第35話 2087年12月21日 青森県青森市八戸区階上村 山あい

効率化されオリジナルのFー16より一回り小さい機体Fー16SUB1号艇、音速のまま海面に波紋を広げつつ、月夜の低空飛行を続行、そして内地に滑空、一気に山あいを抜けては、劈く轟音



そして、暫定県道42号暫定県道11号交差点から進んだ山あいの県道で、嘉織純佐治が車外に出ては沈黙を続ける火星の動向を伺い、ふと轟音の彼方を見上げる


嘉織、やや強ばりつつ

「待てよ、今度は戦闘機かよ、日本国の極道はどこまで玉持ってるんだよ、何処砕くんだよ、と言うか見えないでしょう、」

佐治、ただただ神妙に

「いいえ、高音の唸りも混じってますね、これはこの耳で聞いた事が有ります、全米の極秘戦闘機のアフターバーナーのジェット音です、」

嘉織、首を傾げるも

「極秘戦闘機、何だ、それ、」


その刹那、過ぎ去る黒い影に爆風、轟音と共に警告音が劈き、Fー16SUB1号艇が瞬く間にハンマーキュービックをロックオン 


舞い上がる県道と傍らの雪、佐治、雪のまとわり付いた防寒コートを払いながら

「やはりです、全米機の警告音です、ハンマーキュービックと距離を取って下さい、」

嘉織、アーミーコートの雪を払っては

「ああ、これな、知ってるよ、まさかこの階上村で聞こうなんてな、」

純、目を瞑ったままで

「うーん、何か飛んで行ったよね、」

嘉織、純のダッフルコートの雪を払いながら

「まあ、もうちょっと高台に登ろうか、さあ、純も乗った乗った、」純を丁寧に後部席にエスコートする


ラシーンマークツー照明全開のまま快速に進み、火星を見下ろせる高台に止まっては、踏めるだけのブレーキランプを点灯させては合図のサインをFー16SUB1号艇に送る


月夜の中で機影は確認出来るFー16SUB1号艇、上空を巡回するジェット音のまま、意を決したその瞬間

そして響き渡る轟音、地表ぎりぎりまで接近し、艇底を開いては寸分違わずニードル爆散爆弾1発を発射、ハンマーキュービック漸く機影を捉え青い照明を照らすも後の祭り、ハンマーキュービックの斜め上より長さ3mのニードルが爆散展開、ハンマーキュービックを瞬時に幾重に貫いては、地面に釘付けし、遂に機動停止へと


佐治、小型赤外線双眼鏡を降ろし、嘉織に渡しては

「嘉織さん、純ちゃん、終りましたよ、火星も呆気ないものです、ここで電子戦を展開出来ないなら、未だ現役のAー10F爆撃機のパイロットに料理されますね、」

嘉織、くしゃりと

「Aー10F爆撃機は洒落になるか、あの熱砂避難民を蹂躙しては追い出したベイルートに佐治もいたんだろ、Aー10F爆撃機五個大隊で漏れ無く地上掃射って、聞いててぞっとしたよ、且つベイルート統治修繕に入ったPKOから、何度ローマに泣きつかれた事かだよ、人手がまるで足りないって、国連が選りに選っても言うかね、」佐治から小型赤外線双眼鏡で火星を伺っては「って、佐治、何だよこれ、串刺しのハンマーキュービックどころか一帯を丸ごと、何かが刺さってるぞ、これ今の戦闘機がやったんだよな、確か領海内に新型戦略空母無いんだろう、いやここまでのピンポイント爆撃、無人戦闘機じゃ無理だよ、パイロット乗ってるのかよ、何だよ一体、」

佐治、いみじくも

「さて、何でしょうね、一瞬でしたがFー16SUBでしょうかね、報告書の為にですが、名前は限りなく伏せて下さいね、」

純、はたと

「おお、Fー16ってクラシック戦闘機だよね、うん、それっぽい機影だね、」

嘉織、苦々しくも

「純ね、まあ、室井先生の寺子屋に通えば、昔の兵器年鑑も見ちゃうか、」

佐治、ひたすら頷き

「くー、純ちゃんは詳しいですね、敢えてここだけのお話で言っておきましょう、正確にはFー16SUB試験機です、とある船底艦隊の雷撃兵器群です、潜水艦から飛び出すのがこれまた痺れるのですよ、万が一、八戸界隈で見てもクラシック戦闘機で押し通して下さいね、」

純、得心しては

「ほう、潜水艦に戦闘機って、帝国海軍の伊四百型潜水艦みたい、開発思想は奇襲そのものかな、」

嘉織、呆れ果てては佐治に小型赤外線双眼鏡を押しつけ

「はいどうも、あの針まみれ、いざ過ったら残酷すぎる、夢に出るだろう、全く、それでFー16SUB試験機な、それSFか、佐治、全米はどこと戦う気だよ、」

佐治、神妙に

「SFなんて、ここはリメンバーパールハーバーですよ、万事怠り有りません、」

嘉織、沈黙する麓を見つめながら

「太平洋戦争をきっちり研究するか、本当忘れないものかよ、当事国ならそれもそうか、」

佐治、澄ましては

「麦秋の立国で旧中華のレジスタンスがどうにも潜伏しています、まだまだ追わないといけませんからね、」

嘉織、もどかしくも

「あれもそれも、渋い話はまた今度だ、まあ今回は助かったよ、」

全照明を灯したままのラシーンマークツー一同、周回するFー16SUBに大きく手を振る


速度を落とし何度も回頭するFー16SUB、テールライトの信号は【-・-・・ ・・- --・-・ ・・ ・-・・ ・-・-・ --・ ・・- ・-・-・- -・・- -・ ・-・・・ --・-- ・- --・-・ -・・- --・-・ ・・- (救助完了、またお会いしましょう)】


Fー16SUB一号艇パイロット笑顔から一転

「船底艦隊に報告、敵コードネーム火星、百舌鳥針を突き刺し沈黙のままです、再起動の恐れは無いものの、自機搭載のローズスパイク爆弾発射許可、爆破検討願います、」

「“こちら田所特務艦長、爆破の許可は出来ない、爆破しようものなら、報告書上全米連邦のハンマーキュービックの所有を吐露する事になる、全米連邦にそんな真実は無い、”」

「隠蔽は後味が悪いですか、それともデータ回収ですか、」

「“その何れでも無い、火星の沈黙、ニードル爆散爆弾はあらゆる回路基盤を破壊貫通したようだ、C9Iの遠距離通信が回復している、その火星はただ明朝に筐体を回収し、今回のあらましを精査するまでだ、”」

「Crazy.回収なんて、こんなデカ物ですよ、」

「“明朝と共に船上艦隊の補給揚陸艦カゴシマを接岸させる、秘匿作戦は継続中、今後他言無用だ、以上、戦闘任務完了、Fー16SUB1号艇は帰投シークエンスに直ちに従いオペレーション14を完遂する事、尚船底艦隊は再び潜航する、God Bless you.”」

「Thank you all. Fー16SUB1号艇は、低空のまま太平洋の戦略空母エイブラハム・リンカーンへ帰投、直ちに帰投シークエンスに入ります、」

Fー16SUB一号艇、旋回してはテールライトを消し、そのまま洋上へと進路を定める



遥か八戸港沖の太平洋、全米海軍西太平洋艦隊が悠々と日本国領海付近を航行中、退艦寸前の原子力戦略空母エイブラハム・リンカーン、イージスミサイル巡洋艦ヒュウガ、イージスミサイル巡洋艦ゴトウ・アイランズ、補給揚陸艦カゴシマがお飾り程度の警邏から一転、緊急アラートが各艦内に響き渡る


退艦寸前の原子力戦略空母エイブラハム・リンカーンの操縦室は引き継ぎでただ慌ただしくも

正面隣り合った艦長席と副艦長席のモニターが、Fー16SUB一号艇の進路を指し示す

右隣の西太平洋艦隊作戦部長ヤコブ本多少佐、手元のボタンを操作すると、副艦長席が電動で左90度に回頭する

「ジェイムス司令、発令のオペレーション14を確認します、ここは戦略空母エイブラハム・リンカーンのコマンドーを使うべきではなかったのですか、」

左隣りの西太平洋艦隊司令ジェイムズ准将、手元のボタンを操作しては、艦長席が電動で右90度に回頭する

「本多作戦部長、いや、良い、ハンマーキュービックを絨毯爆撃で吹っ飛ばしては、何故にハンマーキュービック出現からの釈明が困難になる、しかも数の限りコマンドー無人戦闘機編隊を飛ばし、大陸のレーダーに写ったら国際問題だ、我々船上艦隊は警備が目的だよ、とても言えない理由で日本国国土に立ち入ったら各国の均衡が崩れる、ここは温和に行こう」

「ジェイムス司令、とは言え、陸には密偵がわんさかいますよ、」

「まあ、久し振りの西太平洋の実戦なら、些末なものだ、何ら気にする事は無いさ、」

「5年前の済州島海賊討伐は実戦と言えませんよ、旧中華が漏らした為に、海賊艇が離散しましたからね、」

「言うかね、本多作戦部長、痛快な程に散々済州島全域にミサイル斉射して焼け野原にしても、ノーカウントか、今現在済州島が平原であればこその海賊拠点潰滅の意義だよ、海賊討伐の面目は大いに立つ、どうかね、」

「一定の評価はしましょう、ただ、その目の先の統一朝鮮共和国、国会は与党野党根回しの限りで対外的に空転のままに棚上げですよ、海賊の存在証明を出せ、いや有り得ないの、行ったり来たり、呆れますね、そもそも捕縛した海賊達が所属を一切名乗らない以上、一介の不逞の輩に過ぎません、旧中華のそれとは分かっていても、仲裁措置のある国家間の戦争にもなりませんよ、」

「本多作戦部長、捕らえた海賊達だが、八丈島司法刑務所に送還しても、まだ吐かないのか、」

「ジェイムズ司令、吐いたら、一族リンチですからね、中華一家のコネクションは絶対です、」

「勃興の麦秋は、人道的身柄保証しないものか、」

「麦秋の大儀ですが、そこは立国間も無く、且つ不逞の輩は亡き者にしたいですからね、このままの方が都合が良いだけですよ、」

「本多作戦部長、そこを何とかだよ、ここは海賊狩りを押しに押して、統一朝鮮にPKOを敷かないものか、繊細な立場の全米西太平洋艦隊を何時迄も増配備出来ないと、一切の有事に対応出来ないぞ、」

「生憎ですが、増配備は先送りですね、そもそもの済州島は第三次世界大戦後早々に、統一朝鮮から国連に寄与されたままです、言いがかりの紛争のきっかけが有りません、それに統一朝鮮は今や東南アジアの優等生です、何の不満が有りますか、済州島を統治出来なかった国連に非が有ると、喋り倒しますよ、」

「よくもだよ、統一朝鮮躍進のそれは旧中華のコネクション有りきだろ、その線はどう見立てる、」 

「ジェイムズ司令、現在の統一朝鮮財閥は、旧中華だけではなく、麦秋にも深く潜り込んでいますが、エージェントによると、それは中国大陸工場群の引き継ぎだけで尻窄みになりそうです、麦秋、いや、愛新覚羅龍舜女帝は何かに付け品がよろしいとの評判です、ここで詰んでいますね、旧中華が中華人民継承同盟と言うただの団体に成り下がった現在、統一朝鮮共和国は共倒れの恐れを逃れられません、」

「やはりと言うべきか、統一朝鮮政策は、ゆっくり、衰退するのを見てろが全米最高議会の総意か、東アジア方面の腰の重さは困ったものだ、我々当事者の極東海軍を袖にしての、この西太平洋での船上艦隊の割り振りとはね、」

「恐れながら、ジェイムズ司令、全米最高議会も、優先順位が有ります、統一朝鮮財閥に安価な回路基板の生産開発させてからの、大政策の施しにもなりましょう、財閥解体のタイミングを逸してはなりません、」

「安価な回路基板とはね、全く、一人端末三台の時代が懐かしいよ、」

「恐れながら、ジェイムズ司令、そこまでお年は召されていませんよね、」

「そこは辛うじてだよ、戦前の電子機器を大切に壊れる迄使う世代だよ、私達は、」

「A-ha.日立派、サムスン派、どちらですか、」

「勿論、お米を大切に炊ける日立派だがね、炊飯器の内釜は三度作り直して大切に使ってるよ、」

「それなら、日本国沖に張り付くのも皆納得しましょう、」


艦橋からは、ただ笑みが溢れる


「ただ、本多作戦部長、今回の我々はあっさり終って良いものか、」

「ジェイムズ司令、そこは問題有りません、あとは容認出来るイレギュラーを待ちましょう、」

「そうだな、階上嘉織が発端ならば何れの展開か、上家衆にはただ頭が下がるよ、」

「その上家衆が相手なら、今回出る迄も無いオペレーション立案が半分も有りましたが、日本国の治政に委ねるべきだったかもしれませんね、」

「いや、ここは全米連邦の威信は保たねばならない、」

「ジェイムズ司令、威信も何も、ハンマーキュービックがいつの間に八戸区で組み上げられたのですか、パーツ部品供給は勿論、全く大問題ですよ、特にミス階上は申し訳が立ちません、」

「気にするな、本多作戦部長、そこはいつもマイフレンズでノープレムだ、」

「ジェイムズ司令、階上幸或旅館で毎日日本酒と海鮮で宴会したら、仲良しになれるとお思いですか、逆に我々一同に提供する為に奔走しているのですよ、」

「本多作戦部長、実に細かいね、田酒はみちのくの良心そのものだよ、そうだろう、」

「ジェイムズ司令、いつもそこで手打ちのつもりでしょうけど、もう良いです、ジャミングが消えたので、ミス階上の車両ラシーンマークツーに、艦隊名で謝辞の打電をしておきます、」前面のキーボードに手を揃え

「本多作戦部長、くれぐれも丁重にだ、階上幸或旅館を出入り禁止にされては敵わん、」ただ豪快に笑い飛ばす

「文言は私にお任せで良いですか、どうなっても知りませんからね、」

「ああ、結構だ、それと補給揚陸艦カゴシマの当番非番全隊員に今直ぐ食わせろ、隊員総上陸だ、かなりの力仕事になる、今から朝迄存分に上級食食わさせておけ、」

「深夜のステーキなど食えますかね、」

「本多作戦部長、全米海軍は世界で一番タフなんだよ、知らないのか、」尚も痛烈に笑い飛ばすも、苦笑しか無い操縦室一同



火星を見下ろせる高台の一同、未だ火星の動向を気にしつつ

佐治、小型赤外線双眼鏡で見張ったままに

「火星、今も照明と全センサーは沈黙中ですね、」

純、半ドア越しに後部席に座ったままでモニターを見つめ

「大きなソナー音は勿論だけど、微弱なソナー音も無いから、安心出来るかな、」

嘉織、くしゃりと

「さて帰るか、って、このまま道なりに迂回してかな、とは言えな、」月明かりの中、ただ麓の交差点にいる筈の火星を見つめる

佐治、嘉織を促しては

「嘉織さん、流石に、音速のまま百舌鳥針がここまで突き刺さったら動けません、それもこれも嘉織さん純ちゃん私の応戦が無かったら、ハンマーキュービックも表向き全局面地上兵器ですから、如何なる空戦兵器も撃墜でしたね、全米海軍司令部にはきっちり認識させます、」

嘉織、憮然と

「まあか、火星の真髄、そこまで強いものかね、」漸く踵を返し

佐治、踵を返し

「良いですか、嘉織さん純ちゃん私が散々退けての、やっとのこれです、二度目とは戦いたくないものです、」

嘉織、はたと止まり、傍らの佐治の右腕にグーパンチ

「それ、肝に銘じておく、延々と延長戦じゃ、生理現象的にもやばすぎる、」

ふと、純のラシーンマークツーの後部席モニターに着信メッセージ通知

「うーん、何だろ、全米海軍の軍用通信のパケット来てるけど、ラシーンマークツーにC9Iも付いているなんて、いつからリンクしていたのかな、えーと、この近隣の全米海軍のパスワードは、何だろうね、」

嘉織、後部席に回り込んでは

「今頃か、佐治、パスワード何だよ、」

佐治、我が物顔で

「全米西太平洋艦隊であれば、長らく【HOTATE】です、自然と笑顔になります、はい、」

嘉織、目を丸くしては

「パスワード、ざるだろ、変えろよ、」

純、キーボードを叩いては、開かれる着信メッセージの文面

「ふむふむ、読むね、全米海軍西太平洋艦隊一同よりです、【階上嘉織様、階上純様、共の戦線に立てた事を誇りに感じ入ます、より一層の神の御加護あらん事を また補給揚陸艦カゴシマより、シャンパン24ダースをお送りしますので受領印よろしくお願いします、メリークリスマス、】だって」

嘉織、目を覆っては

「おいおい、24ダースって、叱責で艦隊のクリスマス取り上げかよ、全くさ、酷い話だな、」

佐治、さもありなんと馬鹿裏に

「さあどうでしょう、受け取る以上、階上幸或旅館に傾れ込むつもりでしょうね、」

純、目まぐるしくも

「うわ、どうしよう、今から成貴にお魚確保して貰わないと、そうだよ、それ間違いなく、全米さんの好きな寿司パーティになるね、父さん母さん握りぱなしで疲れちゃうかな、それなら手巻き寿司にだけど、いやー海苔そこまであるかな、ねえ、どうしよう嘉織ちゃん、」

嘉織、堪らず立ち眩みも

「駄目だ、どうやっても赤字になる、ふう、」ただ溜息

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