第11話 視聴覚室
「おっ、終わったか」
教師はそう呟くと、教材用DVDをプレーヤーから取り出し照明をつけた。たちまち視聴覚室は明るくなった。
静かにしていた生徒たちは思い思いの言葉を口に出し始め、視聴覚室は先程とは打って変わって騒々しくなった。
「おーい、喋ってもいいけどもう少し静かにしろ。周りはまだ授業中だぞ」
教師の一言が効いたのか、生徒たちは喋るのを止めた。
「先生、もう帰ってもいいですか?」生徒の一人から質問が飛んだ。
何人かの生徒は、本日最後の授業が終わったと思い、早めに帰れるんじゃないかとそわそわしている。
「うーん、俺的には帰してもいいんだけど、他が授業している横をぞろぞろ歩かすのも迷惑になるしな、残り五分になるまで待ってくれ」
「ちぇっ」何人かの生徒たちは不満そうな声をあげた。
「じゃあ、先生。それまで何をすればいいんですか?」先程とは違う生徒から質問が飛ぶ。
「そうだなぁ、それを先生も考えていたんだけどなぁ」
教師は腕時計を見つめながら、困ったように返答した。
他の教材用のDVDは全部見たやつだしな。残りの時間、何をさせようか。
教師がそんな事を考えている間に、一番手前の女生徒たちから声があがる。
「先生、何か面白い話して」「先生の恋バナでもいいよ」
比較的年の近い異性の教師に対し、恋愛に興味を持つ青春真っ盛りの女生徒たちは、臆す事なく話しかける。
「おいおい、急にそんな無茶ブリやめろよ」
「だって、別にやる事ないし、先生あんまり自分の話しないし、たまにはいいじゃん」
「そうだ」「そうよ」と周りの生徒たちも同調してくる。
「先生、彼女は?」「ファーストキスは?」色んな所から質問が飛ぶようになった。
「おいおい、勘弁してくれ」
教師は照れくさそうに拒んだ。だが、その場は収まりそうにない。
「分かった、分かったから、先生の話だけは勘弁してくれ。そのかわり何か面白い話するから」
「えー」憧れの教師から恋愛の話が聞けると期待していた女生徒たちは、残念そうな声をあげた。
「まあ、そう言うなって、先生だって恥ずかしいんだから。また今度な、なっ」
「絶対ですよ」女生徒たちは渋々といった具合に、教師の言葉を受け入れた。
「で、何の話するんですか?」
「そうだなぁ」教師は自分への話題を逸らす為に何か話をすると言ったが、まだ話す内容は決めていなかった。
「うーん」しばらく悩んでいた教師は、ようやく話す内容を決めたのか、生徒たちに向かって話し始めた。
「じゃあ、せっかく視聴覚室にいるんだし、先生が知っている視聴覚室にまつわる話をしよう。これはある高校で起こった話だが……」
彼女がいなくなってからもう三ヶ月か。警察や彼女の家族はいまだに行方を捜している。もちろん俺の所にも何回も事情を聞きにきていた。なぜなら最後に彼女の姿を見たのは俺だという事になっているからだ。根掘り葉掘り色々聞かれたっけ。彼女と会っていた時間、別れた時間。彼女が身に着けていた服装なんかも事細かく聞かれた。俺はその度に何度も同じ内容を話した。まあ、実際に俺が最後に会っていたというのは事実だったし、あの日の出来事は全て本当の事を話したつもりだ。
ある事を除いては。
俺と彼女は年が同じで家も隣同士という事もあり、小さい頃から仲が良かった。いわゆる幼馴染ってやつだ。彼女に恋愛感情を持つようになったのは高校生になってからだと思う。それまでは何となくいいなというだけだった。多分向こうも同じだろう。そんな俺たちは事あるごとに二人で行動していた。別に恋人関係になった訳じゃないが、傍から見たらそう見えていたのかもしれない。お互い好きだの付き合ってだの言った事もなく、ただ二人で過ごす時間が楽しくて、いつも一緒にいるだけだった。
あの日もそんな日常の一部だと思っていたが違っていた。
その日はいつものように仲のいい先生から鍵を借りると、二人きりで視聴覚室にいた。同じ大学に二人揃って進学する為の、受験勉強をする為だ。いつもなら、さあ、勉強を始めるかといって参考書を開く所だがその日は特別だった。お互い誕生日プレゼントを渡し合うと、照れくさそうに笑いあった。同じ店で買った二つに分かれたネックレス。高校生の時分では高い買い物だったが、彼女の笑顔で気づいたら安い買い物になっていた。
早速、ネックレスをつけた俺たちは勉強を始めた。嬉しさもあってかあまり身に入らなかった覚えがある。しばらくすると雨音が聞こえ始め、外はすぐに土砂降りなった。寒がりだった彼女はエアコンの温度を上げて言い出した。俺は二度ほど温度を下げると何食わぬ顔で席に戻った。すぐに異変に気付いた彼女は「ちょっと」と言いながら、持っていたシャーペンで俺の頭を小突く。ばれたかという顔をする俺に、当たり前でしょという顔の彼女。「もう、さっさと上げてきなさい」「へい、へい」とスイッチの方へ向かう俺に、あきれながらも笑っていた彼女。それが彼女を見た最後だった。
何故だか分からないが彼女を困らせたかった俺は、エアコンのスイッチの前に立つと、思いっきり温度を下げた。これ以上は下がらないという温度になった時に、後ろ方でカタッと何かが机に当たる音がした。しばらく彼女の反応を待っていたが、何の反応も無い。もしかして、怒らせたかも? そう思った俺は「ごめん」と言いながら彼女の方へ振り返った。だが、そこに彼女の姿はなかった。
一瞬びっくりした俺はすぐに、さてはどこかに隠れたのかもと彼女を探し始めた。だが、この空間に隠れる場所はさほど無く、くまなく見まわったがどこにも彼女の姿は見つけられなかった。
もしかして俺が気づかないうちに外に出たかも? そんなありえない事を考えながら彼女の携帯に電話をかけた。だが、彼女の鞄からバイブレーションの振動が聞こえるだけだった。
そんな、一体どこへ行ったのか? 携帯も鞄も置いてある。参考書やノートも開いたままだ。こんな状況で帰るはずもないし。そう思いながら彼女が座っていた席に近づく。まだ彼女のぬくもりが残っている気がした。そこであるものを見つけた。俺が上げたネックレスだった。カタッとした音の正体もこいつだろう。これで分かった。彼女は外に出たのではなく、この場で消えたんだと。寒くなった室内で一人残された俺はそう感じていた。
その日の夜に彼女の母親から彼女が帰って来ないと告げられた。俺はその日あった事を伝えるとすぐに警察沙汰になった。俺はありのままを話した。だが消えたという事は言わず、トイレに行ってそのままいなくなったと言うしかなかった。だってそうだろう。エアコンのスイッチをいじってて振り返ったら彼女がいなくなってたって、一体誰がこんな話信じるっていうんだ。俺が第三者の立場でもそんな事ありえないと言うに決まっている。
そんな事もあって俺はあれ以来視聴覚室に近づいていない。視聴覚室で授業があると、気分が悪くなった振りして毎回保険室に行っていた。だがそろそろ内申の評価にも響くし、いつまでも現実から逃げちゃいけない。彼女がいなくなった事にいいかげん向き合わなければ。
久しぶりに入った視聴覚室はあの日と全く変わっていなかった。あの日と違うのはクラスメートがいる事と、彼女がいない事。
別に受けたくもない授業が始まった。授業といっても教材用のビデオを見るだけだが。
前の大きなモニターには何かしらの映像が流れている。だが、俺の目にそんな物は映るはずもなく、俺はひたすら彼女の事だけを考えていた。
何でいなくなった? どうして彼女なんだ? 視聴覚室なんかで勉強したからか? でも何回も使用していたし、普段通り勉強していただけだし、いつもと同じ……いや、違う。俺がエアコンの温度をいじったからだ。それぐらいしか納得のいく答えが見つからない。ごめんよ、多分俺のせいだ。俺が悪いんだ。何であんな事したんだろう。大人しく彼女の言う通りにしていればこんな事にならなかったんじゃないか? うう……会いたいよ。帰ってきてくれ。
俺は彼女のいなくなったこの場所で、彼女への思いの丈を心の中で叫んだ。
その時だった。声が聞こえた。「誰か、そこに誰かいるの?」
俺は耳を疑った。周りを見てもその声に反応している者はいない。もう一度聞こえた。「誰か、誰かいるの?」聞き覚えのある声。俺は心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、彼女の名を心の中で呼んだ。
「良かった。やっぱり誰かいたのね。声が聞こえたからつい呼びかけたけど正解だったわ。で、あなた誰? さっき誰かの名前を呼んだと思うのだけど、それがあなたの名前?」
彼女だ。これは彼女の声だ。俺はそう確信していた。
「俺だよ。分からないのか、君なんだろ?」
俺はその声の主にそう問いかけた。
「ごめんなさい。分からないわ」
嘘だろ。この声は絶対彼女の声だし、俺が間違うわけがない。俺はそんな事を思いながらも、声の主に自分の名を伝えた。もしかしたら何か反応があるかも? だが、返ってきた反応はそっけなかった。
「ふぅーん、そういう名前なんだ。私も自己紹介したいけど、自分の名前が思い出せないの。ごめんね。まあ、そういう事だから、とりあえずよろしくね」
「ちょっと待ってよ、本当に君じゃないのか? 俺だよ、俺」
俺は声の主に自分の生い立ちや、彼女の事を出来るだけ詳しく語った。
「ふぅーん、あたなの幼馴染の彼女が私の声に似ていて、ここでいなくなったから、もしかしたら私がその彼女かもって事ね」
声の主は俺の話聞いてそう理解していた。
「うーん、もしかしたらそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ごめんなさい。私、気づいたらここにいて、それ以外の事は何も分からないの」
そんな、せっかく彼女についての手がかりを掴めたと思ったのに。俺はこのチャンスを逃してなるものかと、声の主に色々な質問をぶつけた。だが、無情にもいつのまにか授業が終わっていて、ここから出なくてはならず、声の主との会話は途中で止めざるを得なかった。
「ごめん。色々聞きたかったけどもう時間みたいだ」
「こちらこそ、期待に添えずごめんね。でも今日は楽しかったわ、久々にお喋り出来て」
「それなら良かった。あのさ、また会話しに来てもいいかな?」
「もちろん。待ってるから、約束よ」
久しぶりに彼女と会話した気がして嬉しかった。
俺はそれ以来視聴覚室での授業が楽しみでならなかった。一度、仲の良かった先生に視聴覚室の鍵を借りに行ったが、あの事件があって以降生徒だけで使用させるのは問題だという事になり、実質視聴覚室に入れるのは学校の授業だけになっていた。
卒業まで残りわずか、二度目の別れが近づいていた。
「やっぱり、まだ何も思い出せそうにないかい?」
「ごめんなさい。何も……」
「そうか、まあ、それなら仕方ないか」
「うん」声の主は申し訳なさそうに呟く。暗い沈黙が俺たちを包む。
「何よ、暗くなっちゃたじゃない。何か話題変えてよ、最近あった面白い話してよ」
「何だよ、それ、ハハハハ」
こんな調子で声の主の記憶は一向に戻らないが、声の主のおかげで俺は、彼女がいた頃のように明るく笑えるようになっていた。
「実は最近同級生の子から告白されてさ」
「えっ、……そうなんだ。良かったじゃん」
声の主は一瞬驚いたような、戸惑ったような声を出したが、すぐにいつもの調子に戻っていた。
「で、どうしたの? どんな子? 可愛かった?」興味津々というようにぐいぐい質問してくる。
「まあ、普通に可愛らしい子だったよ。返事はまあ、断ったけど」
「何でよ、もったいない」
「そりゃあさぁ……」これ以上は何も言えず黙り込む。
「まだ彼女さんの事好きなの?」
「うん」
「ふぅーん、そうなんだ」声の主はまるで自分が好きだと言われているかのように、ちょっぴり嬉しそうにしながらも「でも、もうここも卒業するんだし、彼女さんの事は忘れろまでは言わないけど、君の次の人生の事も考えたら?」
声の主はそうアドバイスしてくれた。俺にはその声がなんだか少しだけ、悲しみがまじっているように聞こえた。
「うん。ありがとう。分かってはいるんだけどね」慣れたとは思っていたけど、彼女の事を考えると今でも少しだけ涙が出そうになる。
「なに? 泣いてるの?」「うるさいなぁ」
「アハハ、冗談よ。ごめんなさい」
季節は冬から春へと移り変わろうとしている。
気づけば俺は高校生活最後の日を迎えていた。
「来たよ」
「本当に来たんだ」
「最後にもう一度会いに来るって約束したからね」仲の良かった先生から無理を言って、特別に視聴覚室の鍵を借りていた。
「卒業おめでとう」
「ありがとう」卒業証書が入った筒を小脇に抱えながら、座り慣れたいつもの席に腰を落ち着ける。
「こんなに開いてるんだから、どの席でもいいのに」
「この席がいいんだよ。ここが」「変なの」
声の主は、普段は何もない白い世界に佇むようにように浮いているそうだが、俺と会話している間だけは、視聴覚室内の様子が分かるそうだ。
「とうとう卒業だね」「うん……」
「あっというまだね」「うん……」
今日で最後だからかと意識してか、思うように言葉が出てこない。
「なによ、らしくないじゃない。もしかして私に会えなくなるのが寂しいの?」
「…………」
「もう、調子くるうなぁ。いつもの元気はどうした?」
「……ごめん」
「しっかりしなよ。もう大学生になるんでしょ。子供から大人に変わる時期、いつまでもうじうじ引きずってないで前を見なさい。素敵な出会いが君を待っているんだから。彼女さんもきっと私と同じ気持ちのはずよ」
「そうかな?」「そうよ」
その言葉を彼女が言ってるんだと思うと、このままじゃ駄目だ思い始めた。多分、今の俺の姿を見たら彼女は悲しむだろう。辛くてもいい、苦しくてもいい、彼女に俺がもう大丈夫という所を見せなければ。
「うん。分かった」そう吹っ切れた俺は一息つくと、最後の心残りを消化する事にした。
「あのさぁ、……最後にお願いがあるんだけどいいかな?」
「何?」
「これから君を彼女だと思って、今まで言えなかった事を言おうと思うんだけど、ただ聞いてくれるだけでいいんで俺の思いを聞いてくれるかい?」
「もちろん」声の主はやさしく了承してくれた。
窓ガラスについた結露にあたたかな陽が光を与える。外にはまだ卒業生たちの残り香が草花の匂いとまざり、校内に残る在校生たちに余韻を伝えている。
二人だけの時間。特別な時間。ゆっくりと流れる時の間、俺は誰にも、彼女にも、多分自分自身にも言ったことのない彼女への気持ちを、目には見えない彼女に向けて語った。
十数年の思いが言葉では足りないかのように、大量の涙が頬をつたう。
ああ、やっぱり俺はこんなにも彼女を愛していたんだな。いなくなってから分かる大切な存在。もっと早く気づいていれば……
全てを出し切った俺は思い切り泣いていた。
じっと見守っていた声の主はようやく口を開く。
「男だろ、泣くなんてみっともないぞ」
その声も涙に濡れているのがすぐに分かった。
「ああ、もう、こんなはずじゃなかったのになぁ」声の主は泣くのを必死に抑えながら続けた。
「本当は言わないつもりだったけど駄目みたい。君の気持ちを聞いてたらさ涙が溢れてきて……あのね、実は私、記憶が戻っていたの。今まで黙っていてごめんね」
「えっ、じゃあ……」
「うん。私」
俺はその告白に耳を疑った。
「本当に、本当に君なんだね?」
「うん」
「良かった。やっぱり君だったんだ」
「うん。今まで心配かけてごめんね」
「どうして、黙っていたんだ? それにいつから、まさか最初から……」興奮する俺を彼女が鎮める。
「ちょっと、落ち着いてよ。いっぺんに言われても分からないから」
「ごめん、でも……」
「ちゃんと説明するから、いい?」「うん」
彼女の話はこうだった。俺と受験勉強をしたあの日。俺がエアコンの温度を限界まで下げた瞬間、ふと体が軽くなって、気づいたらどこか白い世界に飛ばされていた。その時は覚えている記憶は殆どなく、ただぼんやりと宙に浮かぶように浮いていたという。ある時どこかから声が聞こえたので呼びかけてみると俺と会話する事が出来て、それで俺と会話を続けているうちに、だんだんと記憶が蘇ってきたという。
「初めは私の事すぐに伝えようと思ったけど、君が受験で大事な時期だし、言ったらそれどころじゃなくなると思って言わなかったの。それから色々考えたんだけど、私はもうここから出られないと思うし、変に伝えて君が引きずるのを見たくなかったから、もうこのまま伝えないで見送ろうと思ったの。だけど……君があんなに私の事を思っていてくれたんだと思ったらさ、私も君の気持ちに応えなきゃって思ったから……うぅ、ごめんね。笑って送り出したかったのに、こんな形になってさ」
彼女はもう涙をこらえきれなくなっていた。
「いいんだ。君が……君が戻ってきてくれた、それだけで充分だ。こっちこそごめんよ。うぅ……」
それから俺たちは二人して泣きじゃくった。昔の小さかったあの頃のように。
「大学行っても元気でね。後、私の事は気にしないでいいから、自分のやりたい事をやりたいように突き進んでね」
「分かった。自分が決めた道を突き進むよ」
「うん。よろしい」
「あとさ、最後に一つだけ」
「何?」
「絶対、絶対また君に会いに来るから」
「うん。……待ってるから」
彼女の姿は見えないが、その顔は多分あきれたように笑っていた事だろう。
俺はある決意を胸に秘め、視聴覚室を後にした。
「……というのが先生が知っている話だ。どうだった?」
生徒たちは終わったーというように様々な感想を言い合っていた。
「その後どうなったんですか?」
「さあな、どうなったのかな?」
「何よ。先生も知らないんじゃん」
「アハハハ」
「先生がもしその男の子の立場だったらどうしますか?」
「そうだなぁ」
少しの沈黙の後、
「もし先生がその男の子の立場だったら教師を目指すかな」
「どうしてですか?」
「もしかしたらその高校に配属になって、また彼女に会えるかもしれないからさ」
「ヒュー」視聴覚室は盛り上がった。
「せんせーい」
後ろの席の方から声が飛ぶ。
「おう。もう帰ってもいいぞ。皆もお疲れ。また月曜な」
「はーい」その声を合図に生徒たちは身なりを整えぞろぞろと出口に向かった。
「先生、戸締りの事なんですけど」日直の女生徒が教師に伺う。
「おう。今日も俺がやっとくからもう帰っていいぞ」
「そうですか」
女生徒はもっと教師と喋りたそうにもじもじしていたが、
「何してるの? ほら行くよ」
後ろから友達にせかされ、「あの、じゃあ失礼します」とその場を後にした。
「おう。気をつけて帰れよ」
戸締りを始める教師を横目に女生徒はふと思い出す。
そういえば先生もネックレスつけていたけど、どんなのだろう? 今度見せてもらおうっと。
すっかり静かになった視聴覚室に一人残った教師は、戸締りを全て終えると一息つくように腰を下ろした。そこは教師用の席ではなく、生徒たちが座っていた席の一つだった。
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