6-2 初陣
大会二日目。
初戦という事もあり、控え室にいる選手は気合い十分といった様子だ。ユウキも例外ではなく、既に臨戦態勢だ。目覚めも良く、体力・魔力共に充実している。他の選手がストレッチや準備運動をしている中、ユウキはベンチに座り、最後のイメージトレーニングを行っていた。
鎧を纏ったAegisと向き合い、何度か剣戟を交わしていく。鍔迫り合いから間合いが離れると、Aegisは構えを解いた。
『動きも魔術も問題ないようです』
Aegisはほっとしたように微笑んだ。
『アイギスに太鼓判を押して貰えば俺も安心だよ』
ユウキは剣を鞘に納める。Aegisも同様に剣を納めると、
『ユウキ、試合前に一つだけ云っておきたい事があります』
『どうしたんだ?急に改まって』
Aegisはユウキに近付くと、
『初めて出逢った時にユウキは私に誓いました。努力を惜しむ事なく必ず強くなってみせる、と』
『ああ。誓った』
あの時の事は今も鮮明に思い出す。それは未だつい数ヶ月前だ。だが、ユウキはもっと昔の事のように思えてならない。
『貴方はあの誓いに恥じない努力を続けてきた。それは一番近くにいた私が一番知っています』
Aegisの言葉にユウキは何となく恥ずかしくなり頭をぽりぽりと掻く。
『えっと、ありがとう。アイギスの云う《強さ》に近付けたかは分かんないけど』
『言葉で語らずとも私には分かります。貴方の求める強さと私の求める強さは等しい、と。そして、その強さを私達は既に手に入れている』
Aegisはユウキの肩を掴むと、
『貴方は強い。その強さを自信を以て知らしめて上げましょう。貴方がこの大会に出場するに相応しい人物であると』
『アイギス・・』
Aegisはユウキの心の隅に残っていた痼りを見抜いていたらしい。それはAegisの言葉で消え去った。最後のピースが嵌まったパズルが今完成したのだ。
ユウキはAegisの手を握り返すと、
『必ず優勝しよう、アイギス』
『はい、必ず』
ユウキはその温もりを感じながら、静かに眼を見開いた。大会アナウンスが自身の名を呼んでいる。ユウキには憂いも気負いも完全に無い。ユウキは勝鬨を上げる騎士のように会場へと向かった。
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