第4話 お姫様の居場所

え?どこに行くかって?


まず、考えられるのは事務所だよね。でも事務所に行っちゃうのは初心者。だって、あかりんがあんなブログ書いたってことは、もう事務所とのごたごたしたやりとり全部済ませちゃっているでしょう。それに、いくら世の中のことを知らないあかりんだって、芸能活動休止を発表した翌日に事務所に行ったら色々メンドクサイということくらいわかっているだろうし。


事務所がダメとしたら、次はあかりんの住む街だよね。

あかりんは、今も実家暮らし。あかりんがそう言っているんだもん。お姫様、嘘つかない。あかりんの実家はおそらく川崎。私が実際確かめたわけではないけれど、インターネットの通説では、川崎。私はネット掲示板発信の、情報はあまり信じないのだけれど、この通説は、ブログの写真と、実際の景色との比較画像とともに載っていたから、信じてもいいかなって思っている。私はこの情報を見たとき、あかりんのプライベートにまで、干渉したがる輩がいることに、恐怖を感じたよ。私だったら絶対にいやだ、うわっ気持ち悪い、あかりん、かわいそうって。だけど同時にね、お姫様にはプライベートがないの、ってため息をついているあかりんも想像できて、少しにやけちゃう。あかりん、ごめんね。


話がそれちゃった。

うーん、私、あかりんの住む街に行くのはなんか違う気がするの。そりゃ実家の周辺を何日もうろうろしていたら、あかりんとは会えるかもしれないけどさ。あかりんには偶然会わなきゃダメな気がするの。だってあかりんのストーリーは、「道を行く人に説得されて、あかり姫はお城に戻る気になった」でしょ?そりゃ偶然会わなきゃ、ストーリー変わっちゃうよ。

しかも、どんなに普通の人を装ってあかりんに話しかけても、それがあかりんの実家の周辺でのことだったら、あかりんにストーカーと思われるに決まってる。そんな状況であかりんに芸能活動再開してください、って頼み込む?あんた、それ怖いよ。みんなもやめてよね。


事務所もあかりんの住む街もダメとなると、あと私が思いつくのは、あかりんが服を買う場所くらい。

あかりんは服が好き。あかりん、かわいい私服もよくブログに載せているし、お仕事がお休みの日は、よく服を買いに出かけている。だから、今回お仕事を長い間お休みすることを決めたあかりんは、時間を気にすることなく、かわいい服をじーっと端から端まで眺めているんじゃないかなあ。あかりんが服を買っているお店に行ったら偶然あかりんと会えるんじゃないかなあ。

あかりんの私服は、ピンクとか水色とか白とか、パステル色が基調で、高級感もありつつ、子供っぽさ、女の子っぽさも出ていて、かつ、あまり着飾っているような印象を与えない、さりげないものが多いと思う。うーん、説明が難しいね。一言で言うと、お姫様みたいな服。でも、お姫様みたいなって言っても、あかりんは、ロリータファッションのような、お姫様じゃない人がお姫様気分を味わいたいがために作られたような仰々しいもの着ないよ。あ、勘違いしないでよね、あかりんが衣装でそういうのを着るのはいいんだよ。かわいいし、似合っているもん。お姫様だから。でも、あかりんはそれを普段から着ちゃうようなおバカさんじゃないってこと。お姫様もTPOはわきまえるって。

とにかく、あかりんの私服はそんな感じ。え?うんうん。そうだね、確かに、ブログに上がっているあかりんの私服がいわゆる「外向き」の私服の可能性もあるね。だけど、あかりんがそのようなファッションを好きなことも、そのようなファッションが似合っていることも事実。どうして、わざわざ好きでもない、似合わない服装に身を包むことがある?まあ、あかりんはなんでも似合うと思うけどさ。


まあいいや、んで、肝心のあかりんがどこで服を買うかって問題なんだけど、これは大丈夫。私、あかりんがよく行くお店の目星はついているの。

私はあかりんが着ているような服は似合わない。似合わないから自分で買うことはしないけれど、あかりんのことならなんでも知っておきたいから、あかりんの服がどこのお店のものなのかは大体把握している。あかりんがブログを付け始めたのは、デビューした2010年。その頃から2016年現在までのブログを私は全て読んできた。応援し始めた当初は、あかりんがどこの服を着ているのかなんてほとんどわからなかったよ。だけどたまに、あ、これあそこの新作だ、とかわかるものもあるんだ。そのブランドのホームページを見てみると、他にもあかりんが着ている服がいくつかあるの。あ、これも、これも!ってね。そんなことをずーっと続けてきたから、今ではあかりんが着ているものを見て、あ、これどこどこのものっぽいな、とかわかるようになってきたの。あかりんがどこのブランドの服をよく着ているのかもわかってきたの。だから、今日はあかりんが行きそうなお店をしらみつぶしにあたってみるの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る