天体望遠鏡
彼女のメールアドレスから同窓会の案内が来たのは、僕が、僕の中に存在する彼女を受け止めてしばらくしてからだった。
実に機械的な内容だったが、同窓会ときいて少しときめいたのは隠すことではないだろう。
彼女はどう変わっているのだろう。
それが最初に浮かんできたものだった。自然と高鳴る脈に伴って想像が捗る。
「変わらないね」なんて言ってくれるのだろうか。それとももっと別な言葉をかけてくれるのだろうか。どんな話をしようか。
それから同窓会までの日々は、クリスマス前、もしくは誕生日前の子供のように喜々として過ごしていた。
しかし、同窓会が近づくにつれて、無視できない恐怖も浮かび上がってきていた。
彼女の中に僕はまだ生きているのか、ということだ。
彼女は僕の太陽なら、彼女にとっての僕が何なのだろうか、という疑問が浮かんできて、もしも忘れられていたら、なんて考えと直面せざるを得なかった。
僕は彼女が好きだったから、そんな考えと直面せざるを得なかったのだ。
好きだから。そんな考えと直面せざるを得なかった。
自己解決に走っても何も解決しないというあきらめにも似た勇気で同窓会へと出ることを決意し、返事を送った。
返信はなかった。
そして手元に残った機械的な内容の出欠確認が僕の不安を大きくしていった。
そんな不安と向かい合いながら、僕は縋りつくように、彼女の家で天体観測をしたことを思い出して天体望遠鏡を購入した。
彼女と僕を最も強く結びつけていたのは天体望遠鏡、天体観測、星だった。
僕は彼女を同窓会で天体観測へと誘おうとしていた。
それが最も自然に言葉を交わす方法だと知っていたから。
天体望遠鏡を眺めていると、不安は少し
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