ゆうべはおたのしみでした!
「あの戦いの後、あたしと秋絵ちゃんと恵子ちゃんは三人で激しくきゃっきゃうふふベットの中で楽しみましたとさ!」
「そんな事実はないから!」
「流石に嘘はいけないと思うの」
うん、二人の御指摘通りです。お楽しみはできませんでした。
理由としては事件の後処理でUGNがやってきーの、被害者である秋絵ちゃんと恵子ちゃんはUGNお抱えの病院に連れていかれ―の、そこを夜這いしようとしたあたしは全力でとめられーの。大体そんな感じ。
二人の傷はあたしが手加減したのとオーヴァードに目覚めたこともあり、三日で回復。傷跡すらなくなるほどでした。その間にUGNによるオーヴァードの説明。今後どうするかの話し合いをしていたみたい。
※ ※ ※
「UGN日本支部長直々の連絡とは恐れ入る。それで次はどのような事件で」
P266はあの事件のあと、UGNのえっらい人から直々で事件を頼まれるようになったという。もともとアグレッシブな人らしく、現場のバックアップに精を出しているとかいないとか。
その分扱う事件も増え、その度にあたしが駆り出されることになる。やだなー、と思いながらも付き合うあたし。
「――さて亜紀子君。次の事件だが」
正直、P266だから許せる的な部分はある。女性じゃないけど、男じゃないし。
※ ※ ※
「アナタの攻撃はすべて私が受け止めます! さあ、さあ!」
クララさんは相変わらずレネゲイトの攻撃を受けるために戦いに出ている。ある意味、ジャームに一番近いのは彼女なのかもしれない。
とはいえクララさんが場に居ると居ないとでは損傷率が大きく異なる。そういう意味では邪険にできない人なのだ。扱う事件が増えた状況では、様々な現場に引っ張りダコのようだ。
「この程度では物足りません……。ああ、亜紀子さんの一撃が懐かしいですわ」
……時々背筋が寒くなるのは、この人のせいなのかも。
※ ※ ※
「……問題、ない。突破する……」
セッちんもまた相変わらず戦いに出ている。この支部の火力源として重要なオーヴァードだからだ。
とはいえ、戦いばかりではない。ジャームにならないために人との絆を結ぼうと歩み寄りつつあるらしい。なんで『らしい』っていうと、いまだにあたしには歩み寄ってくれないからだ。えっちなのはよくないことです、と遠ざけられているらしい。しっつれいね! あたしの存在が教育に悪いみたいじゃないの。
「……送信……」
でも通信SNSは繋いでくれた。一日一回は連絡をくれる。そういう意味では脱引き籠り、なのかな。
※ ※ ※
で、あたし達だ。
「嘘じゃないわよ! いずれ三人で楽しむんだから!」
「ない! 絶対にない!」
「もー。そんなこと言ってないで急ぎましょうよー。遅刻したら
あたしと恵子ちゃんと秋絵ちゃんは、三人一緒に現場に向かっていた。発生したジャームの対応だ。
秋絵ちゃんと恵子ちゃんは、最初自分のやったことにショックを受けていた。レネゲイトにより理性が正常ではなかったとはいえ、その行動は自分の心にある欲望からくるものだ。完全にレネゲイトのせいにはできない。
そして二人が出した答えは『罪滅ぼしの為にUGNに協力する』事だった。目覚めた力を使って、多くの人を助けたい。それが贖罪になるかはわからないけど、そうすることで誰かを救えたらこの力に意味があるのではないか。
「絶対、なんてことは絶対ないわよ。現に一緒に寝た、ってところまではクリアしてるんだし」
「ち、違うわよ! あれば寝ぼけて……! ああ、もう! なんでこんなのと同室なのよ!」
「言えば言うほどドツボだと思うわ。諦めなさい」
「うふふー。オーヴァードの先輩として監視する義務があるのよ、あたしには。二人まとめてねー」
にまにましながらあたしは恵子ちゃんと秋絵ちゃんに言う。
オーヴァードとして目覚めた二人を指導する役を引き受けたのはあたしだ。
二人をあたしが教育すると言った時、266は最初難色を示した。っていうかあたしを知る人全ては首を縦に振らなかった。解せぬ。
これの意見を覆したのは、以外なことにあたしは顔も声も名前も覚えるつもりのない(男だから!)UGN日本支部長の鶴の一声だった。何をどう言ったのかはよくわからないが、P266は前言をひっくり返して承諾する。
そんなわけで二人はあたしと同じチームとして、オーヴァード事件を解決することになる。基本三人チームで、事件によっては援軍で誰かが入る、という構成だ。二人に経験を積ませることもあり、あたしがUGNに足を運ぶ機会が増えてきた。
……あれ? UGNにいい様に使われている感がある。
もしかして、これが日本支部長とやらの策略……?
「あー、それでも絶対ならないの! 私はノンケなんだから! エロ村の思うようにはならないわよ!」
「ほらほら。そういうのは後にして。早く行きましょう、亜紀子ちゃん」
二人の呼ぶ声があたしを現実に戻す。おおっと、そうでした。
「作戦確認よ。恵子ちゃんの化学物質で主軸を足止め後、雑魚を秋絵ちゃんの絵画で一掃。ボスはあたしがワンパンするわ!」
「はいはい。いつものパターンね」
「攻撃は私が光を屈折させて逸らすわ」
「それじゃ、行くわよー! 今夜のおたのしみのために!」
「だからない!」
「もう、だからその話は――」
こうしてあたしは日常と非日常を繰り返している。
戦いを繰り返せば、レネゲイトの侵食でジャームになる可能性が増えるのは確かだ。
だけど、近くに仲間がいる限り。絆がそこにある限り。
あたしはいつだって日常に帰ってこれると信じている。
昨日と同じ今日。今日と同じ明日。
だが、世界は確かに変貌していた。
あたしにとっていい方向に!
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