妹系幼馴染1



「あのさ、ヒロ兄って今好きな人とかいんの?」


始まりは、双葉の一言だった。


「何だよ急に」


「ヒロ兄が高校入って一学期過ぎたし、そろそろヒロ兄にもそういう話しも出てくるかなーって」


「無い無い。男友達は出来たけどさ」


「ふーん。そんなもんなの?高校生って」


「そーだよ。付き合ってる奴なんて中学の頃から付き合ってるような奴らしかいない」


俺の家のリビングで、家族同然にくつろいでいるこの少女______陽崎双葉(ひのさき ふたば)______は俺の二歳下の幼馴染だ。

最早妹同然の存在で俺_____月代浩哉(つきしろ ひろや)______の事を「ヒロ兄」と呼ぶが、血の繋がりは無い。


そんな双葉も中学二年生になり、身体もそれなりに育ってきてはいるが、暑さ故にキャミソールとショートパンツというあられもない姿でゴロゴロしている様を見ても正直「腹を冷やさないだろうか」という心配が先に出る程度には彼女に対して妹感を感じている。


「というか双葉はどーなんだよ?そろそろ告白したりされたりなイベントは無いのか?」


「バーカ。こっちだってクラス替え直後でそんな暇ないよ。ま、男子も女子もシャイばっかだから今年中は無理そうかな」


「そんなもんだよ、高校も」


「そんもんかぁ。ドラマや漫画じゃあんなに恋してるのになぁ……」


「現実とテレビは分けろよ。第一お前

、その辺の努力とかしてんの?」


「その辺の努力ってまた曖昧な……へいへい、どうせアタシは野蛮な運動部女子ですよーっと」


「全く、先が思いやられる」




そんな会話があったのが、3日前。


そして、今日。7月27日の昼下がり。

父さんと母さんが仕事に行くのを見送って、それと入れ替わるように来た双葉に氷を浮かべたジュースを出して、のんびり過ごしていた時だった。


「あのさ、ヒロ兄。今好きな人いないんだよね?」


「またその話か?いないって」


「ホントに?クラスにちょっと気になってるような人も?」


「…………まぁ、いないな」


なんだなんだ。双葉の奴、いつもはソファーに横になって占拠しながら目も合わせずに話すのに、今はキチンと机の対面に座って目を見て話しているぞ。

しかもそんな真面目な顔で、そんな話題を出されたら、まるで、まるで_________。




「じゃあさヒロ兄、アタシと付き合ってよ」


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幼馴染@オムニバス いろはの @iroiro112

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