その二


 ウルルが二○三号室の扉をノックすると、中の住民はすぐに出てきてくれた。


 人工の怪物であるライオット・ダイナモは、エルーナの想像以上の、扉の入り口に頭が届きそうなほどの巨体だった。

 体中に走ったつぎはぎも、そこだけ白い左目も、左右で大きさの違う手足も、十分に恐ろしい。


 しかし、ウルルとメデューサとエルーナの姿を認めると、彼は穏やかな笑顔を見せて、低く柔らかい声で言った。


「おはよう、ウルル、メデューサ。どうか、した、のか?」

「おはよう、ライオット。いきなりだけど、彼女は天使のエルーナだ」

「はじめ、まして。ライオット、ダイナモ、です」

「あ、初めまして、エルーナ・フェルメールです」


 未だに圧倒されているエルーナがライオットに促されて握手をすると、彼女の手はライオットの掌にすっぽりと包まれた。


「ライオット、エルーナは百年ぐらい前に幼かった自分を助けてくれた相手を探しているんだが、心当たりはあるか?」

「ここの森の中での出来事で、五歳のエルーナは迷子になっていたのよォ」


 ライオットは自分の記憶を辿っていたが、心当たりが無かったらしく申し訳なさそうに首を横に振った。


「ごめん、おいら、じゃ、ない、みたい」

「そうかー。エルーナ、残念だったな……」

「ライオットさん、協力、ありがとうございます。でも、ライオットさんを見て、一つ思い出したことがあります」

「なあにィ?」


 一斉に皆から注目されて、エルーナは急に極まりが悪そうになった。


「あ、あの、すごく言いにくいことですけど、私が会った怪物さんは、ライオットさんよりも、その……人間に近い姿をしていました」


 そう言い終るとすぐに、エルーナは失礼なことを言ってごめんなさい! と頭を下げた。


「気に、して、いない、よ」


 ライオットの声色は変わってなく、エルーナが顔をあげると、彼は笑顔のままだった。


「おいらは、人間に、似てる、似てない、気に、ならない。この、左目、肌の、色、大きな、体。全部、おいら、だけの、物、だから、誇りを、持って、いる」

「そうなのですか……」


 ライオットが胸を張ってそう言い切る姿に、エルーナは驚きより先に感心していた。


「私も、人間とはかけ離れた見た目をしているけどねェ、それを恥じたことは一度もないわァ。だから、あまり気を遣わなくても平気よォ」

「あたしだって、満月の夜に変身すると、すっごくかっこよくなるんだからね!」


 凛々しく立つメデューサと、妙なところで張り合うウルルの姿を見て、エルーナはまだ自分が人間と同じ尺度で物を見ていると、急に恥ずかしくなった。


 ライオットが部屋に戻った後、廊下の真ん中でウルルとメデューサは話し合った。


「一番、人間っぽい姿って言ったら、イノンだよな」

「でも、背はそんなに高くないわよォ?」

「五歳だったエルーナから見たら、大きかったのかもしれない」

「それもあり得るわねェ。一度行ってみましょうよォ」


 三人は二一二号室のイノンの部屋へ向かった。

 扉の前に立ち、ノックしてみてが、反応が無い。ウルルが何度も、段々と乱暴に叩いていくと、やっと中から「うるさい!」と怒鳴り声がした。


 扉が開き、中から寝間着姿のイノンがとても眠そうな顔で、あくびを噛み殺しながら出てきた。

 見た目は確かにライオットと正反対で、とても人間らしい。エルーナのように彼から出る魔力を感じられなければ、普通の赤毛の青年に見える。


「どうしたんだ、お前ら。もう少し寝かせてくれよ」


 だらけきった声でそう言ったイノンは、ウルルとメデューサの後ろに立ったエルーナに気付いてはっとした。


「あ、お客様か?」

「初めまして、エルーナ・フェルメールです」

「あ、どうも。イノン・ニクロムです」


 挨拶をしたエルーナに、イノンも慌てて頭を下げた。混乱してしまい、人間を脅かす時のような丁寧な態度になっている。

 ウルルが、エルーナがここへ来た目的を話すと、イノンは腕を組んで「うーん」と唸った。


「百年くらい前だったら、俺もまだ子供で、身長もそんなになかったと思うな。それに、五歳ぐらいの女の子と会った覚えもないし」

「そうかー、イノンでもないかー」

「エルーナ、イノンを見て、何か思い出せることはないのォ」

「あ、はい。……そうですね、イノンさんみたいにほとんど人間というよりも、体のどこかに大きな特徴がありました」


 エルーナの口から出た大きな手掛かりに、ウルルはやった! と思ったが、やはり正解ではない。ウルルはすがるようにイノンを見た。


「イノン、お前の魔法で、何とかならないか?」

「おぼろげな記憶を鮮明にさせるのは難しいな。不可能ではないけど、薬や魔方陣や、用意に時間が掛かってしまう。悪いな、力になれなくて」

「いいえ、協力しようとしてくれただけでも、ありがたいです」


 そう言って笑ったエルーナを見て、イノンは目を丸くした。

 彼には、普段一緒にいるウルルやメデューサとは、全く違う種類の女性に見えたのだ。


「あ、そういえば、ウルル、カウンターは出しておいたか?」

「ううん。まだ出していないけど」

「なんだ、まだなのかよ」


 露骨にがっかりしたイノンを見て、ウルルは怒りが込み上げてきた。


「あのね、イノンが部屋でぐーすかぴーすか寝ている間も、あたしはせっせと掃除に励んでいたんだよ? それなのに、カウンターも出せだなんて、注文が多すぎない?」

「……おい、ウルル、俺が最近、なんで寝不足か、知ってるか?」

「ふえ? なんで?」

「お前が酒に強くなる薬を作れって言ってきたからだ!」


 突然、イノンが怒りに任せて、その大きさだけで風を巻き起こせそうなほどの声で叫んだ。

 それでもウルルは、全く身に覚えがないのか、きょとんとしている。


「え? あたし、そんなこと言った?」

「ああ、言ったさ! 俺も、みんなが酔っぱらったお前に迷惑しているから、手伝おうと思って色々調合して渡したよな? だけど、飲む前から、これは色が気持ち悪いだとか、匂いが変だとか、苦手なものが入っているとか、なんだかんだ言って飲まなかったよな! それじゃあ、失敗なのか成功なのかも分かんないだよ!」

「あー、そういう事も、言ったのかも……」

「言ったのかもって! その程度の認識かよ! 俺は、お前が飲める薬を作ろうと、あちこち飛び回って、時には人間の町にも行って、材料を集めてんだよ! 昼間はそれで忙しく、夜はホテルの仕事があるから、寝るのは夕方のちょっとの時間だけなんだよ!」

「あー、あたし、その時酔っ払っていたから、覚えていないかも。あははー……」

「よ、酔っ払っていたから、覚えてない? あはははーで、済まされると思うな!」

「い、イノンさん、落ち着いてください」

「そうよォ。イノン、お客様の前よォ」


 エルーナとメデューサが必死になだめるが、イノンの憤りは収まらない。

 怒りで凝り固まった笑顔のまま、ぶつぶつと呪文を呟きながらぼきぼきと両手を鳴らした。さらにその手には、ビリビリと電気が集まってきている。


「よーし、じゃあ、これから酔っても忘れないように、体に叩き込んでやる」

「ご、ご、ご、ごめんなさい!」


 文字通り、雷が落ちると思ったウルルは、脱兎のごとく逃げ出した。


「悪いわねェ、イノン。あとで、ウルルにはよく言い聞かせておくからァ」

「すいません、ご協力、ありがとうございます」


 メデューサとエルーナも慌ててウルルを追った。

 それを眺めていたイノンは、一つため息をつき、大きなあくびをしながらもう一眠りしようと、部屋の中に戻っていった。


 階段の所まで逃げていたウルルは、恐る恐る二一二号室の様子を見ながら、追いついた二人に話し掛けた。


「も、もう、部屋に戻ったよね? た、助かったー……」

「ウルルさん、自分の発言には、責任を持った方がいいですよ」


 その場にへたり込んだウルルに、エルーナは優しい声で追い打ちをかけた。


「それに、寝起きのイノンがとっても機嫌が悪いことを一番知ってるのはウルルだよねェ? どうして口答えなんかしたのよォ」

「そうだよなー。あたし、寝起きのイノンから何度も雷を落とされているんだよなー」

「いい加減学習しなさいよォ」


 とどめの一言に、がっくりと肩を落としたウルルだったが、ふうと息を吐くと気持ちを切り替えて、立ち上がった。


「でも、収穫はあったな。謎の怪物さんにまた一歩近づいたぞ!」

「その代わり、ウルルは恐ろしい目に遭うという、釣り合わない対価を払ったけどねェ」

「頼む、もう、それ以上傷口をえぐらないで……」


 ウルルは胸を押さえながら言った。

 エルーナは、そんな二人の様子を見比べながら、おずおずと言い出した。


「あの、怪物さんに当てはまる、体のどこかに大きな特徴がある方って、ここにはいらっしゃいますか?」

「うーん……ぱって思いつくのは、やっぱりレンかな」

「そうねェ。外で仕事をしているレンなら、人間に優しくしててもおかしくないわねェ」


 三人はレンの泊まる二○五号室の前に立ち、扉を叩いた。すぐに、「はい」という声が聞こえた。

 中にいる者が、足音と共に扉の前に近付いてくる。

 ただそれだけなのに、エルーナは冷や汗をかき始めていた。


 扉が開くと、二つの真っ赤な瞳が、真っ先にエルーナの目に映った。悪魔さんだ、とエルーナはすぐに気付く。

 彼女が本物の悪魔に会うのは初めてだった。悪魔と天使は元が敵同士だから反発し合うと、以前他の天使が話していたのを思い出した。


「む? 天使か?」


 悪魔のレンも、真っ先に天使のエルーナに気付いた。真っ黒なタキシードに身を包み、シルクハットを被った彼は、左手に読みかけの本を抱えていた。身長はライオットほどではないが、随分と高い。


 レンとエルーナが黙っているため、代わりにウルルが互いを紹介した。


「えー、こっちが悪魔のレン・カフカ・アシュタロトで、こっちが天使のエルーナ・フェルメールだ」

「は、初めまして」

「すまないな。気分が優れないのなら、私が少し離れようか?」

「いえ、大丈夫です。ちょっと慣れてきましたから」


 エルーナが深呼吸を繰り返して笑って見せると、そうかとレンも安堵の声をこぼした。


「レンの力は悪魔の中でも高い方だからねェ。無理しなくてもいいのよォ」

「あ、はい、では本当に苦しくなったら、遠慮なく言います」


 エルーナはメデューサの言葉に甘えることにした。

 普段は天使としての力が弱いことをあまり気にしていないエルーナだったが、この時は迷惑をかけているようで歯がゆく感じた。


 ウルルからエルーナのことを聞かされたレンは、無表情のままじっと考え込んでいたが、正直に「分からない」と口に出した。


「私も、レンさんではないと思います。目は赤色ではありませんでした」

「そうか。悪魔ではないのか。では一体、誰なのだろうな」


 レンは表情を変えないまま、不思議そうに首を捻っている。

 感情を持った機械のような印象を、エルーナは抱いた。


「しかし、その怪物に妙な悪巧みが無くて良かったな。このホテルに集まってくるのは、人間に恨みを持ちながらも、危害を加えない者が殆どだ。だが、外では必ずしもそうとは限らない」


 口だけを動かして紡いだレンの厳しい言葉に、皆はへ? と困惑を浮かべた。


「確かに、彼が悪い怪物だったら、私の命も、危なかったと思います。でも、怪物さんは、そんな方ではありません」

「何故、そう思った? 根拠はなんだ?」

「とても優しくて、ずっと私の手を引いて、語り掛けてくれました。……それくらいしか、根拠らしいものはないですが、私には、はっきりと分かったんです。彼が、本気で私を助けようとしていることを」

「そうか。それならば、そうなのだろう」


 レンがあっさりとエルーナの言葉を信じたため、彼女は目が点になった。


「あー、エルーナ、気にしないでくれ。こいつは、言われたことなら何でも信じちゃうから」

「そのくせ、何でも疑っちゃうけれどねェ」

「職業柄、何でも疑うようにしているからな」


 レンは、どこか誇らしげに答えた。

 エルーナは、そんな彼の言動に最初に抱いていた恐怖感も薄れ、くすりと笑った。


「レンさんって、なんだか変わった人ですね」

「それはよく言われるな」

「なんだか安心しました。悪魔と話をするのは初めてだったので」

「そうか。だが、他の悪魔にはそう簡単に心を許さない方がいいぞ。特に私の上司は、女性ならば天使でも人間でも、関係なく口説いてくるからな」

「はい、気をつけます」


 どこまでも真面目なレンの様子に、エルーナはにっこりと笑って答えた。

 最初とは打って変わっての柔らかな雰囲気の中、ウルルは話を変えようと明るい声で「それよりも!」と叫んだ。


「今はエルーナの言ってた怪物さんを探すんだろ? エルーナ、何か思い出したか?」

「あ、あの、確か、レンさんのような黒い服を着ていました」

「黒い服って言ったら、クレセだよな」

「そうねェ。子供が大好きなクレセだから、助けていそうねェ」

「レイジアなら、隣室にいるぞ」


 レンは本を持ったままの手で、左の壁を指差した。


「クレセ、今は何やってるかな?」

「恐らく、飴を食べているのだろう」

「ああ~」「間違いないわァ」

「飴、ですか?」


 納得しているウルルとメデューサとは反対に、エルーナは瞬きを繰り返した。

 行ってみたら分かるからと、レンと別れたエルーナは、ウルルとメデューサと共にすぐ隣の二○六号室へ行った。ノックをすると即座に、扉が開いた。


 出てきたのは、棒付きの飴を口にくわえた死神だった。クレセンチ・レイジアはいつも通りの黒いマント姿に、フードで顔の上半分を隠していた。

 背中に大鎌を背負てはいなかったが、霊感などが無いものが見ても、十分に死神だと分かる格好をしていた。口にくわえた飴が、その分異常に目立っている。


 クレセンチは口から飴を出して手に持ち、エルーナに話し掛けた。


「あれ? お客さんか?」

「初めまして。私は天使のエルーナ・フェルメールと言います」

「おう、俺は死神のクレセンチ・レイジアだ。よろしくな。友好の印に……飴でも食うか?」


 クレセンチはそう言って、颯爽とマントから新しい棒付きの飴を取り出した。

 エルーナはそれを笑顔で受け取った。


「ありがとうございます。とてもおいしそうですね」

「おお! こんなに喜んでもらえたのは久しぶりだ!」


 クレセンチは感動によって、大げさに思えるほど打ち震えていた。

 ウルルはそれを見て、にやにやと笑いながら尋ねた。


「なあ、クレセ、お前、部屋で何してたんだ?」

「何って、飴を食べていた」

「それだけ?」

「それだけだよ。それだけで至福のひと時だからな」


 クレセンチがさも当たり前のように言うため、エルーナにはおかしかった。

 死神なら、エルーナも天国で会ったことがあるが、クレセンチのように見た目と行動に意外性のある者は初めてだった。


 ウルルがエルーナの事情を話すと、クレセンチも口をむうと曲げて、思い出そうとした。しかし、残念そうに言った。


「たぶんそれ、俺じゃないな。覚えていない」

「そうですか……」

「なあ、その怪物さんって、飴をあげたか?」

「いいえ、あげてません」

「じゃあ、違うな。間違いない」

「また飴かよ」

「判断基準がおかしいわねェ」


 ウルルとメデューサが指摘したが、クレセンチは素知らぬ顔だ。

 ふと、エルーナがぽんと手を叩いた。


「そうです! 思い出しました! 怪物さんは、クレセンチさんのように顔を隠していました!」

「ええ? 顔を隠していた?」

「変わってるな、そいつも」

「たぶん、クレセとワタシには言われたくないと思うわァ」

「でも、何で顔を隠してたんだ? 仮面をかぶっていた? 包帯を巻いていた?」


 クレセンチの言葉に、エルーナは必死に思い出そうとした。


「そういう物では、無かったような気がします。だからと言って、なんだったのかはよく思い出せませんが……すいません」

「そう落ち込まなくてもいいさ。そのうち思い出せるって。ほら、飴でも食べて元気だしな」

「もう飴はいいよ」


 ウルルは呆れてそう言うと、二本目の飴を受け取ろうとしているエルーナを押し出していった。


「ああ! ちょっと、ウルル!」

「ごめんね、クレセ、私たち、一階で作戦会議してくるわァ。協力ありがとうねェ」


 メデューサの言葉通り、一行は階段を下りてホールへ着いた。

 そこで、「カウンター出してないのかよ」とぶつぶつ言って歩いている、濃い茶髪に青紫の瞳をした吸血鬼のユーシー・ゲネラルプローベと行き当った。


「あ、ユーシー。来てたんだ」

「おい、ウルル、カウンターはどうした?」

「自分で出しといて。はい」


 ウルルはカウンターが置かれた、倉庫の二○七号室の鍵を渡した。


「客にやらせるのかよ……」


 ユーシーが嘆くようにそう言うと、目を丸くしたエルーナに気が付いた。


「ええと、どちらさんか?」


 ウルルはエルーナを紹介し、彼女がどうしてここにきているのかを説明した。


「はー、百年前の話か。それなら、俺じゃないよな」

「ユーシーが吸血鬼になったのは二十年前だからねェ」

「間違いありません! この人です!」

「へ?」「は?」「まァ」


 エルーナがユーシーを指差して叫び、みんなの目が点になった。


「そんな訳ないでしょ。時間がおかしくなるって」

「そうそう。俺が百年前に……え、俺、百年前にいたの?」


 エルーナの断定口調が気になって、ユーシー本人も混乱していた。

 エルーナは慌てて、言葉を付け加えた。


「す、すいません、説明不足で……。あの、ユーシーさんの背格好が、怪物さんによく似ているのです」

「そうなのか?」

「ちょっと、ユーシー、背中を見せてよォ」

「こうか?」


 半回転して見えたユーシーの背中を、エルーナは穴が開くほど見詰めた。

 ユーシーは背中に真剣な視線をひしひしと感じ、妙に緊張し始めた。


「ええ、手を引かれながら見た、あの背中にそっくりです」

「じゃあ、ユーシーの身長と怪物さんの身長は同じくらいってことか?」

「服装も似ているのかしらァ」

「こういう、黒い背広だったの?」


 ユーシーは自身の背広の皺を直すように引っ張った。


「背広、だったのかどうかはよく分かりませんが、でも、よく似たような服かも知れません」

「良かったな、エルーナ! 手がかりがたくさん見つかったぞ!」

「はい! ウルルさんとメデューサさんのお陰です! ありがとうございます!」

「エルーナの思い出そうとする努力のお陰よォ」


 女性三人は、ホールの中できゃっきゃと盛り上がっていた。

 それを尻目に、ユーシーは一人で倉庫へ向かっていた。


「結局、カウンターは俺が出さないといけないのか……」
















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