第16話

年恰好だけはミハイルのほうが上なのに、行動だけはもう自分の姉か母親のようだった。

 

 ただ――天涯孤独だったミハイルはエルザのこのような行動は少なくとも嫌というほど嫌ではなかった。きっと長くても数ヶ月のかりそめの同居生活。あまり情を持つことはないようにしよう。一緒に暮らし始めた初日、エルザの寝顔を見てミハイルは思った。

 

 まだわずかに火傷と傷が痛む身体を慰めるかのようにゆっくりとベッドから起きた。まだこのミモラという秘湯しかとりえのない村に来てから三日しかたっていなかったが、一昨日より昨日、昨日より今日と身体のほうはどんどん癒えていっている。レノが太鼓判を押す理由が十分すぎるほど理解できた。

 

 着替えが終わりエルザのいるリビングへ行くといつものようにエルザはテーブルの前に座っていて立派過ぎるほどの朝食がテーブルの上に出来上がっていた。

 朝食なんてほとんど食べていなかったミハイルにとって初日はありがた迷惑だったが、エルザの作った朝食を食べ一気にとりこになった。さらに三日間同じ献立だったことがなかったのにも驚いた。

 

 ミハイルは椅子に座りフォークを持ち近くの料理に手をつけた。エルザは黙ったまま自分の作った料理に手をつけないでミハイルの食べる様子を凝視している。エルザの表情は硬いままだ。

「うま!」

 ミハイルの心の奥底からにじみ出たような感想を聞くとたちまちエルザは破顔一笑し「よかった~。いっぱい作ったからたくさん食べてね」と言い自分の作った料理に手をつけた。

 

 朝食を食べ終え秘湯へ行く準備をしているところに、突然の来客だった。

「あの……ちょっと待ってて、ください」

 

 玄関で来客の対応をしていたエルザの聞いたことのないような戸惑いを含んだ声にミハイルは身を硬くした。足取りの重く近づいてくるエルザにミハイルは問いかけようとしたときだった。

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