恵子ちゃん ロイス→タイタス
「来るぞ! 全員備えろ!」
活性化させて、どうする?
あたしの
あたしの悩みなどお構いなしに状況は動く。予想以上に早く動いた恵子ちゃんの手から粘性のある液体が生まれた。直径1mほどの潰れたそれが、あたしたちと恵子ちゃんの間を遮るように二塊生まれる。
このスライムっぽい何かはレネゲイトを含んだ液体だろう。おそらく恵子ちゃんの言うように動く使役型とかそういうのだ。
「液体系のEXレネゲイトか。自分の意志はないようだな」
「ごみやほこりを吸い込んで綺麗にしてくれるのよ!」
「……だったらメイドロボとかそういうかわいいのにすればいいのに……」
「液体は隙間にも入れるから便利なの!」
奇麗好きな恵子ちゃんは、自分が作った液体掃除機をけなされて、御立腹のようだ。そのまま手の平に液体を生み出し、あたしの方に投げつけてくる。
「エロ村動くな!」
「拙い!
「私にお任せください!」
「クララさん!?」
恵子ちゃんの攻撃に対し、クララさんが
そして――爆発。
「爆発!? 服が溶かされて、からだがしびれてくる……」
「あ、すまん。
「仲間を庇うなんて殊勝なシスターね。でもその聖人ぶった顔がどれだけ保てるか――って、ええええ!?」
「ああ、何というバッドステータス祭り!」
クララさんの聖人顔は、一瞬で被虐に喜ぶ顔になった。
「酸でこちらの防御を無効化しながら爆発で傷つける。
それで終わりではなく、粘性の物質でこちらの動きを封じながら、体内に侵入した毒でじわりじわりと体力を削られていく!
これは日本における緊縛文化! 力による支配ではなく、動きを封じられることで抵抗する意思を奪い、その心の隙間を埋めるように滑り込む快楽! 肉体と精神の両方を侵す魔性の猛毒!
時計の針が進むたびに堕とされていく! ああ、どうする事も出来ない絶望に、私はもう……!」
「ちょっとエロ村! あんたの知り合い怖いんだけど!」
「うん、あたしもちょっと引くかな」
「
「……うう、外の世界、変な人ばっかり……」
恍惚の表情を浮かべるクララさんに、マジ引きするあたし達。
「一撃の火力は低いが、こちらの足を封じて毒で削ってくるタイプか」
「尻尾まいて逃げるなら、逃がしてあげてもいいわよ」
「逃げない……いって、ヴェロニカ、ミーサ、フィオナ」
セッちんの声が響く。だがその姿は見えない。光を歪めて、その姿を消しているのだ。だが目を凝らせば幼い少女が虚空に人形を創造し、その人形がスライムの周りを飛び交っているのを。攻撃の瞬間まで位置を悟らせない不可視の一撃。
目に見えない攻撃を避けることもできず、人形から放たれた光線で灼き尽くされるスライム。あたしと恵子ちゃんを阻む者は、何もなくなった。
「エンジェルハイロゥの能力で
「ねえP266? 誰に説明しているの? こっちの情報、敵にベラベラ話してもいいの?」
「様式美というかそういうものだ。さて待たせたな、私が動くとしよう」
P266はそう言って、電子音を発する。微弱電波により神経を活性化させて、仲間を強化する。
「……恵子ちゃん……」
P266に強化されたあたしだが、戸惑いは大きい。恵子ちゃんに向かい
凶悪な獣の腕となった影を振り上げる。この爪はレネゲイトを喰らう爪。傷口から
――地面に。
手を振り上げた瞬間、恵子ちゃんが目をつぶってたのを見た。何かに怯えて、震えるような女の子の顔。それを見て、腕の軌道を切り替えてしまう。
「やはり無理か……!」
「仕方ありませんわ。亜紀子さんはああ見えて繊細なお方。ご学友があのような目にあれば、ショックを受けても当然ですわ」
「心が繊細なのと、男に対して暴力的なのは違うといういい例だな」
「……繊細と、女性に変な事をするのも……別……」
「ええ。繊細と経験は別物なのです」
あたしの行動を見て、背後で苦渋の声をあげるUGNズ。よーし、お前たち覚えてろよ。否定できないけど。
そんなあたしに飛んでくる光の絵画。これは、秋絵ちゃんの描いた絵だ。
どこからと辺りを見まわば、社務所の入り口に秋絵ちゃんが立っていた。これはおそらく――
「あたしに会いに――」
「援軍……というよりはここで何かしていたようだな。曲がり無しにも今回の事件の本拠地だ。居てもおかしくはない」
「どうします、
あたしの声を遮ってシリアスに応対するP266とクララさん。えー、違うのー?
……うん、違うかな。秋絵ちゃんも戦う気満々のようだ。どちら共に攻撃できない以上、あたしのやることは何もない。
「……戦う……?」
「いや、火力源がセツナ君だけというのは負担が大きすぎる。かといって、敵の本拠地に潜り込み、何もできずに撤退というのは惨敗に等しい。せめて有益な情報を手にれなければならん」
「ですが、どうするのですか? やはりこのまま戦闘続行して、もっと攻撃を受け続けるのが一番と思いますが」
「鼻血を拭きたまえ、クララ君。……亜紀子君、……頼めるか?」
P266はあたしの耳だけに届くように、音を操作した。そしてその作戦を伝えてくれる。
「ええ、問題ないわ。むしろどんどん頼んじゃって!」
「は! さっきは驚いたけど、当てることができないんじゃどうしようもないじゃない! そのまま帰って寝てなさい!」
「んふふー。恵子ちゃん優しーんだぁ……あたしの心配してくれるのね」
「な、なによ!? 顔を近づけ……ちょ、なに、離しなさ……んっ」
「ちゅ」
触れ合うあたしと恵子ちゃんの唇。獣の腕で恵子ちゃんの頭を固定し、抱き寄せて唇を奪った。
P266の作戦は『あのジャージ娘から情報を奪え』だった。あたしにそれを頼むってことは、そういう事だよね。しかたないわー。UGNの命令だから少しごういんでもしかたないわー。
逃げようとする恵子ちゃん。だけどそうはさせまいと力を籠める。固く閉じた唇も、数度舌を這わせればその抵抗力も薄まっていく。ゆっくり蕩けるように恵子ちゃんの唇が開き、あたしの舌が強引に侵入していく。
「……あの、支部長」
「手ぶらで帰るよりはいいだろう。敵の情報を得ることができれば、次の闘いに活かせる」
「そうじゃなくて……あそこまでディープなのは必要ないのではないかと」
「…………亜紀子君も色々ストレスが溜まってるんだろう。多少の悪行は見過ごしてやろうじゃないか」
悪行言うな。純粋な情報収集だ。しかも
あたしの舌と恵子ちゃんの舌が絡み合う。唾液をなめとると同時に、あたしの脳内に広がる光景。
それは恵子ちゃんの過去の体験だった。
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