、何度も言うが、新製品の対戦記録にミスがあってはいけないのだよ、分かるね、Dr.四方自らのイージーミスは決して見逃せないのだよ、君の崇高なプライドはもう結構だ、」
四方、あからさまな呆れ顔のまま
「ハットCFO、くれぐれも配慮しましょう、レジェンドオブニューメキシコに栄光を、」
ハットCFO、右手を胸へと合わせ
「謹んでお受けしよう、レジェンドオブニューメキシコに栄光を、」
一同、同じく右手を胸へと合わせ
「レジェンドオブニューメキシコに栄光を、」
四方、ただ一瞥しては、
「それでは失礼します、」ノートPCを床のボストンバックに無造作に入れては持ち上げ、役員会議室を後にしようと
ハットCFOから発し、皆、自ずと起立しては拍手喝采を送る中、毅然と後にする四方
ハットCFO、漸く着席し、ただくすりと、未だ英語とマシーン翻訳語が対のままに
「だから、日本人は最高だろ、」
「全く、第三次世界大戦で旧中華に本州深くに侵攻され、負け寸前だったのに、勝った気でいやがる、ジャップは面の皮が厚いな、」
「それは言うな、様子見していたアメリカの話が蒸し返される、」
「それが高じて、サンクトペテルブルク公国に乗り換えたか、大股広げて待つのが上手い国だよ、」
「言うな、下品だぞ、」
「東南アジアの接待が無くなれば、熱り立ちもしよう、」
「俺は帰りの自家用ジェットで、取っ替え引っ替えはめまくりだよ、」
「お前だけが、そうだと思うな、」
ただ下卑た笑いが、役員会議室に響き渡る
「おいおい、どこで格安の東洋人養えるんだ、紹介しろよ、」
「淫乱婆の素任大佐は死んだが、先鋒たるバイヤー依然といるものだよ、」
「全く、会議の最中もそれか、大いに尊敬するよ、」
「そうだ、ある程度の自由恋愛は必要だ、金の使い方が分からなくなってしまう、」
「それもこれも第三次世界大戦さ、緩んだたがは、そう簡単に元には戻せない、」
ハットCFO、大手を広げては
「諸君、ビジネス再開だ、ここからは全米の根回しに集中しよう、もう一歩だよ、自社開発でここまでの精度なら、喜んで全米も調達しよう、」
「おいおい、ハット、自社開発って、Dr.四方は無かった事にするのか、」
「Dr.四方は、はした金に目が眩んで出て行った、一時の仲間とは言え寂しいが、話はそれまでだ、」
「小娘と日本人は使い様だな、」
ただ爆笑の渦の役員会議室
ハットCFO、口角を上げては
「いいかね役員諸君、そもそもDr.四方なんてこの世にいるのかね、私は甚だ疑問だよ、」
その冷笑に堪らず冷笑で返す一同
レジェンドオブニューメキシコ社敷地内の欺瞞的な大型公園レジェンド育成公園、日陰のベンチに佇む日本人二人
ハンチング帽の中年の鼻筋の通った日本人の男が、取り澄ました視線そのままに
「四方、よくも生きて帰れたものだ、」
四方、ただスマートフォンをコンソールモードへと移し替えながら
「根津さん、レジェンドオブニューメキシコはあれでも軍需産業ですよ、極道の事務所と違います、ただ、ここを出たらどうか分かりません、送金された際にスマートフォンのデバイス情報抜き取ったみたいです、私が何処にいるかばればれですよ、ハットCFOを始め、役員全員のプライベートコーポレーションガサ入れしたら凄い事になりますよ、」
根津、はきと
「そこは今、平がおおわらわだ、四方を通じて得た情報で、キャンピングカーで奮闘してるよ、」
四方、ふと
「もうやる気ですか、たった今辞めた、私が真っ先に疑われるますよ、」
根津、くしゃりと
「そうは言っても、このタイミングしかないだろ、良いから任せろ、四方の名前は出さん、そうだな、国際証人保護プログラムで四方を保護したら、出るわ出るわの大悪事、ここ大凡事実だろ、そうだよ、レジェンドオブニューメキシコの全世界本社支社かなりえげつない連中ばかりだぞ、第七次東南アジア事変で接収した牧場の認証解析したら、あいつらアバター用意したつもりだろうが、そこは平と明神の最高にバッドなコンビ、いや湧きに湧くね、」
四方、不意に
「性癖とビジネススキルは別物ですよ、」
根津、大仰にも
「おいおい、四方、お前間違いなく殺されるんだぞ、何で庇う、」
四方、神妙にも
「レジェンドオブニューメキシコの生産ラインは侮れません、ここで解散させられては、折角の技術職人が散ってしまいます、」
根津、ごっそり力が抜け
「言うね、麦秋旧中華全米の三重スパイが、」
四方、ふわりと
「さすがお詳しいですね、ですが結果としてあと二つ追加して五重スパイですよ、国際証人保護プログラムから一転逮捕しますか、とは言え全世界でプログラマー不足ですから、つい私も国家相手の相談を聞いてしまいますよ、どうです根津さん、行く行くは大雑把過ぎて、流石のネーデルラントインターポールでも嫌疑不十分になるのは目に見えてますよ、」
根津、くすりと
「四方、語り過ぎだよ、そこいらにマイクロフォンあるんじゃないのか、」
四方、はきと
「ご心配無く、この開放的な公園、暇があればペッティングしてますから、耐えられずにマイクロフォン切ってますよ、」
根津、ただ神妙に
「そこ内定班がうんざりしてるよ、街の噂じゃ、ここは盛り場そのもの、新手のカモフラージュか、」
四方、神妙に
「夏になれば、私有地公園だからって、何処も彼処で一糸まとわず励んでますよ、もっともレジェンドオブニューメキシコの社員が大半ですからFBIに逮捕要請もしないようです、本社地域で2万人強いますから、今更モラルを強いる事もままならないようですね、」
根津、くしゃりと
「愉快な話はそこまでにしておくか、それで四方の身分保障だが、ベルギー公族のともの第二公女の勅命の国際証人保護プログラム適用有りきだ、それに四方の思惑はどうあれ、今の所主管先の麦秋の龍舜女帝も人格者だ、事は荒立てたくない、ここはネーデルラント連邦の三公族の思惑そのままだから、当分は大人しくしてろ、と言うか、ここで意見一致するなら、普段からそうしてくれよな、そう思うだろう、」
四方、ただくすりと
「根津さんも三公族にそのまま板挟みですか、」
根津、真摯に
「2075年のルーベンスの『キリストの埋葬』の聖画盗難事件をきっかけに、ベルギーが機関停止していたインターポールをネーデルラントインターポールへと提唱し、再び復権だ、山県局長から末端まで隈無く、ベルギーのともの第二公女から真っ先に相談される為、実質ネーデルラントインターポールの現体裁はネーデルラントの冠付き、三公族の御意見も伺わないとな、」
四方、遠い視線で
「それ、オランダの五郎八第一公女が人事遵守院を牛耳っていますから、ねじれ現象生じますよね、」
根津、はきと
「いや、どちらかと言うと、ルクセンブルクの派遣が厄介だろ、何せ、プロイセン立憲連邦発ルクセンブルク経由から超優秀な役人送り込まれては、国策指導のそれだ、プロイセンの工房にかなり頼っている面もあるから蔑ろには出来無いしな、」
四方、神妙に
「それ、ベネルクス共立公国動乱再びになりません、」
根津、はきと
「だからこそ、ネーデルラント発企業の推奨でGDPを上げ、トリプルスコアのプロイセンに物申せる立場にならないとな、そう、本題になるが、ここは近い内に巷の話題に上がるが、世界最強のコンシェルジュ、ネーデルラントプルデンシャルファイナンスの評価止まる事が無いと、三公族がやっと踏んだからだ、ネーデルラントプルデンシャルファイナンスも今やネーデルラント連邦の筆頭企業だからな、更なる発展の為なら、四方の便宜なんて幾らでも通すさ、」
四方、懐かしくも
「ネーデルラントプルデンシャルファイナンスも大繁盛ですか、まあ、今度もサーバーの増設には立ち会いましょう、またJacketzのジャガイモ料理食べれますね、」
根津、はきと
「そこは頼むぞ、ベネルクス共立公国からネーデルラント連邦への過程における動乱で、電話回線パンクしては、アムステルダム丸ごとシャットダウンさせたからな、国策インフラの脆弱振りは二度と見せられない、」
四方、神妙に
「ですから、ルクセンブルクに演算施設移設しましょうと進言しましたよね、防壁もいざとなればプロイセンの回線借りれるんですよ、」
根津、うんざり顔で
「知るか、五郎八第一公女が、オランダ公族御用達企業をお膝元から離すと思うか、まあ、言っては身も蓋も無いが、五郎八第一公女の我が儘がそのままスキームになってるから、誰も何も言えん、お前の主任技術官のプレゼンでも、はいの二つ返事は決しては貰えんよ、」
四方、ただ悩まし気に
「五郎八第一公女ですか、ログ全部見ましたよ、流石はネーデルラントプルデンシャルファイナンスのコンシェルジュと褒めるべきですね、あの要件全てに答えられませんよ、」
根津、思いも深く
「そこの電話回線は平が率先して電話に出るが、それも1/5の筈だろ、コンシェルジュにどうな教育したら優秀になるんだ、全く平も、いつまでローマ参画政府監査部に席を置くんだ、ネーデルラントプルデンシャルファイナンス取締役いや行く行くは社長に任命されないだろ、」不意に宙を仰ぐ
四方、暫し宙を見上げ
「機影、気になりますか、」
根津、はたと
「否が応にもな、この爆音が止まないのは何故だろうな、あそこの本社連中には聞こえないものか、」ただ視線を正面の本社ビルに送る
四方、ふわりと
「消音装備は勿論機能していますが、キャンプルートなので今更誰も気にしませんよ、とは言え、あの機影の大きさ、ネーデルラントインターポールも容赦無いんですね、」
根津、慄然と
「おいおい、違う察し方止めろよ、良いか勘違いするな、容赦無いのは全米最高議会だ、レジェンドオブニューメキシコ、こんな狂犬飼いならせると思うか、」
四方、吐息混じりにも
「だからと言って、ここらの平野一帯絨毯爆撃ですか、私も脳のシールド処理しているとは言えオートマシーン化は嫌ですからね、」
根津、はきと
「俺だって嫌だよ、痛いのは嫌だって、」
四方、徐にボストンバッグを持つ仕草も
「それだったら、逃げましょうよ、」
根津、押し止める様に
「いや安心しろ、絨毯爆撃こそは無いよ、ちゃんと見届けろって厳命されてる、馴染みの連中も、あのセントラル・パークを越えたって触れ込みの、このレジェンド育成公園に傾れ込んでいる、警戒して全米陸軍・CIA・FBIを派遣しないものの、逃げる奴は片っ端に行く感じだ、」
四方、ぽつりと
「本社関連施設のみの攻撃って器用ですね、」
根津、神妙に
「四方も、退所の今で他人事か、目の前の高層ビル三棟の中でも働いていたんだろ、」
四方、はきと
「この時代に、殺戮兵器をおもちゃの様に喜んで作る連中に同情すると思いますか、特にこの施設関連が出来上がってから、たがが吹っ飛んでもう戻れませんよ、」
根津、こくりと
「一々正論だな、四方、いいか、そこまで賢いなら、今後絶対上家衆と争うな、本当に死ぬぞ、」
四方、思いも深く
「正義の味方に歯向かうなですか、」
根津、真摯に
「そこは正義そのものだ、上家衆を一から語ると長くなるが、対峙したなら分かるだろ、そういう連中なんだよ、」
四方、凛と
「階上嘉織の、対峙の眼差し、そうでしょうね、」
高高度直上、可変翼を最大に伸ばした高速爆撃機Bー1HF小編隊三機より、胴体マルチ武器収納庫より最長の地対ミサイルが三発きっかり投下、消音吸収翼の無音のままに、レジェンドオブニューメキシコの本社全高層ビル三棟の階を重量衝撃そのまま軒並み貫通しては地下階さえ越え深くまで突き刺さり、時置かず高度計信管起動でメルトバンカーバスター起爆、突き刺さったフロアの穴より次々噴き出す灼熱炎、レジェンドオブニューメキシコの本社高層ビル三棟ビルが瞬時に溶解しては廃材飛び散る事無く熱いごみの塊へと成り下がる
四方、ただ唖然と
「まさかここまで、容赦ないんですね、逃げた奴なんていませんよ、」
根津、凛と
「狂犬なら、どうにかしても逃げ出す気概があると思ったがな、ただ感覚がどうかした連中か、」
四方、吐息混じりに
「粉砕、いや溶解ですか、これでは証拠も何も無いですよ、」
根津、ベンチに凭れては
「まあな、この全米の所行の果てなら、小うるさい明神も黙るだろ、あいつも好い加減、プロイセン立憲連邦財務省主計局監査役に戻れよ、ルクセンブルクに肩入れしすぎだろ、」
背後より詰め寄る尾を下げた優男の武士、根津の肩をぱんと
「根津さん、サボってないで片っ端から、捕まえに行きますよ、」
根津、くしゃりと
「おいおい赤城、幹部クラス皆死んだろ、社員は携帯電話から枝付けてのんびり行こうぜ、」
赤城、溜息混じりに
「そんなに真面目な連中ばかりだと思いますか、」
根津、くしゃりと
「ああ、いつもの奴らな、カーセックスの連中なら、明神が強制キーであらかた閉じ込めてるって、」
赤城、はきと
「それで済みませんよ、その携帯電話もセックスの為にアバター乱用しては、モニター内の最終足跡では未だ溶解した本社内ですよ、この森林で二百何人仕事中に盛ってると思います、もう内定の段階からうんざりですよ、しかも避妊薬多用しては、コンドーム使うのすら面倒臭いなんて、どうかしてますよ、」
根津、不意に
「そいつらも捕まえるのか、最後に一発行かせてやれよ、司法取引無しで分厚い調書取るから、拘置所から延々出れないんだぞ、可愛そうだろ、」
四方、ただ今は正面の本社ビルの塊を見つめたまま
「それ、腰抜かしてません、本社全高層ビル三棟のあの有様、何せ楽しく通い詰めた職場は骨さえ取り出せませんよ、」
赤城、見る間に展開して行く捕縛者の陣容を見てはつい
「根津さん、あんまりゆっくりしてると、平に怒られますよ、ほら、」
森林道を駆け抜けて来るロングヘアーに唇が印象的な女性が、はきと
「はい、根津さん、まだここなの、好い加減にしなさいよ、ねえ、」
根津、大仰にも
「平は出て来るな、七つの大罪盛り沢山で俺は見せたくない、キャンピングカーでオペレーターをするんだ、」
平、堪らず両目から涙が溢れ
「それは駄目よ、さっきの本社ビル爆撃から、敷地内滑走路へ人見さんが直ちに閉鎖に行ったら、本当最悪に尽きるわ、空港ラウンジで東洋人の見た目は差し引いて、見るからに児童の私設秘書にスチュワーデスを保護したわ、ねえ、」
根津、漸く重い腰を上げ
「全く、聞かなくても、概要は分かった、平、もう言うな、」
平、号泣省みず
「いいえ、皆に言ったから、聞きなさい、空港ラウンジの児童漏れ無く、襟を開いたら、ネックハンガー付けられていたわ、」
根津、冷静にも
「おい、逃げたら爆破とか言うなよ、」
平、ただ拳を固めたまま
「もっと、えげつないわよ、人見さんが直にその型式を見た事有るそうよ、そのネックハンガー、起動させたら、多幸感得られる電波振動を脳髄に直接送るバイブレーターをコンパクトに改良してるそうよ、そう、腰を抜かせて決して逃がさないのよ、性奴隷そのものよ、酷いわよ、」
根津、平にハンカチを差し出して
「だから、言うな、ほら、何枚有っても足りないだろ、」
平、根津からハンカチ受け取っては
「根津さん、借りるわ、」ジャケットのポケットから小型端子を一つ抜き出し「それと、はい、これ、」
根津、平から丁重に受け取っては
「これは何だ、」
平、堪らずハンカチで鼻をちんと
「今迄に押収したネックハンガーの解除キーを、とにかく手元にあるドングル全部に詰め込んだわ、このドングルを、ネックハンガーの防塵コネクタに差し込むだけで良いから、根津さん、とにかく解除手伝って、」
四方、立ち上がってははきと
「私も行きます、」
平、つい繰り出しては
「Het spijt me.四方さんは怖がるから来ないで、」
根津、宥める様に
「Voel je niet slecht.平はシスターだ、この手の保護は感情が昂る、四方はいいから待ってろ、」
四方、繰り出す様に
「全く、悪人しかいないのか、この世界は、」
根津、はたと
「お前がそう言うな、目の前で極悪人は葬った、今はそれだ、」
赤城、平よりドングルを手渡され
「根津さん、行きますよ、児童達を早く開放しましょう、」
根津、うんざり顔で
「赤城、野外セックスはどうするんだよ、」
赤城、只管うんざり顔で
「職務怠慢は後回しです、どうせ腰抜かしてるんでしょう、」
平、根津と赤城の背中をただ押しては
「ねえ、空港ラウンジまで走るわよ、」
根津、神妙に
「待てよ、それって結構奥手にあるだろ、シャトルバスとか使わないのかよ、」
平、うんざり顔で
「シャトルバスはとっくの前に明神さんがロックして運行休止中、私のキャンピングカーで乗り付けたら、装備がばれるわ、行くの、」
赤城、ダッシュの構えで
「捜査の基本は走り込みです、急ぎましょう、」
根津、不意に振り返り
「四方、良いか待ってろ、全員スクランブルだが、必ず迎えに来る、」
四方、神妙に
「何か、内定が甘いですけど、これはネーデルラント連邦が主導ですか、」
根津、凛と
「そんな訳無いだろう、全米の地とは言えここまでの主権侵害は出来ない、ましてや新興の軍需産業相手なら、全米全部署も慎重に直前まで動き様が無く、ここではきと全米最高議会が動いての早期解決の為の共同作戦、この容赦無い一択さ、」
四方、はきと
「分かりました、それなら、お待ちしてますよ、レジェンドオブニューメキシコの派遣も早く終りましたし、今から行く所有りませんから、皆さん、どうか捕縛に行って下さい、」
根津、ただ平に背を押されては
「四方、絶対だからな、次はネーデルラント連邦だ、Jacketz・ schreierstoren・Cafe Hopperのスペシャルメニューはネーデルラントプルデンシャルファイナンスの優待チケットが無いと食べれないからな、心しておけよ、」
四方、はきと
「もう行って下さい、暇つぶしにいつものバードウオッチングしてますよ、いつまでも待ってますから、」ボストンバッグから双眼鏡を取り出しては何事も無かった様に
平、捲し立てては
「決まり、行くわよ、生き残った役員秘書の生爪全部剥がしてもでも、全部吐かせるわ、」
根津、軽い目眩も
「平、それはお前が言っちゃいけないって、」
平、凛と
「いいえ、それは2083年のマラケシュ戦術核奪取転用テロで、島上さんがその手段で主犯から解除手順を聞きただして、米上さんが間一髪で配線切り裂き、間一髪でしたよ、今回は有りでしょう、グレートティモールを潰滅させても、これなのよ、これで最後にするの、分からないの根津さん、」
赤城、神妙に
「平さん、生憎だが、主犯と思しき連中は溶解した本社ビルの塊の中だ、取り巻き連中が言い逃れして言う筈も無い、ここは司法取引しかないだろう、」
平、作業ウエストポーチをぱんと叩いては、流暢にも
「言わせるわ、生爪剥がしても言わないなら、ペンチで指と言う指全部折っても、あいつらが児童達に今迄にした事、全部に言わせてみせるわよ、見てなかったなんて言わせないわ、」
根津、ただうんざり顔で
「だから平はシスターだろ、そんな事させられない、俺に任せろ、バイヤー全部洗い出す、平と明神はレシートのIDチェックを丹念に洗ってくれ、」
平、激昂しては
「だから、そうじゃないでしょう、よくも児童達にそんな酷い事を、レジェンドオブニューメキシコの連中は何で見過ごせるの、全員逮捕よ、陪審員裁判で児童晒せないから、即刑務所送りよ、」
赤城、はきと
「平さん、捜査中は決して泣かないで下さい、あいつら調子に乗っては黙秘権主張しますよ、」
根津、慎重にも
「平も分別は付く、むしろ赤城、お前だ、堂上家筋の兄弟子なんだろ、ベネルクス共立公国動乱からとくと見て来たが、まあ、正義に逸るからな、勢いのまま首を刎ねるのは勘弁してくれ、平常心だからな、」
赤城、凛と
「状況は、準騒乱罪適用です、首の一つでも刎ね落とさないと、座り小便しませんよ、」
根津、くしゃりと
「やはり、やると思ったよ、」
平、堪らず根津と赤城の背中を、やっと押し出して
「まずは、行くの、そこからよ、そして冷静沈着、ほら、ダッシュ、ダシュするの、」
忽ち助走のままに駆け抜けて行く、赤城根津平の足取り
遥か遠くからサイレンの音、本社機能が全面ストップした車内消防隊の代わりに、州から派遣要請されてくるレスキュー隊の車両群
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