第20話

「太陽お兄ちゃーん。どこなのじゃ?太陽お兄ちゃーん」

小学生ぐらいの身長の女の子がお兄ちゃんを探しているらしい。

俺と同じ名前の人がいるなんて珍しい。

俺の住むこの街には俺しかいないかと思っていたのだが意外といるもんなんだな。

トイレから出て来た俺はそんなことを思いながら歩いているとその女の子がこっちに向かって手を振り駆け寄ってきた。

そして俺のズボンを軽く握り写真と俺の顔を見比べている。

「あ、太陽お兄ちゃんだ。私のこと覚えているのかなのじゃ?」

「え、え~と。ごめん覚えてないや。多分人違いだと思うよ。迷子センターにでも・・・・・」

「迷子じゃないのじゃ。太陽お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなのじゃ」

俺は小さいころからこの街で暮らしていて今まで兄弟なんかいたことがなかった。

だからこの子が妹だなんていきなり言われても妹歌だと思えないが・・・・なぜこの子は俺の事を知っているのだろう。

そしてなぜ俺の幼い時の写真を持っているのだろうか。

色々と気になることがあったのでとりあえずこの子を連れてみんなの所にでも行くことにした。

「太陽お兄ちゃん。おなか減ったのじゃ。あれが食べたいのじゃ」

焼きそばだ。

最近食べてないしおなかが減っているようだし買ってやるか。

「おばちゃん、焼きそば二つ。」

おまちどおさまと出来立ての焼きそばを三つ持ってきてくれた。

一つはおばちゃんのサービスらしい。

優しいおばちゃんで良かった。

焼きそばを食べている間にでも色々と聞いてみることにした。

「そういえば名前なんて言うの?」

「本当に太陽お兄ちゃんは何も覚えてないのじゃな」

女の子は焼きそばをかけこみながら言う。

「本当ゴメンね」

「何年も会ってないのじゃ。忘れていてもしょうがないのじゃ。私の名前は紅葉(もみじ)なのじゃ。」

可愛い名前だ。

名前に似合うように髪は赤と黄色が程よく混ざっている色だ。

長さも長くなく短くもなく顔立ちに似合っている。目もお人形のように丸くてかわいい。モコに並ぶくらい可愛い。

「紅葉ちゃんは今日どこから来たの?」

「遠く離れた街なのじゃ」

「抽象的だね。具体的には?」

と聞くと分からないらしい。

ほかの質問も抽象的にしか教えてもらえなかったが名前だけは聞けた。

焼きそばも食べ終わったので三人の元へ帰るとするか。

いやそれにしても焼きそばを二つもたいあげるとはどれだけおなかを減らしていたのか。


夏美たちの所へと向かっているときモコがくれたレーダーが反応した。

タクティスは全て倒したはずなのになぜ反応するのかわからないが反応するかぎり行くしかない。

しかし、紅葉ちゃんを一人にしておくわけにはいかないがここから夏美たちのいる場所は離れているため一度向こうに行くには時間がかかりすぎてしまう。

戻っている間に誰かが襲われたりしたらどうしようかなどと悩んでいるとき紅葉ちゃんが

「敵が出現したのじゃ。早くいくのじゃ。もたもたする時間はないのじゃ」

と言い残しレーダーの反応と同じ方向へ走って行った。

戸惑いを隠せないまま俺もタクティスの所へと向かった。


タクティスが現れたところは遊園地の駐車場の近くにある公衆トイレの近くだった。

龍の形をしたタイプではなかったのでてこずらずに行けそうだ。

しかし、量が多いのが厄介なところだ。

紅葉ちゃんはいきなり敵が来たと言った時はびっくりしたが今はもっとびっくりしている。

それは・・・・・

「何千年にわたり眠り続けカードとなって蘇った白龍(ホワイトドラゴン)よ我の力となるのじゃ。」

黒い炎・・・・・いや白い炎に身をまとい、俺たちと同様に変身したのだ。

初めに少し黒い炎が見えたのはなぜだろう。

「太陽お兄ちゃん私の戦いを見ていてほしいのじゃ」

紅葉ちゃんは手に息を吹きかけた。

ここからじゃ聞き取れないが何か呪文を唱えているみたいだ。

すると紅葉ちゃんの右手には銃が出て来ていたのだ。

黒い銃だ。

ブラジルのトーラス社が開発した大型リボルバーであるトーラス・レイジングブルの形に似ていてカッコいい。

紅葉ちゃんは手慣れた勢いで次々にタクティスを倒していく。

その姿はまるで湖に浮かぶ白鳥のように美しく、百獣の王と呼ばれるライオンのように勇ましい。

数十体ほどもいるだろうタクティスを一人で三十体ほどまで減らしていた。

弾丸はタクティスの頭部を正確に打ち抜いている。

まだ一度も外していないだろう。

これならお祭りの射的は紅葉ちゃん一人で全ての景品を一人占め出来そうだ。

なんて考えていると

「タクティスって全て封印したはずだよね?」

桜も駆けつけたようだ。

「そのはずだけど・・・・・」

「ってかあの子は誰なの?」

「うん。トイレから戻っている間にですね・・・・・」

「長いよね?説明はあとでみんなが揃ってから聞くことにする。今は私たちも戦おうよ」

そうだな。

紅葉ちゃん一人に任せきりにするのはおかしいな。

俺たちも戦士なんだ。

「アーカイブの記録を頼り氷河よ我に力を」

「アーカイブの記録を頼り水の精霊よ我に力を解き放て。水龍(アクアドラゴン)よ我とともに戦え!」

二人は青い光に包まれながらタクティスたちに向かっていったのだが、タクティスは一体もいなかった。

「太陽お兄ちゃんフレイタスをすべて私が倒したのじゃ。どうだすごいだろ」

紅葉ちゃんは一人で数百といたタクティス? え? フレイタス? を倒していた。俺は紅葉ちゃんの頭を撫でてやった。

「かっこよかったよ。」

銃の持っている手で頭をかき始めた。

照れているのだろう。

「もっと褒めてもいいのじゃ」

俺は紅葉ちゃんの頭がぐしゃぐしゃになるくらい頭を撫でてやった。

「でも、なんで紅葉ちゃんは銃をもってるの?あと、フレイタスってなに?」

紅葉ちゃんは照れ顔から真剣な顔になって言った。

「太陽お兄ちゃん。助けて欲しいのじゃ。フレイタスって言う怪物から追われているのじゃ。今戦ったのはどれだけいても倒せるのじゃが、龍みたいなやつは強くて倒せないのじゃ。だから、太陽お兄ちゃん。紅葉を守って欲しいのじゃ。」

なぜ追われているのかを聞いてもわからないらしいが、フレイタスを倒すことはかわらないし、紅葉ちゃんとも共に戦うことにした。

紅葉ちゃんは手持ち花火のような笑顔を見せた。

俺がまた頭をなでると銃の持った手を頭に当て打ち上げ花火のような笑顔になった。

その時桜は銃に見覚えがあることに気づいた。

その銃は・・・・・春翔(はると)が使っていた銃に似ていた。

「この銃ってどうやって手に入れたの?」

桜は気になって仕方がなくなって聞いてしまった。

「こいつ誰なのじゃ?太陽お兄ちゃんの仲間なのか?」

コクリとうなずくと

「そうなのか。私の能力は一度見た能力をコピーする能力なのじゃ」

「ってことはこの銃は誰かが使っているのをみてコピーしたってこと?」

コクリとうなずいた。

いつ見たのかなど色々聞いていたが桜の質問はすべて覚えてないで返されてしまった。

戦いも終わったので三人で夏美たちの所へ戻ってきた。

知らない小学生くらいの女の子を連れで帰ってきたので二人はすごく驚いている。

どのくらい驚いているかというと何かのスポーツで毎年最下位がいきなり完全優勝した時くらい驚いている。

そして妹だといきなり言われてもう二人は目が点になっている。

それだけならまだ良いのだが、桜の質問に抽象的にしか答えてくれなかったのがショックらしく桜は一人いじけている。

「太陽。これはどういう事だ。いきなり妹です。何て言われても困るよ。長年一緒にいたけど妹となんてあったことないよ」

「でも、いいじゃないですか。太陽さんの妹超可愛いですし。紅葉さんなら私大歓迎なの~」

モコが壊れ始めている。いつもの~です。のしゃべり方まで変になっている。

しかしこの状態になったら止められそうもない。

「私ははんた・・・・・・んな、なによ。」

紅葉ちゃんは夏美の事をじっと見つめている。

紅葉ちゃんはその後いきなり目を閉じ、そしてすぐに目を開いた。

何か夏美に仕掛けたのかと思う感じに夏美が

「しょうがないわね。今回だけよ。」

と、紅葉ちゃんが妹であることを認めたのだ。

何て言う力の持ち主なのか紅葉ちゃんは。

紅葉ちゃんが連れできたのかって感じの○○のことや紅葉ちゃんのことを話した。

するとみんな紅葉ちゃんを守らないとねと一致団結した。

そのとき、紅葉が不気味な笑いをしたのは誰も気づいていなかった。

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