第26話 2087年12月21日 青森県青森市八戸区階上村 暫定国道45号線
階上嘉織の配慮の上の運転で、暫し暫定国道を進むラシーンマークツー一同、旧ゴルフ場よりハンマーキュービックが豪快に2車線使い電磁パルス射撃を時折混ぜながら追跡を掛ける
嘉織、ただバックミラー越しに球体として機影トレースされた、光源を放つ鉄の塊にあんぐりと
「まんま火星か、佐治、ビビるより先に、後ろの、あのゴツいのなんだよ、よくも付いて来るな、」
佐治、溜息も深く
「ハンマーキュービックの派生型とは、従来機より一回り小さく、そのまま火星のオブジェとしか見ていないのが抜かりました、この機動、確かに戦中の紹介記事での警邏マシーンです、USAアーミーのカタログで見た限りですが、正しく、改造されたハンマーキュービックです、ゴツくて当たり前です、」
純、ただ後ろを振り返ったまま
「結構、凄いよね、低陸橋乗り越え拉げて来てるよ、構造上戦車除けなのに、効力まるで無いね、」
嘉織、うんざりと
「全く、この早さで転がったまま、ぶつかったらどうなるんだよ、」
佐治、確と
「勿論、ミンチですよ、骨さえ形に残るか、見事な非人道兵器です、」
嘉織、時折バックミラーに視線を送り
「これ、戦中に使ったのかよ、」
佐治、思いも深く
「はい、東南アジア戦線でUSAが使いましたが、戦車の方が帰投率高いので、運用即中止です、何せ開発途中の戦中兵器ですからね、設定次第で敵味方問わず生体反応あると無限に動きますから、自陣の殺戮兵器と公に言えないですし、今日迄使える訳ないです、はい、」
純、ぽつりと
「ごもっともだね、強そう、」
嘉織、怒りも露わに
「ちょっと待て、運用即中止なのに、何で追い掛けまわして来るんだよ、全米何考えてやがる、それって、皆殺しかよ、って、何で全米が私に絡むんだよ、」
佐治、宥める様に
「いやいや嘉織さん、今回は、全米というより、ニューメキシコ州の軍需産業ですね、過去の遺産をここでテスト運用しますか、しかも悪どい、まあ、ハンマーキュービックも本来は警邏の為なのですが、構造が簡素故に改造し易いのですよ、ただメンテナンスドックが大掛かりですから、前線ではかなり目立ちますね、ここも運用上の大問題が有ります、」
嘉織、はたと
「待てよ待てよ、あれを改造って、こんな派生兵器あるのかよ、何を積む気なんだよ、」
佐治、凛と
「ご懸念は核兵器搭載でしょうが、基本陸戦兵器です、うっかり鹵獲されてはデン・ハーグ統合軍事裁判所の証言台に立つので、罷り間違ってもそれはありません、運用で答えられる限りはここまでです、尚この先は、全米大陸横断ファイルになりますのでご勘弁下さい、」
嘉織、怒りも露わに
「全米大陸横断ファイルって、終戦に備えて、USA何考えてやがったんだよ、おい、」
佐治、にべもなく
「ええ、ここは前提として言いましょう、うっかり全米大陸乗り込んで来た中国に、勝つためなら何でもしますよ、日本の歴史上の惨状を鑑みたら、当然ですよね、」
嘉織、左手で髪をくしゃりと
「たくさ、戦争って、何でも消耗するよな、なあ、」
純、振り返ったまま、
「嘉織ちゃん、そのハンマーキュービック、車間距離保ってるよ、」
嘉織、バックミラーの火星をタップしては、車間距離100mが弾き出される
「保ってるって、箸木、ステルス塗料を存分に吹き付けた筈だって、そもそも何で認識してるんだよ、」
佐治、吐息混じりに
「ラシーンマークツー、この真っ赤な車体、嘉織さんの趣味ですよね、目立ちはしますか、」
嘉織、神妙に
「言っとくけどラシーンマークツーは調査がメイン、赤いビークル車に女性に乗っていたら、ごく当たり前だろう、」
佐治、尚も
「まあ、そうでしょうけど、いざこれですからね、」
嘉織、憤懣遣る方無く
「そこは赤とか白とか黒とかでも同じだろ、どうせ迷彩塗装にしたところでも認識するんだろ、ふん、安価な追跡ミサイルでさえ画像認識装置持ってるし、どんなにカモフラージュしても追って来るか、」
佐治、はきと
「流石は警邏マシーン、この様子では行く先を高速演算中ですね、ぐぐ、」
嘉織、目を見張り
「演算って、計数機込みかよ、それ、ただの破砕兵器に積むのかよ、」
佐治、にべもなく
「ええ、こんな火星が姿勢制御維持出来るのも計数器有りきです、その上で、あの徹夜工事とかですが、八戸に住み込んでいたので、それなりに3D地図を掻き集めた事でしょう、先々の八戸区の逃げ場は有りませんね、」
純、ふわりと
「計数器込みか、嘉織ちゃん、佐治さん、このパルスヒット音、どんどん正確に当たり出してるよ、照準補正してるんだね、」
嘉織、神妙に
「そりゃ込み込みだよな、もうこうなれば、狩り場に行く、ふん、こっちが一枚も二枚も上手なんだよ、」
純、凛と
「嘉織ちゃん、まずいよ、喬爺のトラップを次々に手の内見せちゃ、」
嘉織、確と
「これは一大事だって、かまっていられないよ、」
佐治、凛と
「嘉織さん、当分階上幸或旅館は帰れませんよ、皆巻き添えになります、」
嘉織、はきと
「分かってるって、とっておきの別ルートがちゃんとある、」
純、前のめりにも
「極道のブラフ見通せなかったね、ちょっとごついのが多過ぎで、真っ向から構え過ぎたね、」
嘉織、うんざりと
「全く、火星込みって、敵味方全部巻き添えか、飛び出してやや正解かな、」
佐治、ただ頷き
「危うく、火星によって、魂の拠り所階上幸或旅館が蹂躙される所でしたね、流石は嘉織さんです、」
嘉織、しかめっ面も
「全く照れるぜ、」アクセルを踏み込む
佐治、ただ真摯に
「嘉織さん、くれぐれも言っておきますがあの吾妻組長の目的は、嘉織さんです、あの怒り狂った性分なら、金に糸目を付けず、どうにか処分されますよ、このとっておきを嘗めない方が良いです、」
嘉織、切に
「だったら佐治、後ろの火星、ハンマーキュービックの弱点は何だよ、」
佐治、真摯にも
「対人兵器としては無敵、且つ絨毯爆撃にも対応し突破した事例が有りますので、ここは嘉織さん次第です、頑張りましょう、」ただ右拳を固める
嘉織、呆れ顔で
「たく、佐治は最後で日本人根性出るよな、全米海軍でそれ通じるのか、とは言え、中国の絨毯爆撃までもって、本当作ったものの運用はざる過ぎるな、」
佐治、不意に固まり
「いいえ、中国では有りません、暴走を制する為のUSAの絨毯爆撃ですが、とてつもなくタフなもので、応援部隊も入れた、B52編隊3セットで、ハンマーキュービック3基漸く沈黙です、今もアリゾナ州にくぼみがあるのはご愛嬌の向きでしたが、いざ現実となると厳しいものですね、」
「はあ、」ただ溜息の一同
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