第8話〜一難去ってまた一難〜後編
「と言うことで、亜美には一人で図書館だよりを作ってもらう。これは委員長からの命令だ。」
そう、荒療治とは 一人で作業をさせる と言うものだ。今まで批判や罵倒してきたのは、チーム 所謂、団体戦だったからだ。失敗すれば、怒り爆発も避けられないが、上手く成功すれば性格の改正になる(はず)。
「やだよ。あんたやれよ。愛しの文香と協力してやれよ。」言うと思った。だが、そう来るのは想定済みだ。
「でも…でも、言わせてもらったら…あれだよ、委員会の時 指示出すだけだろ。それなのに、文句言うのは違うんじゃないの?」そう、今回は亜美自身にそれに気づかせるのが第一の目的だ。
「それとこれとは、違うだろ。指示出すだけじゃねぇよ。仕事もしてるよ。」自分の非を認めないってか。いい根性だ。
「本当に仕事してんのか? 他の委員も采香も証言してたぞ。指示出し人間だ ってな。」
ちょっとだけ、盛らせてもらう。計画成功の為にな。
「わかったよ!作ってお前を 委員に仕事が出来るって見せつければいいんだろ!」うむ。6割ぐらいイメージ通りに行ったな。
三日後、亜美が僕に紙切れを渡してきた。一瞬 果たし状かと思ったが違う。カラフルに印刷された紙だった。タイトルには「図書館だより」といてある。
「ふん。これで満足か?ダメ委員長。」
まだこいつは懲りてないのか。どれどれ…
うむ。カラフルに女の娘らしく分かりやすいプリントだが、肝心の本については一切触れられていない。なんじゃこりゃ…
「おい。これどこの委員会の発行だ?」
「図書委員会だよ。見てわかんねぇのかよ。」
少しばっかし追い討ちをかける。
「じゃあなんで本についての記事がねぇんだよ。」
いつも長舌の亜美が言葉に詰まっている。
「お前 いつも指示出しだけだろ。団体で協力してないだろ? 今回、お前に頼んだ理由は幾つかあるが 協力する ってのを知って欲しいのも理由の一つだ。」 そう伝えると、亜美はふるふると震えだした。
「私だって…私だって…グスッ…指示出して…皆から…グスッ…頼ってもらって…嬉しかった…でも…グスッ…今…祥から…グスッ…言われて…違和感に…グスッ…気づいたの…グスッ…」泣かせる気はなかったんだが、まさか泣くなんて…でも本人が気づいたならいいかな。
「うん うん。誰だって全能じゃない。皆 気づけるから学べるんだよ。」と少し意味の分からない事を言うと亜美は涙を拭いながら、はにかんでこう言った。
「もう…グスッ…何言ってんの…ふふっ」
彼女の笑顔を見たのは、いつぶりだろうか?
でも、やっぱり可愛いな。横からの視線が少し痛いが…
「じー…」文香止めてくれ…そのヤキモチは俺を苦しめる…
「じゃあ、協力の有り難みに気づいたなら、ここの二人と協力して、完成させようぜ」
うん! そう言って亜美は、笑顔でパソコンの前に座った。
「いいのですか…?亜美さんに 主体的にやらせて…」文香は、亜美に聞こえない様に聞いてきた。
「いいんだよ。あれが、あいつのいい所なんだよ。さ あいつに協力しようぜ。」そう言うと、文香は頷き 二人で亜美が座っている所に駆け寄った。
数日後、亜美は同学年の委員に謝罪した。俺は、そこまでしなくても…と本人に言ったが、亜美は前を向いてこう言った。
「いや、これは私なりのケジメだから。」
流石、カッコいいな。俺は背中を叩き こう言った。
「おっ そうだな。そういう所、嫌いじゃないよ。」
謝罪後、委員達は罵るでも、貶すでもなく 泣き出す委員もいた。采香に至っては、すぐに駆け寄り、肩を抱き ごめんね…ごめんね… と繰り返した。
謝罪後、亜美は今まで通り指示を出しつつ、協力して 今まで見せなかった、笑顔を見せながら…
「じー…」だから文香…そのヤキモチは、俺を苦しめる…そこで、少し笑いながら こう言ってみた。
「なんだ文香、俺と亜美にヤキモチか?」
すると顔を赤らめ、こう言った。
「いやっ…そんな…そんな…ンンッ///」
まったく…本当可愛いな… こんな日々が続けばいいのに…ん?何か忘れてる様な…
「あ゛!考査!…三日前じゃん!…助けて!文香お姉様!」
先程、あんなに照れていた文香も やれやれ と言う目で僕を見てる。何やってんだ、この委員長は…
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