花の章


あのクリスマスイブの夜から一ヶ月が経っていた…


浩之の傷は癒え、ほとんど回復しつつあった…


「ただいま…浩之ご飯食べた?」


「素子…まだだ、カレー作っておいたよ」


浩之はカレーをテーブルにおく


「浩之は料理上手ね…わたし全然だめ…」


「素子…おれは料理人だったから」


「そうか…女性も作るのがうまいかな…」


「素子みたいに素材が良くないとダメだな…」

「うまいこといっちゃって…」


お互いに顔を見つめて笑う二人は冗談を言い合う仲にまでなっていた


さらに二週間がすぎた…

(出ていくよ…素子すまない…おれは同僚を包丁で刺殺した指名手配犯…故意でなくとも…このままいるときみに迷惑がかかる…今きみが好きだ…愛してる…でもダメだ)


浩之がバッグに荷物をつめおえたとき…ドアが開く

……

素子が目の前に立っていた


「素子…仕事じゃなかったのか?」


「そう…仕事よ」


素子は内ポケットから黒い手帳をだしかざす…


「素子…きみは…どうしてあの夜おれを捕まえなかった?」


すでに素子の目からは涙が流れている…


「そうよ…わたしは血も涙もない女刑事よ…でも大怪我で子犬を守ってるあなたをどうしろというのよ」


「素子…」


「愛してしまったの…あなたを…」


「おれは殺人犯だ…」

「自首して…浩之

今なら情状酌量の余地あるわ」


「素子…」


「わたし待つわ…あなたが出てくるときまで」


どちらからともなく抱き合う二人は熱い口づけをかわす


「行ってくる…」

「行ってらっしゃい…」


ドアを開けると白い雪が一様に…

それはまるで天使の羽根のように二人には見えた…


月の章へつづく


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