第14章 文化祭と過去と……2

「なんだ、このガキ!! イッ!!」


 幼い俺は、女性の額掠めて切り付ける、女性の額からは、真っ赤な血が流れ出る。

 女は額を抑えた後、手についた血を見て笑い出す。


「うぅ……痛っいねぇ~」


 女性は幼いを俺の方を睨む。

 危険を感じた母さんは、俺の方に向かって来ようとするが、スーツの男に突き飛ばされてしまう。

 もう一人のスーツの男は、姉さんを捕らえて離さない。


「気が変わった……ガキ二人は連れて行く。女は殺しな」


「やめて! 私はどうなっても良いから!! 子供たちに手は出さないで!」


 必死に懇願する母さん。しかし幼い俺と。姉さんはスーツ姿の男に押さえつけられてしまう。

 母さんも突き飛ばされた際に怪我をして立てない。

 そして、男の一人がスーツから何かを取り出して、母さんに向ける。

 女性は抑え込また幼い俺の方にやってきて、ニヤリと笑う。


「いいかい、よく見てな」


 女性は幼い俺と姉さんを押さえつけていた男と変わって、姉さんと俺を押さえつける。

 そして、もう一人の男もスーツから何かを取り出し、二人でそれを母さんに向ける。


「やめて! お母さんになにするの!」


 姉さんは大声でそう叫ぶ。

 幼い俺は、混乱して状況がつかめない。


バーン バーン


 二回大きな音がした、幼い俺は、すぐにその音が、男たちが母さんに向けていた物から下事に気が付いた。

 そこで、幼い俺は、男たちが母さんに向けていたものに気が付く。

 拳銃だ。実物を見たことが無かった幼い俺は、すぐに気が付かなかった。


「ママ!!」


 姉さんの鳴き声が聞こえる。

 俺は母さんの方を見た。

 母さんは、血まみれで倒れていた。

 父さんと同じく、動かないし、何も話さない……。


「見たかい? あんたが余計な事をしたせいで、ママは死んじゃったよ」


(僕のせいで……)


 幼い俺は考えた。

 自分がこの女に向かって行かなければ、母さんは死ななかった。

 自分が、ナイフを手に取らなければ、母さんは死ななかったと……。


「あんたは私の顔に傷をつけたんだ。あんたは楽には殺さないよ。いくよ」


「ママ! パパ!!」


 姉は泣きじゃくりながら、父さんと母さんを呼ぶ。

 しかし、もう二人は答えてはくれない。

 俺と姉はそのまま連れていかれた。

 後に残ったのは、狂ったように笑う、女性の声だけ。


「どうするんですか? このガキども」


 スーツの男の一人が、幼い俺と姉さんを縛りつけながら言う。

 女は車の助手席で、タバコを吸いながら笑って答える。


「決まってるでしょ? あの薬の実験に使うのさ、良いモルモットが手に入ったよ。しかも丁度、性別も分かれてる。楽しい楽しい実験の始まりだよ」


 幼い俺と姉さんは車でどこかに連れていかれる。

 目隠しをされて、どこに向かっているのか分からない。

 口もふさがれ、声を上げる事も出来ない。

 時間が過ぎるのが遅く感じた。ようやく一時間たったであろうかというところで車は止まった。


「アジトの場所も考えて欲しいもんだよ、全く」


 またしてもあの女の声が聞こえてくる。

 視界が少しだけ明るくなるのを感じる。どうやら光の強いところらしい。

 幼い俺と姉さんは、車から降ろされ、男たちに抱えられながら、歩いてどこかに連れていかれた。


「ほら、新しいおうちだよ~」


 連れてこられたのは、古い畳の敷かれた六畳ほどの部屋だった。

 かび臭い匂いが鼻を刺激する。


「あんたらは、今日からここで生活するんだ。大丈夫、ちゃんと食事は与えるよ~。せっかくのモルモットに死なれちゃ困るからね~」


 そういって女は部屋を出て行った。ドアには鍵が掛けられ、中から開ける事が出来ない。

 部屋の中は薄暗く、高い天井に小窓が一個あるだけ。

 布団も一応あるが、随分古くて、もうほとんどペラペラ。


「ママ……パパ……」


 姉さんは泣いていた。

 幼い俺は、泣くことが出来なかった。

 自分も泣いてしまったら、姉さんに心配をかけると思ったからだ。

 それから、幼い俺と姉さんの地獄の日々が始まった。

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