第12話 久しぶりだよ

「長かったよ~半年くらい逢ってなかったようだよ」

「そうだね、久しぶりの気がするね、逢いたかったよ」


 というと、あ~久しぶりなんだなと思うでしょうが、実は4日ぶりである。

 めでたいバカ2人、頭の中はチューリップがパカッと咲いているのである。


「ピザ予約したの、急で悪いんだけど……いい?」

「いいけど」

(4日前もピザ食わなかったかい?)


「これ食べて」

(折れたフラン……)

「先端全部折れてるね」

「うん、あっコレ食べる?」

(今度は下が折れている……)

 そんなこんなで、イタリア料理店である。

 注文前に彼女が

「ここの店、のぼり旗立ててませんでしたか?」

「いいえ、立てたことはございません」

「でも、この前までネットで見てたんですけど、写真にのぼり旗が立ってた気がするんですけど……」

「他のお店とお間違えでは」

「でも……」

 なんだか不服そうな彼女、それ以上に不機嫌な店主。

(なにゆえ彼女は、こだわるのだろうか)

「パンナコッタってなんですか?」

(えっ?あれだけスイーツ食っておきながら、パンナコッタは知らないの?)

 あれこれ聞くので、面倒くさそうな店主の顔。

「あ~プリンのような食感の~」

 と私が口を挟むと

「カタラーナみたいな!」

 彼女が、それなら解るみたいな感じで答える

「いや、カタラーナのような硬さはない、むしろゼリーの食感」

「お店によって様々です」

 と店主がバッサリ。


「マルゲリータとパスタはカニのパスタ」

「カニのパスタはございません」

「えっ、でもネット……」

「他のお店では」

(このやりとり長ぇよ……)


「じゃあ、このエビのパスタを生パスタで……あとデザートは何があるんですか?」

「こちらです」

「チーズケーキは手作りですか?」

「もちろんです」

 不機嫌そうに、当たり前だろと言わんばかりの店主。

(相性悪いな~彼女と、この店)


 マルゲリータ エビの生パスタ ジェラート2個 ブラッドオレンジのジュース

 チーズケーキ 豚肉のカンパーニュ サラダ

 6000円ほどだ。


 サラダとカンパーニュが運ばれる。

「取ってあげる♪、生ハムは食べる」

 とりあえず、自分の食えないもの中心に取り分ける彼女。

「あっ、生ハム全部食べちゃった」

「いいけど」

「これも食べてみれば」

 カンパーニュを薦めると、一口だけ食べた。

(うん、一口でもいいから食事らしい食べ物を食べればOK)


「コレなに?」

「ピザカッターだね」

「ふ~ん、切れる?」

「うん、転がすだけだからね」


「パスタ美味しいよ」

「よかったね」

「エビ好きなの?」

「エビ嫌い!」

「えっ、なんでエビのパスタ頼んだの?」

「ん?」

「風味は好きなの?」

「うん!」

「食べないのね、エビ……」

(不思議だ……エビ嫌いなのに、なぜエビをチョイスしたのか)


「美味しかったね」

「うん」

「あの店さぁ~絶対にアタシのこと変な客認定したよね」

「そうだろうね」


「また1週間逢えないね~寂しいね~」

「そうだね」

「でも、普通なんだよね、毎日逢ってるほうが逢い過ぎなんだよね」

「まあね」

「逢い過ぎると飽きられるって言うしね、不安だったよね、飽きられるかと思ってたよ」

(飽きないよ……なかなかのキャラだから)

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