第45話 2088年1月1日 東海県名古屋市 熱田神宮 初詣
旧愛知県旧三重県旧岐阜県が合併した東海県の名古屋市の熱田神宮、元旦の今日は士気の下がったままの日本国とは別の喧騒とばかりにただ人通りも多く、その中によく見知ったる初詣の一行、境内の通り脇にては何やらと
箸木オート印の入った作業キャップに真っ新のアーミーコートの階上、ただ溜息も深く
「それで、近賀、一般参賀だろ、今日はここまでだ、もうお仕舞い、」
長身の厳つい近賀、やだ大仰に目を覆い
「おい、いやな、昨日の『あなたの向こうで』見たなら泣くだろう、階上、手を貸せよ、良いだろう、」
階上、憮然と
「手を貸せって、近賀は公僕だろ、私が財務省広域公安部に何の義理があるんだよ、」
近賀、はたと
「言うか、それ、良いか階上、そこは一々立件してないだろ、いや大いに目を瞑ってるだろう、」
階上、凛と
「この私だよ、証拠も無いのに立件出来ると思うの、もう、良いから、帰った、こっちは足回り調整中で、雑務に付き合えないよ、」
近賀、悩ましくも
「階上よ、足な、それだったら、仕方無い、それが済んだら手伝えよ、元旦早々、熱田神宮でばったりなんて、神様も粋なもんだ、」
階上、神木の陰に佇む箸木と顔を見合わせては、
「なあ箸木、あと丸箸もか、こいつ、近賀と仲良いのか、私は付き合いも程々の中の下だよ、」
ハンチング帽のにウールスーツの箸木、読み終えた新聞を、階上にぽんと渡し
「いや、日本国は支払いが渋い、半年先だなんて、付き合いきれるか、」
近賀、仰け反るも
「箸木、お前、本当冷たいよな、俺は本当に泣きたいよ、」
階上、ただにんまりと
「近賀、そう言う事だ、神様のご縁なら、私達は境内のここまでだ、これ以上は、もっと賽銭入れて来い、」
近賀、真顔のままで
「もう、十分過ぎる程入れたよ、良いから階上、堂上探すの付き合えよ、」
階上、凛と
「だから、手が透いたらな、出来てそこだ、」
近賀、ただガッツポーズのままに
「よし、それだ、良いか、口約束でも忘れないからな、」不意に面持ちを改め、内ポケットから一枚の便箋を恭しくも「あと、階上嘉織にこれを預かって来た、良いか家に戻ったら正座して読めよ、」慇懃にも両手で差し出す
階上、容易く受け取るもそのまま硬直し
「ああ、これは私宛か、詫び状、華辺あきら、華辺って、そう当主の、いや、思い当たるのは一人だけ、本当に公族のあきら様直々なのか、」
近賀、神妙に
「ああ、かなり沈痛な当主が、年末仕事納めの日に自ら持ってきた、お陰で皆終業しても緊張取れずだよ、何がどうしたんだ、階上、」
階上、立ち尽くしたままに
「なんか、面倒臭そう、以前お誘い断った経緯もあるし、と言うか、当主、年齢不詳過ぎて引いちゃったし、きっちり美人過ぎてびびったし、もうさ、何かだよね、近賀、返す、」勢いのまま便箋を差し出す
近賀、階上の手をそのまま戻しては
「待て待て、そう言うと思って、当主、ちゃんと目録入ってるって言ってたぞ、」
階上、現金にも封筒を頭上で振って透かしては
「あれ、かさって、何だ、」
近賀、直立不動になっては
「ここはさすがの当主の先見であられる、まあ言わないと、階上がそのままにするだろうから言っておく、実の所目録は、階上が好きそうな、名刺型携帯電話だそうだ、ここは信じて、家で開けろよ、」
階上、不意に訝し気も
「携帯電話ね、そりゃあ欲しいけど、何というか、詫び状の由縁よく分からないや、」
近賀、てきぱきと
「良いから貰っておけ、当主自ら持参の携帯電話と言ったら、それはそれ相応の連絡先入ってると考えろ、職業の一つネゴシエーターなら、絶対皆欲しがるって、」
階上、いみじくも
「まあ、形式張ってるし、ここは有り難く一旦預かる、」両手を差し出しながらの深いお辞儀
近賀、途端に朗らかに
「よし、越年の全仕事完了、いや、米上以外は完了な、まあ、そこはおいおいだ、階上、箸木、またな、」ただ手を振っては後にする
階上見届け終えては、透かさず箸木に振り向き、只管苦い顔で
「まあ、皆こう動かされてるんだろうな、よくも声を掛けまくるよ、良い年のお嬢様風情は、」丸めた新聞をぱしと
箸木、神妙に
「全くどいつもだな、今日に入ってあの二人の関係者の連絡続くものだよ、今頃留守電一杯になってるだろうな、敢えて電話を返す義務も無いからそのままだな、」深く息を吸っては「しかしな、0時ジャストのそれには参ったよ、その米上、号泣しながら真夜中でも電話寄越すなんて、この俺に堂上探すの手伝えだってさ、そんな見当もつかないお願い、大工房の仕事で行けるかって言っておいたけど、どうする、年越しのお仲間に聞いてとも言われたが、そんなのいないとは言ったよ、まあ、気を使って階上いるとは言わなかったがな、」
階上、ほくそえんでは
「私の爆笑、受話器に越しに聞こえたかな、まあいいや、どうするも何も、私はお役目一途、米上に付き合えるかって、とにかく無視、箸木正解、」
箸木、神妙にも
「無視って、同じ上家衆だろ、ここで拗れたら後に引くぞ、」
階上、ただ手で仰いでは
「良いって、米上家は結構な人足抱えている、きっと探し出すって、」
箸木、階上を見据えては
「階上敢えて聞いておくが、堂上の行く先の見当は付いているんだろ、近賀さんがしつこいのそれなんだろ、」
階上、決して視線逸らさず
「さあな、アンダー40の里中が灰屋さんからどうにも仕切らされている台湾の主力部隊から、何一つ噂に聞かないって事は、東南アジアは無いって事、正義感そのものの堂上がどうしたらやらだ、とにかく消去法で考えるしかない、」
箸木、こくりと
「『あなたの向こうで』の九州のあれなら、逃げ切りで北海道道北か、」
階上、透かさず
「この厳冬の道北に行くなら、徹底装備、足がつくでしょう、敢えてミスリードか、箸木、密かに用意してるんじゃないの、私の知らない代車の何れか、高下駄のランドクルーザーとか、どこのセーフハウスに隠してるんだよ、なあ、」
箸木、無愛想にも
「するか、米上家のレクサスネオ5台の担当しているんだ、この正直な俺が無意味過ぎる嘘を付けるか、」
階上、くすりと
「商売繁盛、正月から結構な事だね、と言うか、5台は少な過ぎだろう、米上意外に渋いな、もっと箸木に担当させろよ、」
箸木、諭す様に
「階上、ふざけるな、今の台数で結構、国賓のリムジンまでとなると、これ以上は米上家の配車係りになってしまう、」
階上、神妙にも
「良いか、箸木な、スーパーカーばかりの商売だとコストぎりぎりだろ、ここさ、商いの基本から教えて進ぜようか、」徐に手元の新聞を次々捲りながら
箸木、足蹴のままに
「結構だ、商いより、信用だ、安易に馴染みに死なれては困る、」
階上、ふと手が止まり
「そこは、同意する、それも大正解、」
箸木、溜息混じりにも
「だから、新聞読んでる余裕有るなら、米上の方を手伝えよ、俺にまた電話掛かってきたら、話が止まらんぞ、」
階上、気になった朝刊記事を見つめるもはたと
「いいや、私は堂上を察するよ、米上も誰彼と向こう見ずに手伝えなんて、何か気の聞いた事言えるなら、少しは考える、まあお嬢様には難しいだろうな、」欠伸混じりに「その『あなたの向こうで』は昨日の放送では検証に時間も掛かるから載ってないか、色々無差別ってある意味全米最高議会も肝が座ってるよな、」ぴたりと手が止まり「それで、ベルリン四者会議、これも好い加減にだよな、ローマ参画政府・南スラブ永世国・新ユーゴスラビア公共自由共和国・中立の立場で大国プロイセン立憲連邦国、以上四カ国によるベルリンにて最終となるベルリン四者会議は不調に終わる、ローマ参画政府の白鷺最高司祭兼外務大臣のコメントはと【スロベニア/クロアチア/ボスニア・ヘルツェゴビナの総意と南スラブのビシッチ首相がどうしてもローマへの編入を希望する為、プロイセンのビスマルク首相が宥めるも平行線でした、これ以上は新ユーゴ立国の権益を損ねる為、線引きはこのままに、ベルリン四者会議は終了です】、まあね、そりゃそうだ、これ以上引き伸ばすと、あのビシッチなら更に兵隊揃えてローマに駐留しかねない、嫌がる奴を追い出す側にもなってくれよ、もし先々会ったら、くれぐれもローマに来るなと箸木の分も言っておく、」徐に誌面を捲り「まあ、これも何だよな、ネーデルラントインターポール山県局長年度末総括会見で無礼なフランス人記者に拳を上げる、全米のレジェンドオブニューメキシコ本社の開発製品誘発事故おける付随捜査中の事案の真相に触れ過ぎて激昂と、ベルギー王室会見場全員の冷たい視線を浴びる、まあな、そこは山県局長の気性だしな、それでと、ネーデルラント騎士称に是非共非合理活動疑義の捜査協力を仰ぎたい旨の長い件と、私は外れるのだけど、これさ、天上さん、堂上、米上、あと御船、そして東儀もか、どうするんだろうな、最後はともの第二公女のフランス連合公国への遺憾の意の表明で締めか、何が琴線に触れてるんだ、全米にユーロ、そんな切迫してるのか、よく分からないけど、覚えておく、」尚も誌面を捲り「それで、はあ、第七次東南アジア事変か、ローマ参画政府はさっきの白鷺最高司祭がまさかのスポークスマンか、そりゃあ進展しないベルリン四者会議よりこっちが最優先だよな、さすが慈愛のお方、それでも公式発表は5月1日なんて、まあ事態はまだ収束してないしな、いやそれより、スコール司教枢機卿、ビショップ司祭枢機卿、コーラス助祭枢機卿が口挟まないなんて、だからさ、何の裏付け作業の最中なんだ、まあか、一件一様なればこそ聞き取りも難航するものか、」
箸木、興味無さげに
「階上、俺に聞こえる様にって、朝刊見ては、とにかく独り言、そんなに気になるか第七次東南アジア事変、この俺に何か言って貰いたいのか、」
階上、神妙に
「まあな、平和島に行くとぼやいたつもりが大本気になってしまう、適度な相槌はくれても良いだろう、とは言え、状況は切迫してるってこった、葉村さんとの国際電話で聞いたけど、個人情報は最大配慮され、如何なる手段使っても差し止めるって、まあローマが全力なら、絶対公表される訳も無いけど、児童524人が漸く仮寺院に入ったんだ、先々思うと切ないよ、」
箸木、はきと
「グレートティモールと言う軍事国家が崩壊したんだ、逐一報道の義務が有る筈だが、前線記者は何に気兼ねしているんだろうな、」
階上、右眉がつい上がり
「箸木、例えばでもローマへの批判は無しだ、あんな軍事国家滅んで当たり前だ、記事全部読んで後味悪いだろうけど、それは胸の内に仕舞ってくれ、良いな、」
箸木、尚も
「階上、話を一纏めにして逸らすな、日本国からも児童が拐かされたんだろ、詳細を報道して警鐘鳴らす必要がある、」
階上、不意に右手で箸木のアーミーコートの胸ぐら掴んでは
「良いか、箸木、一般人は知らなくて良い事だってあるんだ、今は沈静化すべきなんだよ、分かったな、もう言うな、」
箸木、ただ階上の右手を強く握り
「階上、元旦から突っかかるな、珍しくしおらしいと思えば、今のこれか、でも言うぞ、拐かされた児童がほぼほぼ無事なんて裏があるんだろ、この先まともに生きられると思うのか、」
階上、尚も右手締め上げ
「箸木、言いたい事は山盛りだ、詳細は公式発表出たらそつなく言う、でもな、これだけは強く言う、第七次東南アジア事変に関わる児童の犯罪者扱いは止めろ、被害者だって、なあ、」
箸木、階上の指を一本一本剥がしながら
「階上、親元に返せないなんて、監察処分のそれだぞ、」
階上、返された拳も震えたままに
「なあ、答えの無い喧嘩売ってるのか、酷いよ、箸木、言う程に誰かが傷ついてしまう、」
箸木、対峙したまま
「階上、これは市井の声だ、それも考慮しろよ、」
階上、歯ぎしりも強く
「言うか、どこの市井なんだよ、拝金主義に立ち返った噂好きの輩か、全部名前言って見せろよ、言い聞かせてやる、」
箸木、境内の視線を感じては諭す様に
「良いから聞け、階上、悪党の中にいたなら、それが当たり前の規律になってしまう、可哀想だが犯罪を犯す前に、隔離しないといけないだろ、」
階上、ただ力も尽き
「だからさ、それ、何も言えねえ、」
箸木、こくりと
「結果、そういう側面の裁量有りきなのだろ、皆辛いんだよ、」
階上、右拳を勢い良く払っては、つい大声を張り
「いや、箸木、人間には輝かしい未来が待ってる、だからこそ、先人達が私達に命がけで託してくれたんだろ、なあ、その薫陶を世界中の人達に引き継がなくちゃ行けない筈だって、何人たりもだよ、その為には更生も労は惜しまないって、そうだろう、」
箸木、境内中の視線も気にせず
「それは、どんな人間にもか、」
階上、心が滾っては
「ああ、聞く耳を持たなければ、行いで示す迄だ、」
箸木、くすりと
「階上、根は真面目なんだな、」
階上、偉丈夫にも
「箸木さ、それ、今更言うか、その二つ前の花彩のドキュメントに、昨日のやたら長いチリのドキュメント見たら分かるだろ、新世紀は始まったばかりだ、まさか乗り遅れるのか、」渾身の右ストレートも
箸木、柔らかい右手一本でぱしと確と
「まさか、商いしているんだ、時代の波には乗るさ、」
階上、くしゃりと
「本当食えないよ、箸木、」
箸木、階上の拳を戻しては
「階上、皆さんが見てる、一言申して見ろ、」
階上、ぐるり回っては会釈し
「お見届けの皆さん、元旦からご苦労様です、家内安全商売繁盛、あと世界平和も祈りましょうね、」ただ朗らかに
ただ、一同からの拍手が漏れ無く響く境内
囲みが一通り抜け終り、一段落も
箸木の妹丸箸、甲斐甲斐しくも買い物袋を両手に進みより
「おお、お二人仲がよろしいですね、何のお話ですか、ちょっと聞いてましたけど、深くは尋ねませんからね、」
階上、照れ笑いもそのままに
「まあ、明るい未来の話かな、そんな感じ、」
丸箸、二人を促しては、露天先の並びに進みながら
「ふふ、進展進展、さあ、ここの茶店で、一服しましょうよ、」
階上、ふわりと
「一服って、外だよ、」
箸木、ふと
「良いよ、暖房入ってる店なんて、名古屋市でも滅多に無いし、これも正月の風情だ、」
丸箸、両手に買い物袋のまま、二人の背を押しては
「そうそう、通りがかったとき、見た目、良い練り餡でしたから、美味しい筈です、ささ、」どんと、赤いベンチの右端へと滑り込み
階上、丸箸に促されては、赤いベンチのど真ん中へと
「さて、やっと箸木に言いたい事有るのパレードだ、なあ、何処をどう解釈したら、ラシーンマークツーのあれそれなんだよ、全くさ、いつも過程すっとばして、出来上がりどんと渡されるから大迷惑だよ、そうだろ、」
箸木、空いている赤いベンチの左に座り込んでは
「階上、俺は何度、お前の危機を救ってる、秘密の機能は多いに越した事ないだろう、」
階上、思い倦ねるも
「まあ、言えば使うだろうし、いきなり爆発は相変わらず扱いが難しいよな、だからさ、数々の廃車はごめんなさいしてるだろ、年明けから、ぐさぐさ来るなって、」
箸木、くすりと
「自覚してるなら、まあいい、それに碌なレポート渡せないなら、それだ、」
階上、溜息混じりに
「そこな、ローマの検証終ったら渡す、何回待てって言ってるんだろ、」
箸木、はきと
「詰まる所はラシーンマークツーの開発コマンドなんだろ、有り触れたログインで入れば消去プログラムが走りかねないから、俺の見解は無しだ、だがな、ラシーンマークツーの開発途中の運転支援プログラムは、是非共参考にしておきたい、開発ログインの事を忘れてなければ、それでいい、」
階上、頬杖を付いては
「そこはな、ログインしたのは純なんだよね、何かしらの生体認証込み込みかもしれないから、繰り返すけど、ローマの検証待ちなよ、」
箸木、溜息混じりに
「相手がローマと言えど、主幹のルノーがはいそうですかと、開発コマンドを呈示すると思うか、良いか階上、渾身のレポートで押すんだよ、」
階上、くしゃりと
「そこは勿論だけど、もう一つ伝手があってさ、そっちは鍋島教授の交渉案件なんだよな、鍋島教授の集中講義は99.9%の確立で単位取得だからさラテラノ大学の多くの卒業生救出されてる訳なんだよ、でも今正に冬休みの集中講義でしょう、それ終えてからじゃないと、鍋島教授に元ぼんくら生徒に是非交渉してなんて言えないよ、」
丸箸、歓喜に咽び
「おお、鍋島惟光教授、漏れ無く日本書籍持っていますよ、『シェムリアップのほとりで』のアンコール・ワット保全和議の下り、本当血湧き肉踊りますよ、あの小憎らしいスプリガンプリンスファンデーションと渡り合えるのは、鍋島先生だけですよ、」
階上、くすりと
「まあ、それに関しては、いや言えないな、鍋島教授の部屋に行くと、本当表に出せないお話ばかり聞いちゃうんだよね、お陰で親友の円谷から仏頂面される訳なんだけど、まあそっちより、何と言うか、夏期と冬期の集中講義、鍋島教授の本来の職務は講義ではないのにさ、お人柄良過ぎて、葉村ラテラノ学長のたってのお願いは断れないんだよね、」
箸木、万感の思いも
「忙しいんだな、鍋島惟光ローマ参画政府文部省ヴァチカン史跡管理係主任兼ラテラノ大学総括人文学特任教授、まあ、ギザのピラミッド消失から暫く史跡紀行番組無いのも推して知るべしか、俺的にはただ寂しいな、」
階上、悶絶しては
「出た、鍋島教授のフル肩書き、箸木もファンなんだよな、鍋島教授の史跡紀行番組の版権に関してはローマで管理されてるから、うっかりにも出せない番組あってさ、ここは察してくれ、」
箸木、溜息混じりに
「そうか、うっかり触れたの進行故か、ギザのピラミッド消失案件も、窪んだ史跡後の学術調査がメインで編集されていたから、続編待っていたんだけどな、」
丸箸、凛と
「お兄さん、そこは鍋島教授のご尊顔見れるだけでも、良しとしましょう、」
箸木、吐息混じりに
「まあ、それはそれで、ギザに行った気分を満喫出来たから良いけどな、」
階上、くすりと
「そこな、放送されるか本当絶望的だから言っておくけど、ギザから地球突き抜けて真裏の南太平洋の新島にピラミッドが集結してるんだよ、ああでも、話で聞いた限りだから、何故かは古文書解読中、円谷でも用途は文法がかなり難解だからって、かなり先になるかな、この話はここだけね、」
箸木、くしゃりと
「ここだけって、良いのかよ、」
階上、神妙に
「やや公然の事実だよ、シドニー連邦の月次官報に新島の航空写真を載せたら砂塗れのピラミッドがくっきりだったって、円谷が新島だからって念の為に張っていたら、それだよ、鍋島教授が急ぎシドニー連邦の高官に申し送りして差し替えたけど、察した同輩は結構いるらしいよ、」
丸箸、目が輝き
「ふう、地球の裏側、ロマンですね、是非続きをお待ちしてますよ、」
箸木、神妙にも
「いや、世界中にピラミッド形式は有るから、検証に時間掛かるだろうな、」
階上、こくりと
「そんな感じ、案に画期的なモータードライブで片付けたら、ピラミッドに畏敬の念とか無くなってしまうからね、」
丸箸、嬉々と
「うんうん、元旦早々、盛り上がってきましたね、」店員へ声を張りと「お姉さん、注文よろしいですか、抹茶セット三個をお願いしますね、」
階上、ただ頷き
「セットか、まあ名古屋も回るし、軽く一杯で良いか」
丸箸、朗らかにも
「名古屋に来た以上、夜もきっちり食べて行きましょうね、」
階上、ほくほくと
「いいね、手羽先、ふふ、」ふと我に返り「ああ、それでさ、熱田神宮って、本当にご利益あるんだろうな、よく分からないけど結守、買っちゃったよ、」
箸木、ゆっくり頷き
「それで良いんじゃないか、」
丸箸、ふと
「そう、純ちゃん、天使なんですよね、健康とか超越してますよね、」
階上、面妖な面持ちも
「それ言っちゃう、つい口にすると、それしかないかな、」
箸木、神妙に
「証拠が聖痕とは言え、見たんだろ羽化を、」
階上、不意に落涙しては
「見たよ、その時は一杯一杯だったけど、今も鮮明過ぎて、美しいって言うか、レンブラントがもし現代にいたら、神々しすぎて絶対スランプに陥って描けないね、」
丸箸、思いを巡らしては
「うーん、こう言ってはなんですけど、それって、半可視状態かもしれないですよね、」
階上、はきと
「まあね、いざ目の前で奇跡見てしまうと、信じられなくそっちをを信じてしまいがちなんだけど、函館道南市の現地調査から戻った乙川が、純と私に鴆毒が残って無いか透視で暗部を探して貰ったんだけど、何と言うかね、まあだね、」
箸木、吐息混じりにも
「階上言えよ、浜松に戻ってから、その表情何度と無く見てるけど、そこなんだろ、」
丸箸、身を乗り出しては
「鴆毒、階上さん曰く死なない限り抜けないそうですからね、擦った階上さんの鴆毒は休眠しているとかですか、」
階上、懸命に手で煽っては
「ああ、いいや、純と私は何度となく乙川に透視されたけど鴆毒無いって、と言うか、いや、そっちじゃないんだよ、」
丸箸、ただ胸を撫で下ろし
「それは良かったですね、」
箸木、ただ機微に
「階上、何で話が続きそうなんだ、」
階上、思いも深く
「まあ、半可視状態って言われて、それで終わるのもなんだなって、奇跡って、やはり伝えなくちゃいけないよな、」意を決しては「いいや、良く聞いて、純の背中の両肩下の聖痕があるだけどね、天使の翼の名残り、乙川が幾度も透視しては、肩甲骨近くの烏口突起が鳥としての正しくそれなんだってさ、乙川さ、人体のみならず生体の構造に詳しいから頻りに首傾げて、純が手持ち無沙汰になって動かしたら自由自在にこりこり動いちゃって、まあ皆が驚愕な訳だけど、それで、渋々乙川に高輪世界復興記念聖堂での奇跡の経緯を止む得ず話をしたら、互いに長い髪振り乱してはつかみ合いの喧嘩になっちゃってね、はあ、一年上だからって先輩面しやがって、と言うか、久住あんちくしょう察して純と逃げやがって、」
丸箸、繁々と
「その喧嘩の意味が分かりませんよ、」
階上、溜息混じりに
「まあ、その乙川ね、私が函館道南市役所にいるの知ってるなら、階上家襲撃を予測していたんでしょう、連絡を寄越しなさいよと、堰を切っての逆切れ、上家衆なればこそアンダー40を決して嘗めないでだってさ、ついでに純の混沌についても大言及、万が一の状態の純を連れ回して殺す気なのだって、すっかり姉の一人だよ、まあね、有り難いけど、」
箸木、はきと
「でも、その純ちゃんの治癒で、階上に鴆毒無かったんだろ、自分の身に起きた事は、ちゃんと受け入れるんだよ、」
階上、ただこくりと
「分かってる、でもさ、いざ私自身を諭すとなると何度も咀嚼するって事、そこなんだよね、そういう事は、改めて言われないと響かないものだね、」ふと真顔も「あと心配掛けてる鴆毒ね、乙川が念の為に仙台の移動式非放射線CTスキャンを空輸で呼び寄せたけど、見事に無いって、まあこれはこれで、純の治癒に驚愕なんだけどね、ここまで完璧だと、信じるよ、奇跡を、」目を瞑り丹念に十字を切る
丸箸、凛と
「階上さん、移動式でも、非放射線CTスキャンの性能なら安心です、対処は出来ませんが鴆毒を僅かな動脈瘤としても見逃しませんからね、乙川さんはプライベートに反して堅実ですね、」
階上、鼻息も荒く
「乙川さ、そうなんだよな、あいつ無自覚で人前で着替えするからな、私でも羞恥心はちゃんとあるぞ、」
丸箸、たじたじと
「そうですね乙川さん、気が付くと、大リビングでスポーティーなレオタードでヨガしてますからね、皆さんが慣れるとお思いなんでしょうか、」
階上、胸を張る様に
「ふん、体型は同じだけど、私の方が美乳だ、ヨガに負けてたまるか、」
箸木、ただうんざりと
「無理矢理、俺を取り込もうとするな、いいか、階上も乙川も、大差はまるで無い、」ただ咳払いし「まあ、その乙川だが、将来は病院持てるな、さて静岡誘致の為に、帰ったらBOSEのカーステのサービスしてやるか、」
階上、鼻で笑いながら
「箸木さ、ファミリーなフィアット500の復刻品にBOSEのカーステなんて勿体ないだけだって、何言っちゃってるの、」
箸木、淡々と
「いや、ピンクのフィアット500SMAは堂上が所有だ、ベネルクス共立公国動乱で銃創だらけで送られてから、修理カスタマイズしてはほぼそのままだな、まあな、無駄に取り付けたラリーライト全部取り外したら、スマートで乙川っぽいけど、そこ違うからな、」
階上、くしゃりと
「堂上のって、それなら何だ、乙川ただ宿泊して行くだけか、箸木は、何時から人選んで旅館業してるんだよ、なあ、」
箸木、凛と
「そんな面倒臭い旅館業するか、乙川の愛車は、キャリアにいつもある、赤いコルベットC3αリアルだ、階上がじっと見てるあの車のオーナーだよ、」
階上、どん引きのままに
「まじか、どんなディーラーと友達なんだよ、はっつ、一瞬羨ましいと思ちゃったよ、」
丸箸、ぶるっては
「そうですか、緊急発注で大阪の沢井総合製薬に直接お薬貰いに、封鎖中の高速道路を強引に解錠させては、コルベットC3αリアルを往復でただかっ飛ばし、高速道路の道路の状態含めて悲鳴ですよ、乙川さん幾ら透視出来るからって、道路照明灯無しの真夜中にアクセル踏みっ放しなんて、もう、本当恐怖以外有りませんよ、ああただ、朝焼けは凄く綺麗でしたね、実に爽快でした、」
階上、思わず噴き出しては
「乙川、あいつ、道踏み外したろ、今からF1行けよ、」
箸木、神妙に
「まあ全戦優勝だろうが、今のF1グランプリって、ユーロのイタリア・フランス・イングランド・スイス・ネーデルラント・プロイセンの六戦だぞ、乙川のスキルを考慮すれば、実に勿体ない、」
階上、憮然と
「何かな、乙川の株持ち上がりっぱなしで面白くないな、ふん、」
箸木、訥に
「階上いいか、コルベットC3αリアルを気に入ったからって、あの分厚いバンパー絶対剥ぎ取るなよ、他にも乙川のコルベットかなり改造してるから、拝借したらその場で死ぬぞ、」
階上、あんぐりも
「まあ、何だ、ばれたなら諦める、」
店員が折りを見て抹茶セット3個配膳しては、ただ和む3人
丸箸、嬉々と
「そうですよね、良いですね、乙川総合病院、静岡県庁に言って、どこか整地してもらいますね、」熱いお茶を一口
階上、みたらし団子を持つ手が止まる
「はっつ、待った待った、乙川、医師免許持ってないだろ、精々看護師だって、何時の間にスーパースキル持ってるんだよ、」
丸箸、事も無げに
「いいえ、乙川さんが大工房に滞在している時、丁度腸捻転の子供が丸箸ストアーに運ばれて、納品予定でした、簡易外科手術マシーンで治しましたよ、初めての仕入れですけど、コンセントと電話線繫げて、あんなに素早く出来るものなのですね、そう、乙川さん、プログラムディスク持ち歩いているので助かりましたよ、簡易外科手術マシーン、認証無いと動かせませんからね、」
階上、尚も
「えっつ、だから、看護師が医療行為って、駄目でしょう、」
丸箸、ふわりと
「今更ですか、成る程そうですか、お話に納得されていないのはそこなのですね、階上さん、三台疾病以外の医療行為は簡易外科手術マシーンのプログラムで処置出来ますよ、的確な根治部位を見つけては医療アームも自動処理で問題無しです、乙川さんの看護師資格でも十分ですよ、」
箸木、大仰にも
「階上、幸い小競り合いで大怪我してないのが、それか、一昨年WHOの制度変わったの知らないのか、」
丸箸、はたと
「私も今更ですけど看護師資格取るべく勉強中です、書簡教育中で6年は長いですよね、」
階上、ただ手持ちのの新聞をぽんと
「それ、そういや、昔に新聞の見出しで見たかな、いや見たけど、多事総論ばかりでもういいやした系か、まあ一旦出動したままなら報道は縁遠いからな、丸箸、戻ったら勉強させて、」
丸箸、ただ満面の笑みで
「階上さん、ええ、喜んで、」
箸木、ふと
「まあ静岡も、機動救急車で何とか平穏なものの、何れかの総合病院を何れは設立しないとな、医学博士常駐はとても高いとして、看護師さんの一定数は常駐してくれないものか、」
階上、ただ神妙に
「それこそ、乙川か、あいつも気が付けば戦さ場だよな、何処かで皆と話さないといけないな、」練り餡団子を一口運んでは「うん、この餡、大正解、」
丸箸、同じく練り餡団子を一口運び終えては
「そうですよね、今この時代、粗製濫造の加工品ほぼ無いですからね、手間ひま掛ければ良い事有りますよ、」
箸木、お茶を一口運んでは、真摯に
「確か、アンダー40の卒業は三つの要件満たさないと駄目とかなんだろ、」
階上、最後の胡麻餡団子に手を伸ばそうも、ぴたりと
「そう大まかに三つ、他国の引き抜きは無いかの厳重審査、新就業地域のカトリック教会の認可状、そして教皇の印可、三つを越えるけど、大切なのが婚姻による生活環境変化の優遇、女子はいの一番にこれで、アンダー40を円満退所して行くよ、」
丸箸、ただ苦笑いで
「ああ、でも、乙川さんお姉さんの選択はちょっと苦手かな、そこはねえ、お兄さん次第でもあるし、」
階上、理路整然に
「丸箸もさ、階上お姉さんは良くて、乙川お姉さんが駄目の基準がよく分かんないよ、なあ箸木、」最後の胡麻餡団子を一気に頬張る
箸木、串団子の食を進め
「俺の婚姻を、それとなく進めるな、仕事が忙しくて、家庭を省みない典型だよ、」
丸箸、ふと
「お兄さん、だからこその婚姻ですよ、大工房が仕事場なら、奥様には朝昼晩は挨拶出来ますよ、」
箸木、ふと
「そんな平和な生活、まあか、こんな俺でも笑うんだろうな、」
階上、ふわりと
「いいな、箸木、本命私で、次点乙川だろ、普通なら毎日幸せで咽び泣くぞ、」
丸箸、強ばりながらも
「その次点乙川さんなのですが、かなり戦さ場渡り歩いていますからね、胃に入れば良いは、ちょっと、料理を出す張り合い無いかなって、ねえですね、」
階上、食し終えては満足気のまま
「そこね、まあ、階上幸或旅館に電話したら、乙川にがっつり言っておくよ、ブス顔で食べるなって、」
丸箸、ぴたりと
「えっつ、乙川さん、まだ日本にいるんですか、」
階上、手にした新聞をきっちり読みながら
「まあ新聞に大きく載ってるから言うけど、陶台湾首相曰く【第七次東南アジア事変も収束傾向に有り、台湾在中のローマ参画政府アンダー40始め各国大部隊は順次撤退します、台湾は何時でもあなた方英雄を歓迎します】だってさ、とは言え、後衛は周辺国にそれなりに残すみたいだよ、乙川班の日本滞留もその一環、陶首相が食えないのは、灰屋さんと終始つるんでるからだけどね、」
箸木、訥に
「だったら、浜松にも寄れは、それは無いか、まあ今は純ちゃんのそう言う事なんだな、」
丸箸、ぽつりと
「乙川さん、そうですね、階上幸或旅館なら、純ちゃんいますものね、」
階上、仰け反る様に
「そう、お察しの通り、純も低温治療カプセルに入っていたから、まだまだリハビリの最中、乙川はよくも付き合ってくれるものだよ、」
箸木、ぽつりと
「良いのか、任せて、」
階上、くすりと
「良いんじゃないかな、純が“嘉織ちゃんは上家衆のお仕事でしょう、早く行きなよ、”であしらわれての、今日ここ熱田神社でお参りがてら警邏中、こんなんだから寂しいとか心非ずとかは一切のご心配は無用ね、まあ名古屋も、旧名駅最下層ゲート侵入事件以来、平和だしね、」
箸木、はきと
「あの侵入事件の犯人って、捕まらないのか、パラレルインターネット上では、古のインターネット待望論が消えないままだぞ、」
階上、吐き捨てる様に
「パラレルインターネットって、そんな暇な連中に付き合えるか、大体ね、名駅アーカイブ場から何も盗まれていないのに立件出来るかって、六法全書に不法侵入はあっても、この時代だ、誰が七面倒くさい立件するか、そうだろ、箸木、」
丸箸、ふと
「それが古のインターネットのアーカイブだとしてもですか、私には過去のエンターテイメントに飢えて盗もうとした不逞の輩の犯行には、とても思えませんよ、」
階上、溜息一つ
「言うね丸箸、それはさあねだ、察するに花彩は例のあれはたまたまpdfで持っていただけでしょう、想像だけでさ、私は捜査に関与出来ないよ、」
箸木、くしゃりと
「やれやれか、階上、お前の押しも引きも、賞賛に値するよ、」
階上、凛と
「とにかく人手がまるで足りない、白黒はっきりつけるなら、白は灰色に出来ないって事、国際証人保護プログラムは健全そのものだよ、それを回答にさせてよ、」
丸箸、こくりと
「結構です、元老安良神部会も、デン・ハーグ統合軍事裁判所に免責を受けては自業自得の様子です、そう言う事にしておきましょうね、」
階上、気分も上々に
「そうそう、そう言う事、花彩はお目こぼしは有りだからね、何せ花彩だもの、昨日の『あなたの向こうで』を見て、米上一族の引き攣った顔が浮かんで来るよ、ざまあ無いって、ふん、」ただ鼻息も荒く
柔らかな日差しの中、暫しの時が過ぎ
不意に地面に佇む鳩が一斉に舞うと、宙には延々伸びて行くボーイングプラネットの轟音と噴射煙
階上、宙を指でなぞる様に
「ボーイングプラネット、浜松衛星空港だけじゃなく、名古屋でも見えるものなんだな、」
丸箸、くすりと
「階上さん、目の前の海岸で、ボーイングプラネットをよく眺めていますよね、今更ではないのですか、」
階上、くしゃりと
「そうかな、ボーイングプラネットの離陸は良いものだよ、それに銭形平次の再放送も、放送中のシリーズは見たし、ストレッチ兼ねての気分転換にはなるさ、と言うか、やっと固さ抜けてきたかな、」思いっきり仰け反りながら
箸木、ぽつりと
「階上は、誰よりも、ボーイングプラネットに乗り馴れているんだろ、あれに慣れるっていうのもな、」
階上、ばねのまま上体を起こし
「ややだけどね、離陸は大人でもGで動けないし、そこはちょっと我慢だろ、まあ箸木は気が短いから児童のそれか、それな、ふふ、サービスタイムの成層圏突入の0Gタイムは、相も変わらずシートベルト外して愉快がるお坊ちゃんお嬢ちゃんいるし、スチュワーデスも慣れてか目敏くチェックしてはキャッチしに行くしね、気持ちは分かるでも無いけどね、箸木、こっぴどく怒られた系か、」
丸箸、恐る恐る手を上げては
「それに関しては私ですね、まあ照れますね、」
箸木、思いを巡らせては
「ボーイングプラネットで何度か家族旅行行ったな、まあ祖父絡みの工房仲間訪問なんだけどな、それが現在の仕事に生かされているんだからな、親父がメーカーに務めた分、それなりに期待されたんだな、」
丸箸、不意に
「お父さんも、ALLGMに単身赴任のままなんだけど、どうにか出来ないものですかね、はっつ、しまった、」
箸木、吐き捨てる様に
「知るか、定年後も役員にそのまま居座って、全米で孤独死でもしろって、」
階上、凛と
「それは言い過ぎだ、箸木も、自分のお父さんにそう言うなって、経緯はきっかり聞いてるけど、女じゃなくて、仕事なんだろ、この時代、志は大きい方が良いって、」
丸箸、こくりと
「お母さんも、お父さんのお仕事を理解して天国にいますよ、お兄さん、これ以上は言いませんから、元旦ですから機嫌は直して下さいね、」
階上、大手にも
「仕事な、そう私も、結局、まだ待機なんだよな、東南アジアだから静岡普通空港で都合はつくけど、いざ遠距離派遣ともなると、日本も欧米麦秋みたいに、普通空港併設してトランジット空港に整備してくれよ、離れた普通空港への移動の方が時間かかるだろ、実に勿体ないよ新中部国際空港の設備さ、着工そのまま3本目の滑走路転用出来るだろ、そうだろう、」
箸木、察してはくすりと
「ふっつ、それは、どだい無理だろう、他の滑走路の保全の為の噴射排熱大規模処理施設、冷却の水源はあれど、その建設費用を国費から賄えないって、アフリカみたいに土地を大接収しては衛星国際空港を作る方が、実にベターなんだよ、」
階上、ぶすっとしては
「ベターね、日本国の衛星空港のそれ、土地所有者が戦死したからって日本国が大接収するのも如何なものなの、まあ作ったしまった以上今更言えないけど、でもそれが捻れて、だから日本に来る機会がボーイングプラネットとクルーズはどっこいどっこいの比率なんだよな、まあ他にも旅情豊かなシベリア弾丸鉄道もあるけど、ウラジオストクの治安は麦秋と統一朝鮮が分け入って群雄割拠の様相だし、そっちは決してお勧め出来ないよな、」
丸箸、はたと
「そうですよ、オールフェリーでの買い出しも不自由は無いですけど、大型クルーズ船も良いですよね、オールフェリー港の資材未搬入で振り替えで幾度も乗りましたけど、もう街そのものですよね、既存船に追加出来ないものですかね、」
階上、とくとくと
「環境省建設局には、歴代上家衆として、大型クルーズ船建造運用の陳情を切に申し上げているけど、他国からの中古船出る迄待つが一環した方針だよ、しけた話だよね、というか上家衆、どんだけ船好きなんだよ、」
箸木、神妙にも
「まずのステップとして、長崎のドック街が復活すれば良いけど、九州は相変わらずの戦地そのままだしな、国内外どの大手も止む得ず二の足を踏むさ、」
階上、ただ大仰に
「あっと、ブラザー達は、オールフェリー乗り入れてるからって九州絶対踏み入れないでね、旧中華侵攻の時のランドマインにブービートラップてんこ盛りだから、直感だけでは回避出来ないからね、」
丸箸、ぽつりと
「とは言えですよ、鹿児島行きたいな、霧島の芋焼酎飲みたいっての要望あるんですよね、買い付けたいな、いや、人伝手に聞く風光明媚な霧島観光の方が多分ですよ、」
箸木、思いも深く
「俺は長崎だ、爪先さんのロールスロイスハードロワイヤル預かったままだ、構造的に地雷連続で踏んでも問題無いんだけどな、と言うべきか、奇跡的に現存する教会巡りをしたい、」
階上、いみじくも
「だからね、ブラザー、仕事でも一切禁止、観光は以ての外、それこそトラップの妙だからね、良いかな、納得するまで喋り倒すからね、」
丸箸、憮然と
「そこまで階上さんが言うなら、はいにします、」
箸木、神妙にも
「そうだな、児童送迎用にロールスロイスを検討してるそうだけど、いざだな、車体から轍に飛び出したら危険だしな、ここは爪先さん諭さないとな、」
階上、何度も頷き
「良し、物分かりが良くて助かるよ、それなら九州は回避で解決、四国は旧中華の侵攻時に自衛の水軍強かったから局所的に了承出来る、帰ったら四国の新しいレジュメ渡すから、必ず目を通してね、」抹茶の器を置いては、赤いベンチから立ち上がり「さて、丸箸も結構仕入れたね、」
丸箸、満面の笑みで
「結構朝市で買い出ししちゃいましたよ、まだ軒先に預けて居る商品もあるので、車に運ぶの手伝って貰いますからね、」
階上、くしゃりと
「おせちの追加って、丸箸、もう堪能しているよ、」
丸箸、手を仰ぎながら
「いえいえ、今日の買い出しは、明日明後日の浜松海岸カトリック教会の炊き出し分です、第七次東南アジア事変にまつわる大規模児童救出の切ない事件が有りましたからね、ここは心から安心させる為にも、必ずや舌鼓打って貰いますよ、」
階上、丁重にも手元を新聞を差し出し
「恐れ入ったよ、丸箸、はい新聞、包装に使ってね、」
丸箸、受け取った新聞の一面下記事をそのままに
「ありがとうございます、と、これ大工房を出る前に読みましたけど赤星民風神奈川県ファイナルですよね、日本国ソロツアー完遂、次は全米ツアー決定、ふう、公演良かったですね、私も新ガイシホールに行きましたよ、スコープ演出も相まって、指輪物語台詞無しでも、確と伝わりました、」
階上、ぽつりと
「ホールって、凄いんだな、赤星先生、何か当たり前に見慣れちゃったし、」
丸箸、はっとしては
「えっつ、階上さんのその雰囲気、まさか、お知り合いなんですか、」
階上、はきと
「まあ、旅館業も守秘義務あるから、大ぴらに言えないけど、赤星先生は階上幸或旅館の常連さん、たまにコンテンポラリーに付き合わされるけど、あのしなりついていけないよ、一仕事上がりはきついね、」
丸箸、目を見開いては
「いや、ちょっと待ってください、付き合うって、赤星民風さんの群舞のセレクションって、それは厳しいのですよ、めぼしい踊り手さんいないとそのまま一人なのですよ、そう、今回の様にソロツアー幾度とあったし、それをワークショップなんて、」
階上、神妙にも
「ねえ、丸箸盛り上がってるけど、赤星先生は、そこそこの劇場を埋めれる年層のプリンシパルじゃないの、倹約家だし、違うの、」
丸箸、ただ首を振り
「階上さん、とんでも有りません、今も尚世界三大ソリストの一人です、ええと、上手く雰囲気伝えられないですね、階上さん、今度ツアーあったら、一緒に行きましょう、会場の幸せな雰囲気必ず伝わりますよ、」
階上、事も無げに
「ああ、それなら、赤星先生に言っておくよ、決まってレセプション会場の警備に駆り出されるから、最前列の席位貰えるんじゃないかな、」
丸箸、感極まったまま
「うう、目の前なんて信じられない、書簡抽選でもスタンド席がやっとなのに、階上さん、赤星先生に限っては、もっと早く言うべきです、」
箸木、訥に
「階上、丸箸にあんまり夢与え過ぎるな、これでも叶わなかったら、落ち込むからな、」
階上、朗らかにも
「そっちの心配か、大丈夫だって、良いから良いから、たまには甘えないと、赤星先生が気兼ねしちゃうよ、」
丸箸、歓喜のままに
「うんうん、階上さん、約束ですよ、中部の何れかの日本国ツアーの最前列お願いしますね、」
階上、丸箸の肩にぽんと手を添え
「公演は何れのお楽しみとして、さて今日のここだけど、本当に良いのかよ丸箸ストアー、店開けないで、儲け時じゃないの、」
丸箸、はきと
「そこは大丈夫です、虎の子の往年のプラモデル、静岡模型に厳重保管の鋳型に流し込んで貰っては、パッケージ封入れ作業も手伝いました、もっとも、クリスマス商戦で仕入れ分は出し切りましたから良しとしましょう、あとは、正月の食材もオールフェリーの欠航も無く順調そのもの、年末にちゃんとリクエスト通りにお渡ししました、そう充分過ぎる程に丸箸ストアーも潤ってますから、正月はちゃんとお休み貰って十分ですよ、」
階上、ただ頷き
「いいね丸箸、箸木はマイペース作業で儲け後回しなのに、その前倒し計画、大いに結構だよ、」
箸木、事も無げに
「ほっとけ、俺はお金を取るべき作業は、ちゃんと請求している、にわか板金と一緒にするな、」
階上、噴き出すも
「本当、腕が立つから、その発言受け入れざるえないけど、勝手に敵作るなよ、」
箸木、神妙に
「敵って、知らない内に、にわか板金店仕舞いしてしまうのだが、お前だろ階上、財務省国税部にちくってるのは分かってるんだよ、」
階上、知らぬ素振りも
「ふん、さてね、」徐に丸箸に向き直り「ねえ丸箸、その炊き出しって、何作るの、」
丸箸、朗らかに
「具材たっぷりのニューイングランド風クラムチャウダーです、ああでも捻り過ぎですかね、無難に豚汁でも良いかな、階上さん、ここどう思います、」
階上、思いも深く
「いや、良いよ、頭の中で今迄の野営浮かんでしまった、ビシッチも素材だけであそこまで美味しく出来るものかね、そう、クラムチャウダーにしよう、そのコクは滅多に味わえないから、それで行こうよ、まあ、当然手伝わないと行けないね、」
丸箸、はきと
「勿論、階上さんも、お兄さんにも手伝って貰いますよ、」
階上、はにかみながら、作業キャップを無造作脱いではパンツのポケットに突っ込み、髪の毛をくしゃりと
「ふっつ、箸木、正月毎度これなのかよ、何か照れるな、」照れたままに箸木のハンチング帽を奪っては被る
箸木、髪を撫でながら
「ああ毎度だ、大工房の外に炊き出しの低車高ダイハツトラックあったろ、言わないと察しないものか、」
階上、ただ両手をお仰ぎながら
「ブラザーさ、全くだよ、そう言うのは照れずにちゃんと言おうよ、まあいいや、何もかも吹き飛ぶ、世界一美味しいクラムチャウダー作ろうぜ、」
階上箸木丸箸共にはしゃぎながらハイタッチを交わしては、弾ける音が社内に響き渡って行く
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