第8話

 橋の上には何人もの人が橋を渡っているのが分かった。レノが戻ってきたのはちょうど一時間ほどたってからだった。両手には大きな手提げ袋を持っている。

「今からこれに着替えてもらう」

「何だこれは」

 ミハイルはレノから受け取り袋の中身を取り出しもう一度言った。

「何なんだこれは」

「見ての通りだ。このままの今の格好でお前を連れて行くことはできない。そこで俺とかりそめの夫婦なってもらう。そのための服だ」

「着ないとダメか……?」

 袋から取り出した、薄いさくら色のワンピースを広げながらミハイルは言った。

「カルーダを脱出したければな」

「……これを着て本当に大丈夫なんだな?」

「少なくとも着ないと無理だろうな」

「ちくしょう」

 ミハイルは眠っている女児を降ろし袋の中身を出しきり大きくため息をついた。

「まさかこんなところで女装することになるなんて思ってもなかった」

「ぶつぶつ言ってないでさっさと着替えろ。時間がないんじゃないか」

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