第23話

「私たち、亡国の聖戦は今の秩序を望んでいるんです。はこの国の傭兵の約半分は暁の稲妻です。亡国の聖戦は全体の約四割ほどです。我々はどちらかといえば国外への派兵で成り立っています。国内シェアはかなり少ない。ただそれでいいと思っているんです。我々には我々の遣り方がある。しかし最近その秩序を壊そうとしている輩が出てきているんです」声の後半、ディエゴの声質が突如として変わったのが分かった。

「魔獣の奏者のことか」


「そうです。ここ最近、急激に力を付けてきている。現シェアも二割に迫ろうとしている。おそらくどちらかの勢力とくっつきどちらかを潰そうと考えるに違いない。だからもしそのような話があったら、断ってほしいのです。もう少し言えば、一時的にでも同盟というのも我々は考えている」

 

ミハイルはディエゴが嘘、偽りを言っているようには思えなかった。レノが言っていた夕刻の聖騎士団の下部組織が魔獣の奏者という話を聞いていたのを思い出した。しかしミハイル個人の意見ではどうとも言うことはできない。暁の稲妻にはミハイルを含めて幹部が三人いる。ミハイルとカルサス、そしてシェン・ヤンという頭の回る男。

 きっとそのことを承知の上でディエゴは言っているのだろう。

「少なくとも我々は今の状態を保ちたいと考えているとだけ伝えておきます」

 ディエゴはミハイルが考え込んでいるのを見てダメ押しのように言った。


「幹部の連中には伝えておく。別件というのはこれだけか」

「出来ればあなたの意見が聞きたいのですが、まあいいでしょう。念のため聞いておきたいのですが、あなたがこの村に来るまで一緒だった、軍人は何者ですか」


「昔の知り合いだ。十年ほど前のな。今はファリスの軍人をやっている。それがどうかしたか」

「いえ、多少気になったもので」

 ディエゴは少し考えているかのように腕を組んだ。そして「さて。私は王都に帰らなければならないので先に失礼させていただきます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る