第27話 2087年12月21日 青森県青森市八戸区階上村 林道
暫定国道45号線を逸れ、雪の混ざった林道に分け入るラシーンマークツーは快走そのもの
赤外線バイザーを掛けた純、パワーウインドウのボタンを押し下げ、両手を差し出し車窓で肘を固定しては電磁銃S&WM49エレクトロ連射
次々射的が射抜かれては、丸太で組み合わされたトラップの箍が外れ、次々上空より丸太が落ちては、只管行ったり来たりを繰り返し、後続のハンマーキュービックに衝突し、ただよろけながらも、12連打の打擲音が響き、軌道修正しながらも横道から漸く林道に戻って来るハンマーキュービック
嘉織、ただうんざりと
「ああもう、ここはセオリー通り、ここは車両しか想定してないか、連打でも本当にごついな、」
嘉織、パワーウインドウのボタンを上げてはS&WM49エレクトロをダッフルコートのポケットに押し込み
「嘉織ちゃん、トラップ少し改良してるから、この林道進んで、」掛けた赤外線バイザーを胸元に押し込める
佐治、目を丸くしながら
「嘉織さん、純ちゃん、ますますエキサイトしますよ、胸が弾みますね、」
嘉織、怒りも露わに
「黙ってろ、佐治、」肘でエルボー
佐治、右腕を撫でながらも
「でも、純ちゃん、マイクもちゃんと持てないのに見事な射撃なものです、」
嘉織、ただ満足顔も
「見て言うか佐治、純の銃の腕前は、私と同様だよ、銃を持った以上ハンディは無いからな、」
転がり追い縋るハンマーキュービックから、遂に無尽蔵の赤外線ポインターが照射される
嘉織、バックミラー越しに
「いよいよか、赤外線が残像に残るな、頭にきた、赤外線センサー吹っ飛ばしてやる、HAL応答、プリセットモード運転、展開、」了承通知音が鳴っては、ドライブアシスタントHALが対応し、透かさず運転席のハンドルが畳まれプリセットモード運転へ、嘉織、シートベルトを解除しては、透かさず窓から半身を乗り出す
佐治、はたと
「嘉織さん、お待ちなさい、ドライブアシスタントに任せては危険です、走行読まれますよ、」
嘉織、後方に身を乗り出しながらも
「良いって、プリセットのパラメーターはいじってる、きちんと回避は出来る、びびるな佐治、」
嘉織の右手のリングが光ると、目標の赤外線先を漏らさじと、瞬時にハンマーキュービックの索敵センサーが次々吹き飛び赤外線が止むも、透かさずハンマーキュービックからソナー音の轟音が耳を劈く
嘉織、堪らず耳を押さえては、体を引っ込め、急いでパワーウインドウを下げる
「くお、ちょっと待て、指向性スピーカーよりぶっといぞ、本当にこんな兵器あるのかよ、」
佐治、こくりと
「ああ、かなり改造しましたね、さすがレジェンドオブニューメキシコメイド、吾妻組長さんかなり袖の下渡したようです、」
純、ふと
「一通りの武器なら、やはりABC兵器もあるのかな、」
佐治、後部席に振り返っては
「純ちゃん、それは有り得ません、ニューメキシコ州はかなりの免責あるものの、全米連邦の一部です、ローマの条項を疎かにしませんよ、」
嘉織、舌打ちしては
「ふん、この人でなし兵器が、それをいつ約束した、ボン、ドカン、ボワンのキノコ雲じゃないのかよ、くそ、区民巻き込みたくないよ、」
佐治、ただ宥めては
「嘉織さん、開発途中の兵器で、自ら再採用拒む様な真似するとお思いですか、」
嘉織、はきと
「知るか、このやる気満々、全く容赦無いのかよ、レジェンドオブニューメキシコメイド、最悪だ、佐治、絶対取り締まれよ、」
佐治、凛と
「嘉織さん、残念ですが、全米もレジェンドデイに向けて、幾つかハンドメイド納品されていますから、軍属とは適度な距離を置かないといけないのですよ、分かりますね、相手が最強程、兵器として有能なのですよ、」
嘉織、佐治の肩にグーパンチしては
「そのテストケースを兼ねてのこれか、たく、素敵だよ全米はさ、」
佐治、ただうんざりで
「嘉織さん、全米に上家衆として派遣された際は。それはもう大歓迎しますよ、」
嘉織、両腕をただ組んでは憮然と
「それ、もう、囁いてるんだろ、」
佐治、思いを馳せては
「ええ、ただ最高議会がですね、堂上米上夫妻より上のネゴシエーターはいないだろうとの判断です、しかし、私達全米海軍の総意としては、いざの内乱にどう対応するかで、今も嘉織さんを推していますがね、」
嘉織、ただ首を振り
「ああ、それもこれも耳が痛い、そう、この爆音、これ集中出来ないよ、」
純、運転席に身を乗り出し、中央コンソールのカバーを開く
「佳織ちゃん、よく聞いて、この轟音、これでもオートフィルターでカットしてる様だけど、防音のプリセット触るね、」
嘉織、ほくほくと
「純、さすが目敏い、調整頼むよ、」
純、中央コンソールのタッチパネルを次々呼び出してはユーザーモードに入り
「HALによる微調整もここまでかな、さて、視認性の高いグラフィックイコライザーを選択して、32バーから128バーに変更しての、40Hzをごっそりカットかな、」タッチバーを軽やかにプルダウン
ラシーンマークツー車内は一気に轟音が和らぐ
嘉織、思わず純とハイタッチ
「さすが純、幸或ホールのPA歴伊達じゃないよ、」
佐治、嬉々と
「とは言え、殺戮兵器をのさばらせません、仕方無い電話しましょう、と待った、」手にした軍用携帯に目を見張り「このバグ、ジャミング付きとは、さすが戦中兵器、くー、」
嘉織、凛と
「佐治、旅館への応援依頼は無しだ、SG550エレクトロ持って来たんだろ、適時に応戦しろ、HAL応答、マニュアルモード運転、ハンドル頂戴、」了承通知音が鳴っては、再び運転席にハンドルが持ち上がる
佐治、SG550エレクトロを展開してはパワーウインドウを下げ、後手に逸らしながら狙いを定める
「撃って良いのですか、次の攻撃が来ますよ、」
嘉織、声を荒げ
「良いから撃て、武器持ってないと思われたら畳まれる、」
佐治、トリガーを絞っては
「良いでしょう、撃ちましょう、」
ハンマーキュービックの警戒センサーが佐治の銃器に反応、みるみり展開へ、前面砲塔が転がりながらパルス機関銃発射
嘉織、凛と
「これで銃撃戦に反応か、上等だ、ふざけるな、」ハンドルを右に切っては人のいない灰屋街に潜り込む
佐治、敢えてトリガーから手を降ろしては体を車体に戻し、パワーウインドウを上げる
「いやー、まさかの瞬時の電磁兵器に換装、やるものですね、」
嘉織、はきと
「佐治、終ったら、ハンドメイドの明細見せやがれ、どこでそんな開発資金を捻出出来る、」
佐治、くすりと
「レジェンドオブニューメキシコですが、兵器開発の裏で、巨大なアルコール貯蔵所を持ってますからね、ニューメキシコホッパー飲んだ事有りませんか、」
嘉織、神妙に
「あれか、あんなホップもどきのビール、二度と飲むか、」
佐治、凛と
「ご心配無く、ホップもどきのアルコール化学合成ビール、全米国内では安価ビールで通って大手シェアに食い込んでいるも、輸出となると関税上乗せで海外では見向きもされません、そんな全米国内で甘んじきる企業、きっと荒は出る筈です、」
純、中央コンソールを指差しては
「嘉織ちゃん、アラートイジケーター見て、」
嘉織、中央コンソールをはたと
「案の定か、電磁機関銃の連射で、アンチシールドの消耗がどうやら激しい、ハイブリットのバッテリー持つのかよ、どんだけ打っ放すんだよ、」
佐治、思いも深く
「ハンマーキュービック、対人対戦兵器の頂点、全米最高議会も真っ青ですからね、しかもあの火星の外装のマーキングは置いといて、かなり改装してますか、いや電磁機関銃射撃もとは恐ろしい、」
嘉織、ただうんざりと
「ラシーンマークツー、投擲兵器装備してないのかよ、」
ナビゲーターのHALが囁く
「“ジェネレーションを起動します”」
嘉織、首を傾げては
「何だそれ、まさかあれとか、」
純、嬉々と
「ジェネレーションは、ジェネレーションでしょう、ほっつ、動力源確保出来るね、」
嘉織の運転席前面コンソールに瞬く間に規約展開
「くっつ、死にそうなのに、読んでる暇あるか、」
佐治、ただ唸り
「むむ、まさか民間のビークル車にジェネレーションとは、ここまで小型化出来るのですね、日産グローバルは嘉織さんに全幅の信頼ですか、」
嘉織、神妙にも
「そこ、全幅の信頼は天上さん、クラッシャーに新タイプのジェネレーション貸与する筈ないだろう、もう、読んでる暇無い、佐治、知ってるなら搔い摘んで教えろ、」
佐治、はきと
「それは規約を読んで、承諾ボタンにタッチしてください、ここきっちりです、はい、」
嘉織、うんざり顔も
「もう、助かるなら何でもするよ、」読まずに一気にスクロールしては承諾ボタンにタッチ
「“指紋認証登録しました”」
追加の注意事項が延々スクロールする中央コンソール
佐治、感嘆しては
「ここでまさかの新エンジン:ジェネレーションとはですよね、高濃度のブルーストーンをジェネレーション炉で循環させては、永続的な機関に昇華、市販の大型リミテッド機及び官製の軍事転用機までもが搭載の為、まとめて各国の軍事機密です、いや正直な所ブラックボックスです、くれぐれもボンネット開けてからくりビスは抜かないで下さいね、執行猶予無しの即懲役刑が適用されます、ここまでで失礼、」
嘉織、歯噛みしては
「駄目だ、何言ってるか、さっぱり分かんねえ、くそ、箸木に一から聞き倒してやる、」
純の目の前、運転席助手席のコンソール、後部席ヘッドレストモニターが青白い照明が灯りゆっくり点滅する
「なんだろう」後部席ヘッドレスト画面をタッチしては【ガンコントロール スタンバイ】が表示される
「“ナビゲイターの音声認識を行います お名前を仰って下さい”」
「えっつ、階上純です」
「“登録しました”」
運転席シート後方が見る見る展開し、折り畳まれたモニター5つが現れる
純、感心しては
「ほお、嘉織ちゃん、私の後部席にモニター展開したよ、」
嘉織、困惑するも
「全く、なんて車だよ、ここまで求めてないぞ、」
佐治、思いも深く
「いやいや、実に興味深いです、ラシーンマークツー、」
純、自身のモニターのゲージ眺めては
「ふむ、敵マシーンの火星、以降ハンマーキュービックタイプとして親認識、推力70%維持、振り切るのは難しそうだね、」
嘉織、ふと
「もう、分析してるのかよ、HAL、」
「“イエス、マスター”」
佐治、咄嗟も
「まだ本領発揮していません内に、ここは逃げ切りましょう、」
嘉織、もどかしくも
「逃げ切るって、あれだけ打っ放しって、まだ70%だろ、そもそも維持ってなんだよ、底なしかよ、原子力かよ、逃げ切れるか、」
佐治、ただ宥めては
「原子力なんて滅相も無い、軍需産業と言えど、続々廃炉送りの危険なプルトニウムは渡せません、あの火星もハイブリッドエンジンの塊ですよ、どう、こちらはジェネレーションだからこそ逃げ切れます、消耗を待ちましょう、」
純、モニターを次々タッチしては展開し
「凄いね、電磁機関銃の推定残弾25200発、逃げ切れるかな、」
嘉織、怒りも露わに
「25200発って、ラシーンマークツーのアンチシールドが焼け付く、たく、本当に武器は無いのかよ!」
「“殺傷武器は禁止されていますので、幾つか表示します”」
嘉織、声を張っては
「HAL、全部出せ、」
運転席助手席のコンソール、左後部席ヘッドレストモニター、そして純の正面モニターに、忽ち五個のボタンが表示される
嘉織、たじたじと
「えっつ、まじか、これいけるのか、」
純、電子マニュアルのボタンで呼び出し丹念にスワイプ
「うんうん、確かに防御兵器だね、」
佐治、五個のボタンを見て唸っては
「徹頭徹尾に防御兵器、これはこれは、大統領のエグゼクティブリンカーンより凄いです、イエーイ、」ただガッツポーズ
嘉織、思わず目を細めるも
「全く、このノリ、さっぱり分からん、佐治、こっちもあっちも誰が私を試してるんだよ、言え、」
佐治、はたと我に返り
「嘉織さん、これは日本国の治安悪さ故に、あなたが敢然と立ち向かった結果です、誰それが試そうなんて滅相も有りません、最後迄ぶれずに戦い抜きましょう、大いにお付き合いします、」
嘉織、憮然とも
「きれいにまとめて、何かだけどさ、何処か都合良くないか、」
純、はきと
「嘉織ちゃん、これも主の思し召しだよ、」胸元から十字架を取り出し丹念に十字を切る
佐治、思いのままに
「主よ、皆が無事に悪を退けられます様に、」丹念に十字を切る
嘉織、ハンドル片手に
「そう、それ、分かってるって、」右手で略しては十字を切る
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