8-3 好敵手達

 ラルフは大会の余暇を利用し、《研究施設》に戻っていた。

 しかしながら、そこはNIMAの施設ではない。NMA直轄の特別研究所だ。およそ都心にあるビルの内部とは思えない何重ものセキュリティーと研究機器の数々。その全てがラルフと《彼女》の為に与えられた施設だった。

 プロジェクト『Aegis』。

 ラルフがNMAとNIMAに託された彼女は、漸く懸念していた境界線を越え、想定以上の成果を残しつつある。

 ラルフはとある部屋に佇んでいた。

 その中心には、棺桶のようなカプセルがポツンと設置されている。その周囲には何十本ものケープルがまるで毛細血管のように広がり何処かへと繋がっている。カプセルは蛹のように銀色の膜に覆われ、一切中を窺う事が出来ない。


「君の願いに着々と近付いていると、私は信じているよ」


 ラルフは子供の頭を撫でるようにカプセルに触れる。掌をひんやりとした感触が伝う。

「きっとこの大会が終われば、君は《自由》という名の翼を手に入れられる。だから、もう少しだけお休み、眠り姫・・」

 ラルフは名残惜しそうに呟くと、押し黙り部屋を出て行った。

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