第18話
夏が終わり、秋が始まった。
昨年の今ごろはギガントスとギガンレスと文化祭の時に戦ったのを覚えている。
あの頃は本当に忙しい毎日だったことを昨日のことのようだ。
マラソン大会の最中に倒したのだが、あの二人?二体?は強かった。
でも、
冬の特訓や夏美とのいざこざも懐かしい。
この学校での思い出はタクティスとの戦いで変な思い出ばっかりだ。
ほかの人にはない思い出は一生モノなのだろう。
そして、
あれは本当に驚いた。
幼なじみで夏美のことなら何でもわかると思うぐらい一緒に過ごしたからの不意打ちで初めはいつものように何か悪ふざけをしているのかと思っていたがキスをしてわかった。
本気だってことが。
正直に言うと嬉しかった。
まぁようするに夏美からの告白に応えた。
嬉しいことでしかないが、街中でベタベタやられるとはずかしい。
初々しいカップルだと初めはカタコトなカップルだったり、お互いしゃべれないカップルが多いように思うが俺たちの付き合いは長くそんなことはなく、いつもの日常と変わらない。
桜とモコにも気づかれることなく二週間がたったある休日。
俺たちは初めてのデートで水族館に行く。
とても有名な水族館らしく、前々から二人で行ってみたいと夏美に言われていた場所だった。
その日は初めて一日が短く感じた。
確か夏美との待ち合わせの時間は九時だったのだが夏美が来たのは―――――
「おはよう。ゴメン待った?」
「全然待ってないよ!ってか今来たところだし」
などとみも知らずカップルはほざいている。
はっきり言ってそんな感じじゃすぐに終わるだろうなど思いながら待っていると
「おはよう。ゴメン待った?」
まさか夏美もこのセリフで来るとは思ってもいなかったが、さっきから同じセリフを聞いていたため俺も、
「全然待ってないよ!ってか今来たところだし」
と言ってしまった。
今までけなしていた皆さんごめんなさい。
桜は桜丘に行く時ときはフリフリのスカートで来ていたのでそんな感じではないと想像していたが夏美はショートパンツに英文が書かれているショートパンツが隠れるほど長い白いTシャツに赤いネルシャツ。
今までの夏美と出かける時は半袖半ズボンとボーイッシュな格好なので一緒声が出なかった。
「やっぱり女の子ぽい格好は似合わないよね」
慌ててかわいいよと言ってしまったがここまでありきたりの行動なのが本当に申し訳ないし、先ほどまでけなしていた皆さんに心から謝りたい。
「それじゃあ行こうか」
俺は夏美に手を差し伸べ、水族館へと向かった。
向かうと言っても水族館の目の前で待ち合わせをしているのでなのかお互いいつもと違う感じで緊張しているのかなのかは分からないが入場ゲートをくぐるまで会話がない。
「わーぁ!すごいよ太陽。お魚がいっぱい泳いでるよ」
そりゃあ当たり前だろ。
水族館に行って魚がいない方が驚きだわ。
「あそこにタッチプールがあるよ。行ってみようよ」
夏美が子供のようにはしゃいでいる姿はとても可愛く見とれてしまい行くよと引っ張られるまでずっと夏美の事を見ていた。
夏美はそのこと見気づいていたのか下を向きながら歩いている。
タッチプールは、 海から水温調節をしないでそのまま引き入れているらしく手を入れるとひんやりする。
その中には ヒトデやナマコなどサンゴ礁に囲まれた浅い海にすむ生き物に実際に触れることができるらしい。
夏美がヒトデに恐る恐る触る。
「きゃっ」
夏美がちょこんと人差し指で触るとヒトデは丸まった。
丸まり方があまりにも面白く二人は見つめあいながら笑った。
砂と同じ色をした隠れ上手なハゼもいるらしいが俺たちは見つけられなかった。
タッチプールを後にすると熱帯魚のエリアとなった。
そこには色鮮やかな魚が数多く泳いでいる。
むかしばなしに出てくる浦島太郎はこの魚たちのようなきれいな魚に囲まれながら竜宮城でご飯を食べていたのかと思うと羨ましい。
「見てみてカクレクマノミだよ」
「本当に夏美はカクレクマノミが好きだよな。あの映画を見てから」
あの映画とは皆さんもよく知る有名なカクレクマノミが主人公のアニメ映画ですよ。
水槽にほっぺたをぺったりと張り付けた夏美の笑顔は三冠王をとったプロ野球選手よりも最強だ。
プロ野球選手と夏美の笑顔を比べたのは我ながらくるっていると思うがそのくらい今は最高な時を過ごしているのだけは分かる。
「カクレクマノミはホントにかわいいなぁ~。あ、太陽ほらこっちに二匹並んで近づいてきてくれたよ」
「ホントだかわいい。まるで俺たちみたいな二匹だな」
二人は笑顔をこぼしている。
「知ってる太陽?カクレクマノミってね、 スズキ目 スズメダイ科クマノミ亜科に属す―――」
カクレクマノミについて語り始めるのは良いが何回も同じことを自慢げに話されてもといつもは思うのに今日は違う。
同じことしか言ってないのになぜかこう胸のあたりが温まるような・・・・
「って太陽?私のはなし聞いてるの?」
「うん。聞いてるよ」
しばらくして夏美がカクレクマノミについて語り終わると同じ水族館に来ていたお客さんや係員さんから夏美は拍手をもらっていた。
照れている夏美もかわいいが俺も恥ずかしくなり逃げ出したくなった。
そのことに気づいた夏美は俺の手を引き次のエリアへと向かった。
熱帯魚のエリアを抜けるとこの水族館の名物であるサメやマンボウなど大型の魚の水槽が俺たちを待っていた。
水族館の目玉となるこのエリアには人が、カップルが大勢いる。
はぐれないようにと夏美の手をギュッと強く握った。
人の波に流されながらも離さず歩いていると夏美とつないだ腕が引っ張られる。
どうしたのかと思い人をかき分け、夏美のところに行くと目をキラキラさせながら口をぽかんと大きく開けでっかい水槽を眺めていた。
「みてみて太陽。ジンベイザメってエサを食べる時って水面に顔を向けて周りの水と一緒に飲み込むんだね」
「夏美!ジンベイザメのエラを見てみて。飲み込んだ海水だけエラから出してるよ」
ホントだ!と目をキラキラさせている夏美と俺に係員さんが近づいてきて、
「エラから海水だけ出していることによく気がつきましたね。もし良かったらお二人様エサやり体験をやってみませんか?」
俺たちは普通じゃ出来ない体験が出来るならとエサやり体験をすることにした。
係員さんについていき普段は通ることの出来ない裏の道を通りやってきたのはでっかい水槽の上に来ていた。
臭は少しドクドクしい強烈な臭はだが、水槽の上から見る魚はいつも見ている顔とは違う顔が見えて面白い。
「このバケツに入っているエサをサメの口もとを狙って投げてみてください」
バケツの中には魚がたくさん入っていた。
魚を一匹、一匹手に取って口もとを狙って投げるという簡単そうに思えるエサやり体験だったが以外に難しい。
何が難しいかというと濡れているボールを投げるのと同じで手元で滑ってしまい遠くに飛ばすことが出来なかった。
体験が終わると二人とも難しいけど楽しかったと言ってサメやマンボウなど大型エリアを出た。
その後、深海魚などの魚をみた。
水族館の展示が終わり、お土産の場所へと出た。
「太陽。何かおそろいのもの買わない?」
いいよと返事するとありがとうと夏美は俺の肩に頭を乗せてきた。
周りの人からはリア充爆発しろなど変な目で見られているが皆さんリア充ですよね?
初めにキーホルダーコーナーのところに向かった。
キーホルダーコーナーということもありとても人気だった。
しかし、ちょうどまえで見ていた人がほかのコーナーに行ったので俺たちは一番前で見ることが出来た。
イルカやサメやマンボウとこの水族館の主といえる魚の形をしたキーホルダーや、魚が掘られたキーホルダーが売れているようで数少なかった。
夏美はそのキーホルダーを手に取ってかわいいねと言うがすぐに片付けてしまう。
「太陽は何気にったのある?」
「俺は二匹のイルカが泳いでいる姿をほってあるこのキーホルダーかな」
夏美は何か違うと言うと立ち上がりぬいぐるみのコーナーに行ってしまった。
夏美を追いかけぬいぐるみのコーナーへ行くと夏美は売れるのかというくらい変な人形を抱えていた。
「これをおそろいで買おう!」
それはブロブフィッシュというオーストラリア からニュージーランドにかけて分布する、カサゴ目ウラナイカジカ科の深海魚の一種で全身が粘液に覆われたゼリー状で、人の顔を思わせるユーモラスな容姿の魚だ。
俺はそれをお揃いで買うのかと思うと気が引けるがこれがいいと言われちゃ断れないよね。
ブロブフィッシュのぬいぐるみを二つだけ買うのは嫌だったので、お菓子を買うことにした。
桜とモコには二人で水族館に来ていることは内緒にしているので二人には買えないけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます