太陽
僕は大学へ進み、彼女も別の大学に進んだ。
大学生活を送るうちに僕にも彼女はできたが、そしてその子を愛することはできたが、僕の中ではまだ、太陽のような彼女を忘れることはできなかった。
彼女は僕にとっての太陽であったから、直視することはできなかったが、忘れることはできないくらいにその存在は大きかった。無意識下にしまい込んでいてもふと込み上げてくるような存在だった。
今の僕の彼女が月なら、彼女は太陽だった。
太陽の光に照らされる月のように、僕は太陽である彼女の面影を月である彼女にあてはめたりしていた。
太陽は直視できないが、月は直視できる。
僕は月を愛していた。ガラクタと片づけた欠片を新しく取り換えに行ったりした。その月の欠片はすごく輝いていたし、とても魅力的だった。
もちろん、僕の中では月が最優先というか、僕も月を愛していた。
彼女がもしかすると結婚相手になるのだろうか、と考えたりすることもあった。
そのくらい彼女のことが好きだったし、一生そばにいたいと思っていた。
僕は、太陽にあこがれながらも月に本物の愛をもっていた。苦しい。
だが、僕も大人になったのだ。
高校の頃の僕ではない。恐怖から誰かを突き放すこともしなくなったし、多くを望まなくもなった。あきらめがつくようになった。
太陽は太陽のまま、あこがれのままになろうとしていたし、僕は太陽を見上げる人間であることなどはとっくにわかりきっていた。
いつしか冥王星のように忘れられるような距離になろうとも構わないと思ってしまっていた。そうして時間だけが過ぎていった。
僕はいつしか現実逃避を宇宙に求めるようになった。
それはふと空を見上げたときのこと、星の何も語らない輝きに何かが癒されていくのが分かったからだ。
諦めのために星を見上げていたのかもしれないが、星を見上げるたびに彼女を思い出していた。
星の良さがやっとわかったのだ。
彼女の見ていたものとは違うかもしれないが、これは僕なりの視点だ、僕から見た星の良さだ。それは僕から彼女を見ていたとき、恋をしていたときと似ていた。
半ば呆れた。これほどまでに一つのことに心が引き寄せられることはそうそうないだろう。
僕の中で、彼女への想いは、徐々に重圧から解放されていった。
太陽を直視できないなら、そこに太陽があるという事実を受け止めればいい。
僕は彼女の存在を直視することなく、受け止めることを知ったのだ。
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