『レンズ越しの君』
真っ暗な部屋で、男はパソコンの画面を見ている。そこには、見られているとも知らずに夕飯を作る女の姿があった。その一挙手一投足を見逃さないように、モニターにへばりつく。
作り終えたのか、女の鼻歌が止まった。次の行動を見張っていると、女がスタスタと歩き、カメラを仕掛けてある植木を覗き込んで、
「待っていろ。」
と言い、カメラの死角に移った。その声は震えるほど冷たく、明らかに男を意識してのものだった。
男は毛布にくるまり、ガタガタ震える。まさか盗撮をしている側が怖がることになるなんて。外の階段からは、トントントンと足音が聞こえる。足音は徐々に近くなり、男の部屋のドアの前で止まる。ガチャリと玄関扉を開ける音がして……
「もう、一緒に住んでるんだから見に来ればいいでしょう?」
「だって……外は怖いし……」
「貴方の行動の方が怖いです」
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