第5話
雀の鳴き声で目を覚まし、緩慢とした動きで立ち上がろうとした。突然全身に冷や水を浴びたかのような衝撃と痛烈な痛みが走る。戦いが終わりようやく自分の身体もいたるところを傷めていることに今更ながらに気づいた。戦っている最中は興奮して痛みを感じていなかったのだろう。
いつの間にか雨は止み雲から太陽が出ていた。
依頼人と会えなかった事をカルサス・テキーラに報告しないといけない。加えてこの数時間で起こった事を伝えるべきか否かを考えなければならなかった。仮に言ったとしても信じてくれないのは目に見えていた。
気が重い……。
身体に鞭を打ちながらゆっくり立ち上がり、アジェンダ―遺跡の出入り口へと向かった。
今後の事を考えているうちにいつの間にかアジェンダ―遺跡の出口まで来ていた。午前中に真上にも昇りきっていなかった太陽は少し西に傾きかけていた。数時間前ここに入る前はこんなことが起こるなんて思ってもいなかった。ただのお使い程度の仕事。そんな風に考えていた。
アジェンダー遺跡を過ぎ数分歩いていると、街道の真ん中に何か大きいものが落ちている落ちているように見えた。
きっと行商人が魔物か山賊かに襲われて、荷物を落としたものかなにかだろう。売れるものだったら持って帰るとしよう。
そう思いながら近づいたミハイルは思わず声を上げた。荷物だと思っていたものはうつ伏せで倒れている人間の子供だった。ミハイルはうつ伏せで倒れている子供を仰向けに向けると「あっ!」と思わず声を上げた。長い髪の毛を真っ赤なリボンで一つにまとめている――アジェンダ―遺跡で焼き菓子を上げた女児だった。
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