第31話 2087年12月21日 青森県青森市八戸区階上村 山岳峠下り
階上岳を、ラシーンマークツーで下る一行、しかし遠くよりのソナー音が不気味にも山岳に響き渡り始めて行く
頂上付近に煌々と輝く照明、まさかのハンマーキュービックが再びと、ソナー音と共に巨大岩の様な転がる音が一際に混ざり合う
嘉織、不敵にも
「この音、来やがるか、」
純、その光源の向きに振り向きながら
「あの黄色の照明、そうだね、直上から真っすぐ転がって来るよ、」
佐治、小型赤外線双眼鏡を覗いては
「直上より、球体上部確認、火星来てます、」
純、凛と
「植林は杉だから凪ぎ足せるかな、檜にしたいのもやまやまだけど、ゲリラ掃討戦の際伐採しにくいからね、」
嘉織、ただ溜息で
「火星、無茶苦茶だな、そこまで想定出来ないよ、来るなら道なりに来いよ、」
佐治、ただ困り顔で
「さすがレジェンドオブニューメキシコメイドと言うべきでしょうか、この火星、実戦配備記録無いものの、ここまでで経験をかなり積んでいますよ、さて、この軌道も巧みな事でしょう、」
嘉織、ハンドルをただ回し大きなカーブを下っては
「火星、その計算してるのかよ、まさかだろ、」カーブを抜けては一層アクセル踏む
純、モニター見つめては
「こちらも、オートシュミレーション参照してるよ、五つの軌道計算中、いずれもだね、どうしてもラシーンマークツー踏み潰す気だよ、」
嘉織、声を荒げては
「ちょっと待った、五つの軌道全部って、佐治、言え、この軌道経験どこで積んだ、」
佐治、こくりと
「私の閲覧経験で言える事は、タイトルリスト位です、確かに第五次東南アジア紛争のカンボジアタイ山間部国境での使用されたようです、ならば推して知るべしですね、これは死にますね、いいえ本音としては死にたく有りません、」
嘉織、はきと
「おい、山間部の村って、密殺か、ふざけるな、」
佐治、神妙に
「旧来の反乱分子も多いですから、レジェンドオブニューメキシコ、全米に恩を売ったつもりでしょう、」
嘉織、巧みクラッチ踏みながらギアチェンジしては加速をを上げる
「佐治、火星跡形も無く打ち壊して、積まれた自立基盤をうっかり回収しても、絶対レジェンドオブニューメキシコに渡すな、」
佐治、ただ頷き
「言われなくても、全米は、新興のレジェンドオブニューメキシコには距離を置いています、募集仕様最前提としては戦前戦中の大量殺戮兵器は、議会に申請無しでは使用厳禁ですからね、それが明らかに無断で今ここです、落ちぶれたジャパニーズ極道にもたらされては、この有様とは、実に嘆かわしいですね、やりすぎに尽きます、」
嘉織、光源を時折追いながらも
「まずい、この手応え、どうしてもかち合う、」プリセットを手を替え品を替え変更しては下山速度を上げる
純、モニター内の火星軌道が五つから二つに集約する様に
「反響音、質量、ルート参照終了、何れの二つも、あと三分で追いつくよ、」
嘉織、凛と
「下山はどうしてもこの速度だ、回避しようとブレーキ踏んだら、火星に塞がれ一斉射だ、全く、頂上付近まで上がった以上全てが通り道か、ここかだな、このまま合流しようものなら、ここでやっと使えるか、純はナビで索敵続行、佐治はトラップがあるから撃ち抜け、」
佐治、赤外線ヘッドセットを徐に掛けながら、銃身に手を伸ばし
「嘉織さん、どこにトラップのトリガーが有りますか、」
嘉織、ただアクセルの緩急を慎重に保ちながら
「佐治、通りすがりで、穴の空いていない鳥箱をとにかく撃ち抜け、」
佐治、はきと
「とことんゲリラ戦ですね、張り切りましょう、」
佐治、車窓からアサルトライフルSIGSG550エレクトロを張り出しながら連射しては、仕掛けの穴の空いていない鳥箱を撃ち抜くと、張りつめ伸びたリールが次々切れ、林の中で次々襲う丸太の振り子に鐘撞きとばかりの連打
既にトラップ地帯に入り込んでいるハンマーキュービック、丸太が往復しては何度も黒鉄の球体を打ち鳴らす、ハンマーキュービック何度もふらついては、回避とばかりにやっと下り道に出ては目標を追走しながらも、堪らず全方位に電磁機関銃乱射、道すがらの罠の丸太を振る綱が千切れ、トラップが悉く沈黙して行く
林越しにハンマーキュービックの電磁機関銃の残光を見送る一同
純、ふと
「火星の速度落ちたけど、それでも依然健在なんて、凄い固いね、」
嘉織、下山道をヘッドライトを照らすままにハンドルを握りながら
「ハンマーキュービックって基本対人用なんだろ、それをこのトラップだらけの林を縦断なんて相当だぞ、そこだよ、これって自転で全部弾けるものなのか、」
佐治、神妙に
「この質量に、まさに自転あればこそですね、初期の機体には操縦席が付いていたのですが、かなり悲惨です、適正運用時間をどうしても越え、自立回転のフレームがオーバーヒートしパイロットは何れも脳溢血で死亡のまま回収です、それも決戦兵器故なのですが、ここまで戦中の大量殺戮の仕様が上がりますと、止む得ず自律兵器にもなりましょうか、」
嘉織、歯噛みしては
「全く、あのボディーどんなに甚振っても、電磁機関銃撃ちやがる、結局全力戦かよ、」
佐治、うんざりしては
「まあ、同じ自律兵器なら動く砦T28DES相当でやっと勝てるのでしょうが、あちらは凍結ですからね、いや、本当強いですね武士さんは、」万感の思いも
嘉織、神妙
「佐治、その話、じっくり聞かせろ、寄合所経由の私に入って来る話は堂上の噂が先行してさっぱりだ、ここでアップデートされた自走砲出て来たら対処出来ないって、」
純、ぽつりと
「火星でも、手一杯なのに悩みどころだね、」
佐治、伺いながらも
「そこはごもっともですが、T28DESの登場は有り得ません、それもT28DESの起動キーの開示情報を巡っては、まだ細かに公表出来ない旨です、どこの機関に確認しようとも、それですよ、私も嘉織さんも然程変わらない情報の筈ですよ、」
嘉織、舌打ちしては
「全く、チリ州に勇名が結集って、何なんだよ一体、何があったんだ、」
純、モニターに目を凝らし、咄嗟に後ろを振り返る
「この光源に、ソナー音、嘉織ちゃん、集中、火星いつの間に道なりに乗ったみたいだよ、林からの落下直撃は諦めたみたい、」
嘉織、バックミラー越しに、機影トレースに目を見張っては
「って、あの黄色い照明、道なりにいるよ、まずい、あの質量ならこっちを下って正解だ、」
純、モニターのリバーブスペクトラをタッチで拡大しては
「反響音、距離300m、道なりでも余裕は無いよ、」
嘉織、うんざりと
「火星、邪魔だよ、車道から落ちないのかよ、」
純、こくりと頷き
「それだね、ストラクチャーデスチャージャー、立体サイネージで煙見せるね、」
嘉織、前面コンソールの残った三つボタンを一瞥するも
「純、煙って、夜だし、火星はあんなばりばりの照明持ってるし、ソナー音で追って来るでしょう、どうかな、」
佐治、はきと
「いえいえ、火星は第二形態に移ってます、使わない手は無いですよ、自律兵器と言えど画像認識は重要ですからね、」
純、エディター画面を展開し、イジケータを次々フリックするも
「追従フローター付きだけど、最大は200mか、嘉織ちゃん、このまま最大車間距離保ってね、」
嘉織、凛と
「了解、射出、」
純、正面モニターを見つめては
「ストラクチャーデスチャージャ、全一発射出、」モニターの搭載兵器のボタンをタッチ
ラシーンマークツー後方後部武器格納部右上部からワイヤーフローターが飛び出し開いては、延々煙幕の立体サイネージを投射
ハンマーキュービック、精巧な疑似煙を見誤り、林道を踏み外し傍らの沢に落ちる
純、嬉々と
「嘉織ちゃん、火星落ちたよ、効いたよ、」
佐治、ただ唸っては
「まさか、高性能故に魅了されるとは、」
嘉織、はきと
「佐治、感心するな、」
佐治、神妙にも
「いやいや、まさかの、あのハンマーキュービックがですよ、大隊どころかややの一般車両が善戦なんて、誰も信じないでしょうね、」
純、モニター内の火星軌道三つを見ては、はたと
「でもね、沢に落ちたままって、まずいかな、三つの軌道あるけど、出口まっしぐらじゃないかな、」
嘉織、歯噛みするも、確実にハンドルを切る
「そっちか、尚もトラップの林を進まれて、先に塞がれたらまずい、」
佐治、勇猛にも
「急ぎましょう、まずはそれです、」
嘉織、ウインドウ越しに光源を見ては
「敗残兵にありがちな進路だね、トラップは山に隈無くだけど、狙い通りかな、とは言え、追いつくのは五分五分じゃないかな、」
嘉織、吠えては
「罠と武器に全部はまる自律兵器って、なんだよ、それでも五分五分なのかよ、」
佐治、ふわりと
「そこは嘉織さんと純ちゃんが上手なだけですよ、さすがです、」ただ拍手喝采
嘉織、声高に
「佐治、褒める位なら、リモコンとかで止めろ、軍隊なら持ってるだろ、非番とか一切聞かないからな、出せよ、こら、」
佐治、ウールジャケットの内ポケットからマルチリモコン取り出し、首から下げたキーでハードカバーを開け、ハンマーキュービックの方向に二度三度強制リセットボタン押すも
「それはそうでしょう、無理ですね、あらゆる配布プログラムを取り込んでいますから、我々がターゲットのままです、」再びリモコンの扉を閉じる
嘉織、ハンドル片手に左手さし出し
「佐治貸せ、純、見て、」そのまま佐治からマルチリモコン奪っては後部席の純に渡す
純、渡されたマルチリモコンを必死に開こうも
「嘉織ちゃん、これ、ハードキー無いと開かないよ、駄目、操作出来ないよ、もう番も頑丈にプロテクトされて、精密ドライバーさえ入らないよ、もう、ここは力任せだろうけど、握力の無い私は勿論誰もこじ開ける事も出来ないよ、はい、佐治さん、」恭しく佐治へと返す
嘉織、尚も手を差し出し
「佐治、貴様、用心深いな、貸せ、私が空ける、」
佐治、真摯に
「嘉織さん、行けません、リモコンの基板は一体成形に直接プリントしていますから、念動力で割っては機能しませんよ、」
嘉織、忌々しくも
「何で、ぶっ壊れ易い設計にするんだよ、ふざけるな、」
佐治、真摯に
「お気にしないでください、緊急対策はいつもの事ですよ、」
嘉織、ぶつくさと
「終ったら、全米、まとめて絶対張っ倒す、見てろよ、」
純のモニターに警告表示、不意に
「軌道一つに絞れたよ、こっちを無視して、どうしても出口に向ってるみたい、」
嘉織、怒りに震えるも
「くあ、どうしてもそれか、塞いで嬲り殺しか、それならスピード上げる迄だって、」
純、後部席に広がる全マルチモニターにドライブ全プリセット効率状況呼び出しては
「嘉織ちゃん、姿勢制御プリセット全部使ったよね、ジェネレーション起動して、四輪補助プログラム上がったから、それ使うね、道上って来て覚えた筈だから、効率ドラフト出来るかな、」
嘉織、はきと
「純、私が上書きしたプリセットとリンク出来るの、」
純、右サイドモニターをスクロールしては
「勿論、嘉織ちゃんの今迄のシュミレーションがちゃんと生きてるよ、今最適化中、81%、97%、100%、終ったよ、」
嘉織、凛と
「純、シーケンス運転補助入って、箸木に引き続きラリーレースナビ入れさせたから、メインメニューにあるよね、」
純、忽ちモニターのラリーレースナビを引出し
「あるよ、了解、姿勢制御4レイヤーシーケンススタート、雪の降下道考慮しての姿勢安定、嘉織ちゃん、アクセルどんどん踏んで、」
嘉織、血気盛んにも
「って、私踏み外すなよ、」ハンドルを握り、ダブルそしてトリプルクラッチ、アクセルを一気に踏み抜く
山岳峠下りの攻防、曲がりくねる道を勘とテクノロジーを一体に一気に下るラシーンマークツーと、林の丸太のトラップを判読しては綱を弾き叩き落として行くハンマーキュービック、最終直線距離にして500m、300m、そして100m、迫る黄色い照明のシャワー
佐治、目も点に
「ぶつかる、」
純、上部モニターのラシーンマークツーの保守状況をチェックしては、
「駄目元かな、」上部モニターの全照明のイジケータをフリックで手際良く次々上げては、全ライトが瞬くラシーンマークツー
嘉織、こことぞばかり
「行け、」辿ったタイヤの跡を見つけては、アクセルをただ踏み抜く
ハンマーキュービック、ラシーンマークツーの光源攻撃にそのまま眩み、巡航速度で突っ込むも、出口間際、間一髪でハンマーキュービックを擦り抜けるラシーンマークツー、寸で躱したその差5m
嘉織、尚もアクセルを踏んだまま麓へとまっしぐら
「紙一重だ、」
純、引き続きモニター見るも予断を許さず
「ふう、最後は嘉織ちゃんが臆せず、視認でやっとね、でもね、いるよ後ろ、」
佐治、振り向いては、尚も押し迫るハンマーキュービックの照明に眩むも
「深夜戦は、両軍共に全く危ういものです、ですが火星にはそれが通じませんね、」
嘉織、尚も踏ん張ったまま
「余裕じゃないぞ、今迄で一番近いって、どうするんだよ、」
純、素早く防御兵器のエディター画面に入っては
「この距離で、火星があの出力なら、リミッターブレイカーの加速器いけるよ、」
嘉織、確と
「オーバーブーストか、純、それ、今直ぐ、」
純、透かさず
「リミッターブレイカー、全一発射出、」メインメニューの防御兵器ボタンを押す
ラシーンマークツー後方後部武器格納部左上部からワイヤーロックが放出、自転するハンマーキュービック突き刺さり巻き上がってゆく
嘉織、素早く握ったハンドルのハンドルステアリング調整摘みボタンを最大限の重さに振り絞り
「くっつ、それでもワイヤーが引かれる、純、反応は、」
純、モニターにはトレースされるハンマーキュービックのフレーム循環器を見つめ、サーモグラフィーの効果をはきと
「火星、過熱量増加、ワイヤー打ち込んで強制的にリミッターを外しに行ってるよ、嘉織ちゃん、もうちょっと頑張って、」エディター画面をフリックしては強制的にゲインを上げる
ハンマーキュービック、自走しながらいよいよ電子機関銃発砲しようも、途端に各銃身がオーバーヒートし堪らず通電しては瞬く間に作動不能の減速へと
嘉織、これでもかとアクセルを踏み
「純、重い、限界だ、」
純、透かさずモニターのメインメニューの防御兵器ボタンを再度タッチ
「リミッターブレイカー、放出、」
ワイヤーそのままもリミッターブレイカーから漸く開放されるハンマーキュービック、しかし、各フレームのオーバーヒート一向に引かず、見る見る効率が下がっては自転スピードが落ちて行き、いよいよその自転が止まり、その重量のままに下りの峠を転がるのみ
ラシーンマークツー、勢いそのままに麓の辻を直角に左折してはしばしの通常運転へと
佐治、振り向いたまま、黄色の照明が止まったのを見るや
「やっと、沈黙ですか、いや、火星が沈黙するなどと、」
嘉織、来た道を仰いでは
「良いんだよ、とにかく今は距離を置く、」後部席に一瞥も「こっちはあらかた防御兵器出したよね、純、もっと無いの、」
純、溜息も深く
「四個使ったよ、あとの一個のは使い様が無いかな、」
佐治、果敢にも
「火星の筐体は健在、まだ来ますよ、さて、どう凌ぎますか、」
嘉織、神妙に
「最悪、火星のバッテリー切れ起こす迄、三日三晩走るさ、」
佐治、さもありんと
「さて三日三晩以上になりましょうが、東通の猿ヶ森砂丘を、延々走っては的になりますよ、」
嘉織、はきと
「なんなら、疎開地の秋田に行って市街戦するか、道は覚えてるよ、」
佐治、首を横に振っては
「火星に、これ以上データ回収されては厄介です、ここは止む得ません、猿ヶ森砂丘しか有りませんね、」
純、不意に
「でもね、このラシーン、マークツーがつく位だから、開発コマンドが階層に残ってるかも、ジェネレーションが付いてるなら何か有る筈だよ、」
嘉織、凛と
「無いよりはましか、純、今の内に探って、」
純、画面を見つめたまま
「今、アドミニストレーターで入ってるけど、時間ログ管理ばかりだね、」
佐治、得意顔で
「ok、ここで来ました日産グローバルのパートナー、フランスのルノーグラシアス関連なら任せて下さい、開発者ログインは“オイナリ”ですよ、」
嘉織、目を見張り
「佐治、待てよ、何でルノーグラシアスのログイン知ってるんだよ、トップのNSAはそんなにオープンなのかよ、」
佐治、意気揚々に
「いえいえ、全米に納車している以上、戦地のサスペンション設定は細かに変えないと行けません、」
純、はたと
「成る程【oinari】ね、佳織ちゃん、念の為にハイブリッドに返すから、マニュアル運転よろしくね、」
嘉織、確と
「了解、」
純、操作を終え、瞬く間にログイン画面に移っては
「さてと【oinari】か、」キーボードで素早く一連のコマンドを叩くと、瞬く間にユーザーインタフェースがコマンドの羅列に様変わり
嘉織、困惑しては
「選りに選って日本の単語かよ、ここで文香皇妃かよ、出自が日本の公族にはどうしても頭上がんないよ、」
佐治、はきと
「嘉織さん、それ以上は不敬罪になりますからね、」
嘉織、一瞬遠い目も
「急転直下の文香皇妃戴冠前の公族同士の婚礼のそれ、溜息しか出ないよ、私は研修と称されてはで警備を兼ねたパレードに参加しつつ、その後も給仕だもの、本当働かせるよなフランスさ、とにも、フランスは尖兵いないのがお約束だから近衛兵置けないのがあれで皆何かと駆り出される、と言う訳で婚礼パレードは大いに興奮する阿呆がいて本当困ったね、フランスだけだぞ、そんな非礼する奴ら、って、あいつ文香、私が影武者したら露見するの分かってて、三手に分けたろ、大体だな、影武者は円谷で充分だって言うのに、私を絶対ネタにするつもりだろ、してるだろ、なあ、文香、もうさ、絶対名張さんにしばいて貰うぜ、」
佐治、神妙に
「はいはい、その荒野、共同通信で読みましたよ、どう言う訳かシャンゼリゼ通りのガス灯全部へし折られて、へたり込む暴徒に、毅然と立ち竦む文香公女であろうの勇姿、いや映えますね、ただ然るべき筋では、それが出来るのは嘉織さんと一目で分かりましたがね、頬笑ましいものです、とは言え、事前の文香フィーバーを鑑みますと、非常に有りの選択肢です、ただ文香皇妃は佇まいがただ美しいですから、何れは露見ですね、文香皇妃は何ら悪気は無いと思われます、はい、」
純、タイピングしながら訥に
「そうなんだよね、嘉織ちゃん、ウェディングドレス何回か着るから、結納遅れちゃうんだよね、」不意にエンターキーを叩くと、ローディングバーが現れる
嘉織、不意に
「えっつ、都合五回だけど、かー、それもこれも文香の鉄板が、貴族間で流れて、それじゃないかよ、そもそもだね、いや用意された賄いは実に美味しかった、うん、」一気に捲し上げ「だけどな、あれか文香、首席目指してのラテラノ大学で倫理筆記実技行政生活の全五冠取れそうに無い意趣返しか、そんなの遥か天井の天上さんと源さんだけだって、筆記満点の円谷に勝てるか、実技も幼い頃からオリエンテーリングこなしてた私に勝てるか、結果倫理行政生活の三冠首席でも充分でしょう、しかも学生結婚してでのそれだから、充分偉業だろ、」
佐治、感嘆しては
「くー、その賞賛、文香王妃は実にご尽力の方ですね、それは彼のラテラノ大学の首席になりましょう、」
嘉織、溜息混じりに
「もう、何で私褒めてるんだよ、そう聞こえるものかよ、もっぱらの世間の評判もそれか、」
純、ふと
「嘉織ちゃん、文香王妃認めようよ、嘉織ちゃんと円谷さんいても、僅差だったのでしょう、大勝負のバイアスロンでのタイムは一位嘉織ちゃんすぐの二位文香王妃なんでしょう、勝負は時の運も多々あるよ、」
嘉織、興奮混じりに
「文香、あいつのしなやかさ、対戦車ライフル連射しても正確だよ、そこは才能だよ、勝てないよ、」
純、ローディングバーを眺めながら
「兎に角嘉織ちゃん、同じ、日本人同士、仲良くだよ、階上幸或旅館の営業も宜しくね、」
嘉織、はきと
「そう営業も大事、そもそも、日本国の再興はだね、地方発信の真の発見を見つけてこその、いや、ここ、話すと長くなるな、どうしよう華辺家の事も踏まえないといけないし、はあ、各方面への混乱に拍車掛けるな、良い、もう止めとく、」
佐治、凛と
「日本国の再興は理解しましょう、ですが日本国は復興最優先につき、決して公族関係者軒並み国外に追い出したわけでは有りませんからね、とは言え、ここに同情論が絡み合って、ユーロの公族との婚姻が活発になるのですよね、結果okでしょうか、」
嘉織、怒りも露わに
「結果ok言うな、こっちは、日本国で先鋒たるあきら様に会ってるんだ、聞く程苦い事言うなよな、」
純、全データをローディングしては、一斉に運転席助手席のコンソール、後部席ヘッドレストモニターが青白い照明から赤い照明に変わる
純、思わず溜息も
「本当に【oinari】で再起動来たよ、ジェネレーションも復活ね、」純のモニターの日本語メニューの幾つかの中に【開発区画】の表示
嘉織、不意に
「さてと、プリセット運転にしようか、」正面コンソールをタッチしてはプリセットを呼び出しギア不必要のオートマ走行へ「純、これでがっちり聞けるよ、」
佐治、砕けては
「いざのラシーンマークツーですが、意外にセキュリティが甘めですね、さて、開発の階層まで潜って、もう後には引き返せませんね、火星を何としても仕留めましょう、」
嘉織、ハンドルのみを操りつつ
「いや、何と言うか、ちょっと待て、開発モードなら外れも眠ってるだろう、佐治、まだ演習気取りかよ、」
佐治、はきと
「これは覚悟です、ここで決めるべきです、良いですか、嘉織さん、純ちゃん、このパワーアップで決して死ねませんよ、もし迂闊にも死んだら、改装されまくったハンマーキュービック、反転して階上幸或旅館に行ったついでに、証拠を残らず消すため、八戸主要準地域蹂躙されますよ、今の日本国の辺境が消えてもどこも記事にしませんから、レジェンドオブニューメキシコの思惑通りです、」
嘉織、うんざり顔で
「たく、火星散々しばいてもこれだよ、どうやって倒せって、この先もトラップは原始的だぞ、ここまでトラップ1/4使っても壊れないじゃないかよ、」
佐治、逡巡するも
「それでも1/4って、嘉織さん、純ちゃん、階上村はここまで準備万端ですか、」
嘉織とくとくと
「当たり前だ、当時の日本は最前線の真っただ中、中国と都合10年も小競り合いしていたら、トラップも積もりに積もるだろう、それでやっと、日本の人口の1/3が生き残ったんだって、」
純、左サブモニターで羅列するファイル名をスクロールしては、はたと
「あったよ、強そうな名前、センシティブデストロイヤー、どうかな、」ただタッチしては関連pdfをどんどん開いて行く「でもこれ、電子マニュアルがフランス語なのね、ふむ、」
嘉織、項垂れるも
「フランス語かよ、せめてドイツ語で書けよ、」
純、流暢にも
「Il n'y a pas de problème.ふむ、成る程、これならあのトラップで勝てるかもだよ、純ちゃん、」
佐治、思わずこみ上げ
「おやおや、フランス語も行けますか、純ちゃん、」
純、くすりと
「ふふ、旅館業だからね、英語イスラム語中国語イタリア語ポルトガル語ドイツ語フランス語は、室井先生の寺子屋で大昔のテキスト嗜む程度に頑張ってるんだよ、」
嘉織、ただ綻び
「まじ、すげー純、大学行かなくて、それ、うーん、でもな、やっぱり留学させたいよ、」
純、二度目のテキスト速読
「嘉織ちゃん、家族会議は後、このまま、あそこの三叉路まで行って、仕上げるよ、」
嘉織、顔を一瞬しかめるも、
「三叉路って、そういう武器か、」
佐治、歓喜そのものに
「おやおや、頼もしい、いざファイナル、我々の勝利ですか、くー、」
嘉織、はきと
「当たり前だ、純も連れてるんだ、絶対無傷で帰ってやる、」
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