第22話 夜明けの花火

 17日ぶりに彼女と食事へ。

「1ヶ月は逢ってないよね~」

(どえらい四捨五入だな)

「CAFE、行ってみたかったんだよ~ソコの店。あっまずケーキ予約したから取りに行く。CAFE入る前にプリンとチーズケーキは食べてね」

「う…うん…あのさ、CAFEってなんか食べるものあるの?」

「サンドイッチがある」

(晩飯サンドイッチか~)


 とりあえずケーキ屋へ。

「予約した、桜雪です」

 ケーキ5個。

(買い過ぎだよ…)

 一緒に入った女性が一人、ケーキを2個買っていた。

(普通、あぁだよな)


 CAFEに着くと、お目当てのドリンクを頼む。

(あぁ…正面のラーメン屋のほうがいい)

「なんか食べ物ありますか?」

 彼女が店員さんに聞く、聞く、聞く…。

 コレはもう無いんですか?

 コレは人気ですか?

 写真が無いとわかんない…。

 カレーはランチだけなんですか?

 …………よくしゃべるなぁ~。


「じゃあ…ホットドックとツナサンドとワッフルとスコーンと…」

(頼み過ぎだ…)


「俺…CAFEでこんなに注文する人初めて見たよ」

「そう…」

「今、作れるメニューの8割は頼んでるよ」

「そうだね…来てみたかったの、1度」

「いつでも来れそうだけどね…アパートから近いじゃん」

「一緒に来てくれる人がいない…」

「俺、正面のラーメン屋のほうがいいな…」

「ラーメン屋?あった?」

「うん」


 次々と運ばれる飲み物、食べ物。

「乗せきれないもの、こちらのテーブルに置きます」


 CAFEのテーブルは小さい、こんなに頼まれる前提がないのだ。

 不思議だ…さっきケーキ2個食べて、さらに甘味を食べる。

 ソフトクリームまで頼んでやがる。

「スコーンとワッフル半分食べて」

「あのさ~食べきれる量を頼んでくれよ」

「だって…食べてみたかったんだもん」

(コレだ…『通』に近しいんだ…1度決めたら変更が効かないんだ)

「俺、夕食しょっぱいものが食べたい」

「ん…カレー持ってきた…」

「カレー?」

「ん、持ってきた」

 目の前には一口食べたホットドックとツナサンド。

「ソレ美味くないでしょ…」

「ん…うん」

「CAFEの軽食なんて、そんなものなんだよ…値段に見合わないレベルなんだよ、なんでこんな頼むの?」

「来てみたかった、さっきから久しぶりなのに、すごいディスってくる」


 なんか…『通』のことを思いだした。

 カレー屋でトッピングを頼み過ぎて自爆したことを。


「スタバ寄ろ!」

 さっきのCAFEはなんだったんだ…。

 また冷たいの飲んでる。

「車…寒くない?」

「冷たいのばっか飲むからだよ…真夏の夕暮れ、車内のエアコンオフって…珍しいよ」

「ちょっと…風向き変える~」

 エアコンをカチャカチャ弄る…なぜ『Lo』に設定したんだろう?

「なんでLoにした?」

「寒いから」

「いや…だからなぜ…設定温度最低にした?」

「えっ?Loってなに?やわらかいってことじゃないの?」

「空調の表現で『やわらかい』ってなんだよ。ロゥだよ下げるってことだよ」

「………みんな知ってる?」


「DVD借りてこ?」

「ねぇ、あの店員臭い」

 わざわざ走り寄って報告してくる。


「この時代の人って何食べてたんだろ?」

 信長のことである。

「そう大きく変わらないよ」

「でも、肉とかは食べないでしょ?」

「そうだろうね~魚主食だろうね」

「大変だね~」

(あなたがタイムスリップしたら大変だろうね~)

「ちなみに聞くけどさ、信長って何した人か知ってる?」

「日本統一」

「うん…惜しいとこまで行った人だね」

「してないの?」

「光秀に…あのさ、明智光秀って知ってる?」

「知らない」

「知らずに観てて面白い?」

 無言の彼女。

 前後の歴史を簡単に話すと

「よく知ってるね~普通知ってるもの?ねぇ!硫黄島って知ってる?ヤバイんだって、昼でも歩いてるらしいよ」

 光秀は置いてけぼり?伝えたいコトが飛び飛び過ぎて、受け取る私は時折付いていけなくなる。

「硫黄島?歩いてる?幽霊!」

「うん!最近スマホで調べてる」

「お盆だから」

「うん、アソコね立ち入り禁止なんだってヤバすぎて」

「あーっ!今日はダメだー!」

「どうした?」

「なんか…アレとかコレとか言葉が上手く出てこない」

「確かに今日は多いね」

「先週の火曜日は絶好調だったのに~」

(うん…知らんけど…)


「よし!花火行こ」

「えっ…これから」


 砂浜で花火を始めること20分。

「なんか明るくなってきたね~」

「うん…夜明けの時間だからね」

 早朝散歩、海岸にチラホラ人影が。

「なんか恥ずかしいね…」

「うん…花火って夜やるもんだからね」

「明るくなったね」

「俺…昨夜、花火先にって言ったよね…」

「うん…こうなるとは思わなかったんだよ」


 明るい砂浜…花火に興じる2人。

 線香花火が朝日に照らされキレイであった。

「線香花火は2人でやってこその線香花火だよ!」

「そうだね…」

 まぁ…愉しんでればよしである。

 ちなみに彼女が持ってきたというカレーとは、レンジでチンするカレー飯であった…カレーじゃねぇ……。

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お湯ラーメン序(女) 桜雪 @sakurayuki

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