第30話 2087年12月21日 青森県青森市八戸区階上村 旧町営牧畜場

ヘッドライト全開のまま、階上岳頂上間近の旧町営牧畜場滑り込むラシーンマークツー


嘉織、ハンドルを切りながら、ヘッドライトの方向そのままに旧町営牧畜場を見渡し

「ふう、誘ってはみたけど、あれそれの落とし穴小さいかな、さて、」用心の為に照明を全て落とす

純、思いを巡らしながら

「火星は二車線使ってるよね、そう、車三台分の大きさなら、大丈夫じゃないかな、」

嘉織、切に

「そこが微妙だよね、きっちりはまらないと、姿勢制御で躱されそうだし、」

佐治、くしゃりと

「この頂上にもですか、よくも仕掛けますね、呆れを越えただ尊敬です、いつの時代のソルジャーですか、真田幸村親子でもここまで出城に仕掛けませんよ、」

純、ふと

「そうなんだよね、戦中は、頂上だし、士気高揚の為に砦作ってたみたいなんだよね、撤収しなきゃ良かったのに、」

嘉織、にこりと

「そう名残はあるね、ぬかりは無いさ、うさぎ鍋用のネットとか、」

純、ふと

「侵入防止兼捕獲ネット、そう言えば喬爺、元お堀の隠し沼何故か残してたよね、まあ唯一の水源なら、野生動物寄っては来るかな、」

嘉織、徐にシートベルトの手を伸ばし

「あるなら結構、柵のネット外して来る、」

純、遮る様に

「ああ、嘉織ちゃん、柵のネットはもう撤去してるよ、県外のお客さん増えて、うさぎ鍋だって振る舞ったら、ぴたと箸が止まっちゃうから、もう捕獲してないよ、」

佐治、ただ頷き

「そうです、そうです、憩いの階上幸或旅館で猟師料理を出されてはびっくりしますよ、」

嘉織、ただがっくりと

「そういやだよ、それさ、関東だと碌に肉も食べれないのに、そうなっちゃう、うさぎ鍋美味しいのにさ、」



間も無く、轟音のまま丘陵を漸く這い上がって来るハンマーキュービック、照明を隈無く照らし、標的発見

ラシーンマークツー、ブレーキランプ五回踏んでは誘い、無灯火のまま急発進

ハンマーキュービックただ追い縋るも、咄嗟のラシーンマークツーの急ブレーキ反転に応じきれず、勢いそのまま転がり、隠し沼の雪の被った荒いネットをそのままに抜き落ちる、鈍いショート音が響くも、3/4隠し沼に浸ったまま怯まずただ自転防御へと


嘉織、目を見張り

「えっつ、防水かよ、」

純、顔をしかめるも

「竜骨刺さって穴が空いているのに、何故動くのかな、」

佐治、ぽつりと

「火星のこれは、勿論、戦術上如何なる揚陸も想定しています、何せこの大きさですから、ある程度メンテナンスフリーでないと警邏兵器として酷使出来ませんからね、」

嘉織、吠えては

「佐治、ここまで網羅するなんて、レジェンドオブニューメキシコは何所と戦う気なんだよ、」

佐治、二つ返事も

「もちろん、全米の敵全てです、」

嘉織、尚も

「よくも言うよ、言っておくけど、中国相手の世界大戦はまっぴら御免だ、ユーロには多大な借りがあるから、全米最高議会が形振り構わず火蓋を切ったら、直ちに縁を切るからな、良いか、日本国も戦場にするなよ、」

佐治、淡々と

「嘉織さん、ご心配無く、その前に麦秋の懐柔に時間を掛ける事でしょう、きっと猶予は有りますよ、」


ただ隠し沼でもがくハンマーキュービック、自転激しく沼の水を激しく搔き上げるも、這い出る事ままならず、何故か激しくもがくのみ


一定の距離を保ちラシーンマークツーから見張る、嘉織

「意外と長いな、沼の底の何かに絡んでるのかな、そりゃあ清掃してなきゃ藻も絡むか、」

純、ふと

「嘉織ちゃん、そこは違うよ、被せてる鋼ワイヤー仕込みのネットもそうだけど、底に楔蔦仕込んでたから、暴れる程に絡まって対人だったらまとめて皆溺れてるね、」

嘉織、冷や汗も

「そういう仕込みなのか、レジスタンス、容赦無しか、怖えよ、」


ただもがくハンマーキュービック、ぴたり止まると、高い唸りを上げて外装下層のシルバーフレームがビルドアップ、赤と銀の縞模様の第二形態へと変態、二倍相当の自転を繰り出し、必死にもがく


嘉織、目を見張り

「まずい、何か強そうになった、」

佐治、唸っては

「成る程、丸く転がるんだけでは、どうしても不利と見て自らアップデートしてますか、しかししぶとい、」

嘉織、顔をしかめるも

「だから、手を貸したのは全米だろ、ここまで自律出来るものかよ、」

佐治、うんざりも

「全米にこれだけのプログラムがあったら艦隊削減案も上がりましょう、まず問うべきは、レジェンドオブニューメキシコ、投資市場の情報を何処からか手に入れては裏の資金も潤沢とも聞き及びます、ただ金回りが良いからと言って、ここの火星に至る経緯は全く謎過ぎます、」

純、モニターを見ては、見る見る目を丸くし

「えっつ何で、再循環で充填してるよ、残弾36600発、増えてるよ、」

佐治、ただ唸り

「実に強い、中々倒せないものですね、それでも逃げるしか有りませんね、」

嘉織、はたと後部席に振り返り

「純、火星をここから出さないで、武器は任せたよ、」

純、こくりとモニターを見つめては 

「武器も何も防御兵器だしね、さてと、」


第二形態へと変態したハンマーキュービック、隠し沼の中でも飛び出した電磁機関銃を無差別に打っ放し脱出試みるも抜け出せず、煌々と照明を放ちながら轟音のソナー音がただ増す


嘉織、不意に目を擦っては

「これ、本当残光残るし、それよりうるさいよ、純さ、」ただ両耳を両手で押さえる

純、モニターと睨めっこしては

「ラシーンマークツーのアンチシールドは万事順調、それと、フィルター上げて40Hz周辺の爆音をカットするね、」モニターをスワイプしてはレベルメータを適時に下げる 


漸く静まる車内


嘉織、両手を耳から降ろし

「ふう、さて、火星放って逃げたいけど、来るんだろ、」

佐治、飛び交うパルスにただうんざりしては

「この無差別射撃ですからね、それは来るでしょう、ここまで強敵相手ですと、対戦データ回収も有りますから、しつこいですよ、はい、」

嘉織、怒りのままに

「ちょっと待てよ、対戦データって、佐治、やっぱり身贔屓するのかよ、お前等全員ぐるなのか、おい、」

佐治、はきと

「落ち着きましょう嘉織さん、いざ我が身に降り掛かろうとは思いませんでしたが、戦中の自立兵器は延々殺戮そのものです、対戦データ回収で自陣の被害を0にしませんと、戦時の早期解決は望めません、」

嘉織、佐治をきりと睨み

「佐治ふざけるな、念動力に対応されたら、倒せないって、好い加減にしろよ、」

佐治、はきと

「嘉織さん、それも今更ですよ、最初の念動力発動で火星の全センサー破壊したものの、今も尚健在です、しつこく対処されていたので、二の手を出せないのでは有りませんか、」

嘉織、はきと

「言うか、私が破壊しまくるとかどうとか、相手は機動兵器だ、丹念に兵装割って行かないと、皆が下敷きになる、私頼りより、このラシーンマークツーに搭載武器があるなら、まずそれを使い切っての話だ、」

佐治、吐息混じりに

「まあ、それも込み込みでの対戦データ回収になるのが、かなり癪に障りますね、」

嘉織、溜息も深く

「ふん、この戦術しか無いんだよ、対処された謎の生成素材を開発し装甲されたら、初見で潰せない、佐治、散々言ってるけど、この件絶対全米に報告上げるなよ、」

佐治、大いに頷き

「勿論、誰にも言えません、この世の最終兵器に対処出来るのは、階上嘉織さんただ一人ですよ、」

嘉織、くしゃりと

「そこまで大層じゃないって、」ただパルスの飛び交う正面見据えては「全く、容赦なく打っ放して、持ってる武器、あと4つ使い切る勢いか、」

純、はたと手が止まり

「この無差別射撃状況なら、リバーサルパルス放出だね、反転して通電させるね、」

嘉織、凛と

「全弾射出、」

純、火星の位置をスキャンしたモニターを見つめ

「リバーサルパルス、四発、包囲射出、」モニターをタップ


ラシーンマークツー後方上部万能武器格納部から勢い良くサーキット付きパイル四機が正確無比に射出されては、ハンマーキュービックを囲むように展開四散固い地面に鋭利にも突き刺さり、磁場を忽ち形成

ハンマーキュービック、尚も電磁機関銃乱れ撃つも、立ち所に放った瞬間に全部のパルスが反転し、銃身先で弾け飛んでは火花が散りただ熾烈を極め、ハンマーキュービックにパルスに纏わり付いて行く

ハンマーキュービックの自律回路、射撃不良と判断したか、発砲が止まり沈黙しては、ソナー音の間隔が狭まる


嘉織、大きくシートにもたれ

「自身の火器で、漸く致命傷か、」

純、ただ神妙に

「そうだね、循環再出力もされず低下してるけど、まだ推力は65%はあるよ、」

嘉織、不意に

「まだその推力か、本当長そうだな、」

佐治、凛と

「ここは、先を急ぎましょう、次の対応を考えませんと、」

嘉織、項垂れては

「ここまで的確に追って来るとは、自らジャミングしてるのにSGPSは使えるのかよ、」

佐治、はきと

「そこは違いますね、自分だけランダムなジャミングを搔い潜る事は不可能です、そこは猟犬の基本、足跡を見てですよ、とんでもない画像認識機能です、」

嘉織、こくりと

「火星の攻撃にしか目に行かないのが盲点か、恐れるべきはそのプログラミングか、」

佐治、はたと

「そのプログラミング、レジェンドオブニューメキシコはややそこで後後塵を拝し、過去の兵器のリバイバルしか生産していないのですが、このファナティック加減、余程いかれた連中を招き入れた様ですね、」

嘉織、歯噛みしては

「全く、全米も容認とは、本当お粗末だな、」

佐治、はきと

「帰還したら、入念な探りは入れましょう、」

純、モニターのボタンをタッチ

「リバーサルパルス、装備のバッテリー見る限り二時間は放っても大丈夫みたいだから、離れても大丈夫だよ、」

嘉織、確と

「結局ここも時間稼ぎか、次はどこ行こうか、」ギアレバーを引きながらワンクラッチダブルクラッチでアクセル踏んでは後にする



射撃を止めるハンマーキュービック、センサー画像を索敵し標的不在と見るや、照明が忽ち止む、しかしソナー音は尚も繰り出し細かく刻まれ激しい逆のこぎり波音へ

いよいよハンマーキュービック、自身浸った隠し沼から凄まじい接近戦用電磁ショックブーストを放出、一際火花が飛び散っては、堪らず囲んだサーキット付きパイルが火花を散し大ショート、そのまま隠し沼の鋼ワイヤー仕込みのネットと楔蔦も千切れ飛び、ハンマーキュービックその全身より咆哮の様な重厚なソナー音を響かす中、激しい自転を再開、ここで容易くも隠し沼より絡まった藻と共に這い上がる

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