第22話
昼休みの出来事は確か・・・・・
俺が紅葉ちゃんの所へ行き勝手にファンクラブ会員ナンバー00にされた。
そしてどこかに連れ去られたらしい。
記憶がなくなぜ俺がここにいるのか分からない。
しかも縄で縛られ宙吊りにされながら大勢の人に囲まれているのか分からない。
俺は何をされるのか分からない恐怖と寒さに耐えられずにいた。
そのときだった。
多分体育館の放送室であろう場所の扉から一人の先輩らしき男の人がやってきた。
「君が我エンジェルの御兄弟であり我紅葉様ファンクラブ会員ナンバー00の太陽君だね」
何とか歌劇団の公演を見ているかのようにやってきた。
胸ポケットにはバラが一厘入っている。
何とか歌劇団の公演を見ているとかっこよく見えるのだがこの人がやって入れもちっともかっこよくない。
「そうです。私が太陽です」
ドリフ何とかの何とかけんのようにやってみたのだが・・・・・これがまったくウケなかった。
その場の空気までを壊してしまった。
申し訳ない気持ちと恥ずかしさのあまり顔がリンゴのように赤くなっていた。
「それで俺をどうする気だ。煮るなり焼くなりしてもおいしく何かねーよ。それよりあんた誰なんだ」
「申し訳ない。自己紹介がまだでしたね。私は三年F組の・・・・・」
同学年らしき男の人はその場で宙返りをした後バラを口に銜え決めポーズをとっている。
いやいや決めポーズは良いから早くなのれよ。
「喜田雅弥(きだまさや)だ。そしてこのMFCの会長さ。よろしく頼むぞ太陽君。あ、気軽に雅弥と呼んでくれ」
喜田雅弥ってどこかで聞いたことがあるような、ないような。
MFCって何かも気になるな。
「太陽君の事を肉なり焼くなりなんてしませんよ。私たちはMFC会員ナンバー00である太陽君から紅葉様の情報を聞きたいだけなのだ」
要するに紅葉ちゃんたちと話しているときに俺を何らかの方法で気を失わせ縄で縛りつけ中吊りにして情報を聞こうとしているわけだ。
「その通りだね。太陽君。君の推理には驚いたよ。いとも簡単に見破られるとは思いもしなかったのさ」
いや、誰だってこの推理くらいは出来るさ。
頭で考えていたことを読み取れる雅弥君のほうがすごいと思いますけど。
「それでは教えていただこうかね」
この流れだから声に出ていましたけど何て言われるのかと思っていたのだが本当に雅弥君は俺の脳内を読み取ったのか。
「た、太陽君。君は先ほどから何を言っているのだね?そういう事は脳内で喋りたまえ」
あ、声に出していたのですね。ごめんなさい。
「それは良いから早く教えてください」
「あ、あのまず下ろしません?頭に血が上りそうなので」
雅弥君はすまなかったと謝りバラを縄めがけて投げ縄を切った。
そのせいで俺は頭から落ちてしまった。
打ち所が悪ければ俺確実に死んでいたな。
「やだよそんなの。タイちゃん死んじゃやだよ」
「大丈夫死んでないから。このようにちゃんと生きてます」
みんな悲しくなってくれるのはうれしいがモコみたいに帰って来た時に心配もしてほしかったものだ。
「ってか太陽。喜田君って校内で有名なあの喜田君?」
「多分。その喜田君が分からないから何とも言えないけど」
雅弥君って有名だったんだ。
だからなんとなく聞き覚えがあると思ったのか。
でもそんな有名な人がどうしてそんなに紅葉ちゃんを好むのか不思議だ。
「喜田君はスポーツ万能で頭も良くて上品でそのうえイケメンなのです。そのため校内の女子生徒から人気なのです」
「女子の中ではファンクラブもできているほどの人気だよ。タイちゃんこれテストに出るよ」
完璧すぎるくらいのすごい人だったんだ。そんな人と話せたことはなんという幸運だろうかとでも思っておくか。
「はいはい。さぁみんな続き行くよ。話の途中で話しかけないでね。っとどこからだっけ?」
本当に忘れてしまっていた。
最近物忘れが酷いんだよな。
「太陽さんが落ちてしまったところです」
「太陽が落ちてからどうなったの?」
それは、それは確か大変なことに・・・・・
「あ、そうそう。MFCって紅葉様ファンクラブの略らしいよ。なんかもっとカッコいいのが良かったよね」
「それは聞く前からわかっていたよです」
「「「そんなことより早く続きを教えるのよ」」です☆」
なぜモコだけそんなに輝いて見えるのか・・・・。
それはそうと置いといて、続きだね。
確か・・・・・・
「いててて。いきなり何すんだよ」
あまりの痛さについつい大声を出してしまった。
そのせいで多くの生徒の背筋が同時にピーンとなったのが分かった。
「いきなり上の縄を切ってしまったことには謝ろう。しかし下ろせと言ったのは太陽君。君の方だよ」
そうだそうだと鋭い視線が飛んでくる。
下ろせとは言ったのは確かだが下ろし方と言うもものが・・・・。
でもまぁあのままだったら頭に血が上って死んでいたかもしれないからな。
ん?みんなは何をしているのだろう。
雅弥先輩は数人の女子生徒たちに囲まれながら紅茶らしきものを飲んでいる。
残りの生徒はその姿を懸命に脳内保存ディスクに保存している。
おいおい。
俺の事を呼んでおいて無視ですか。
「ってか巻き付けている縄もしっかりとって」
脳内保存ディスクに保存していた数名の生徒が動き出し縄をほどいてくれた。
「ありがとう。それで紅葉ちゃんの情報を提供しろと雅弥君たちは言っているんだよね?」
その瞬間この場にいる全員の目が輝いて見えた。
早く言えと言わんばかりにある生徒は俺の目の前で胸の前でお願いをするかのように手を合わせ前かがみでお尻を左右に振っている。
まるで犬がおねだりをしているかのように。
雅弥君はと言うと相変わらず何人かの女子生徒と一緒に紅茶らしきものを楽しんでいる。
雅弥君が楽しんでいるときに本当のことを言っていいのか分からないが俺の目の前にいる犬がおねだりをしているかのような感じの生徒のためにも言うことにした。
「雅弥君たち聞いてくれ。僕は紅葉ちゃんの情報を話すことは出来ない」
誰もが驚いた表情をしていた。
俺の目の前にいる犬がおねだりをしているかのような感じの生徒はなぜだと言わんばかりに胸ぐらあたりをつかんできた。
「なぜ太陽君は話せないのか理由を聞かせてくれないか」
「それは・・・。紅葉ちゃんと出会ったのはここ最近なんだ。遊園地で友達と遊んでいるときに出会ったんだ」
雅弥君はため息をつき紅茶らしきものを一口飲んでから言った。
「な、なぜそんなウソを平気で言えるのか。もったいぶらなくていい。早く話してくれ」
「嘘は一言も言ってない」
何言ってるんだこいつ。みたいな目で見てくるのはやめてほしい。
すべて真実を話しているだけなのに。
しかし、こんな作り話のような話をすぐに信じてくれるとは思ってもいなかった。
予想内の反応だが・・・・
パリーン。
雅弥君は紅茶らしきものが入ったコップを手から滑り落とすとは思わなかった。
カップを落とした手は震えていた。
「それはどういう事だね?詳しく説明していただこうか」
俺は紅葉ちゃんとの出会いなど俺の知っていることをすべて話した。
そしてDNA鑑定をしようとしていることまでもだ。
雅弥君はこのことをすんなりと受け止めてくれたのであろうか。
検査結果を教えてくれと言い捨てこの場からどこかへと行ってしまった。
ほかの生徒たちはと言うと、何人かの生徒は紅葉ちゃんの情報がもらえなくて泣いている生徒もいた。
そして、俺に殴り掛かってくる生徒もいた。
胸ぐらをつかまれ冗談は顔だけにしろよなどと言ってくる生徒もいた。
キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。
お昼休みの終了五分前だと知らせるチャイムが鳴った。
すると胸ぐらをつかんでいた生徒や殴り掛かってきた生徒たちはスッと立ち上がり俺を持ち上げドアの向こうへと俺を投げた。
地獄のような場所から解放されたのは良いのだが投げないでほしかった。
「それからは教室へ向かって今に至ると言うことです」
みんな何やってるのバカ。とでも今にも言いそうな雰囲気を出している。
「何やってんのよバカ。タイちゃんはバカなの?バカバカバカバカバカ」
「そうですよです。喜田君を悲しませるなんて最低ですよです」
「そうだよ。太陽。喜田君を悲しませたってことは・・・・・」
「ことは?」
緊張感がなぜか高まる。
「「「女子生徒を敵に回したのと同じだよ」」」
雅弥君ってそこまで人気があったのか。
喜田雅弥恐るべし。
と、言うか三人そろって左手を腰に当て右手は一指し指を立て俺に向かって突きつけその右手前かがみの姿ってどんな憧れるシチュエーションだよ。
この状況は脳内保存ディスクに保存しておくとして、雅弥君を悲しませてしまったし何かしないとな。
このままじゃ俺この学校に居づらくなっちまう。
「そういえば太陽。DNA鑑定だっけ?どうするの。」
雅弥君たちに捕らわれていたせいですっかり忘れていた。
三人とも協力してくれるみたいだけど何をどうすればいいのか全くわからない。
唾液をもらうにしろいくら女の子同士だからってもらえないと思うし。
「そんなの簡単じゃん。タイちゃん目を瞑って」
言われるがままに目を瞑った。
「桜さん。本当にやるのですかです」
「やめた方がいいって」
「絶対私がやるんだから」
「私がやりたいのに・・・」
最後に夏美が何かを言ったが声が小さかったのかあまり聞こえなかったがやられない方が良いものなのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます