第17話

それから毎日俺たち四人は桜の木の下でお昼を食べている。

三人から四人となって話すことも今まで以上に増えた。

そしてみんなの笑顔も増えていった。

「太陽。またお弁当を付けているよ。もおしょうがないんだから」

夏美は俺の鼻の頭についていた米粒を舐めてとってくれた。

その姿を見た途端桜はタイちゃんのバカと言いビンタされた。

なぜビンタされたのかは分からないがみんな笑っているしまあいいか。

こんな日々が続くことを俺たちは願うのだった。

「あ、そうだみんなこれあげる」

夏美はスカートのポケットから黄色い石と茶色い石を取り出した。

黄色の石はモコへ、茶色の石は桜へ渡された。

茶色と聞いて変な石を想像したかもしれないが今桜の手の中にある石はとてもキラキラ輝いている。

ダイヤモンド富士ののように美しい。

「ありがとなっつん」

「ありがとうございますです。とてもかわいいですです」

そして夏美はスカートではなく胸ポケットに手を入れた。

そこから取り出したのはピンク色でハート形の石だった。

「キレイです」

「はいですです」

桜がモコのように語尾にですを付けてしまうくらい綺麗なものだ。

まあ要するにそれほど人の心を動かすほどすごく綺麗な石なのだ。

「これは太陽にあげる」

桜は石の意味に気づいた。

そして、太陽が夏美から受け取った時はとても悲しくて涙が出そうだった。

しかし、桜は諦めないと心の中で叫んだ。


それから数か月ドラグレスはギガントス兄弟以降現れない。

顔が同じタクティスも現れない。

平和な日常が戻っていた。

今は夏美からもらった石をペンダントにしてみんな首にかけながら海に出かけている。

陽もくれ気温も低くなり始めたので帰ろうとしたとき

「ああああああああああああああああああああああああああああああ」

「桜うるさい。周りの人に迷惑でしょ」

「いやいや、太陽。太陽も迷惑になりそうなことしてじゃん」

夏美のツッコミに反論できなくてゔ~とうなっている。

太陽は海で泳いでいるときに人の目を気にせずバタフライで泳いでいたのだ。

夏美は思い出したかのように海の家にちょっと行ってくるねと言って走って行った。

「それでどうしたですです」

桜は真剣な表情で戦いは終わったのかもしれないと言った。

初めは何を言っているのか分からなかった。

しかし、夏美が桜にあげた茶色の石には赤や緑の石のように人型のリザードマンか何かが中にいるように見える。

モコがもらった黄色の石を見ても同じことが言える。

数か月も過ぎてレーダーに反応がなく、ここに封印された二つの石がある。

もしかしたら本当にすべて終わったのかもしれない。

桜は慌てた顔をして赤色の祠がないかと海水浴を楽しんでいる他のお客さんに聞いて回っていた。

すると、赤色の祠ではないが緑色の祠があることが分かった。

「そこしかない。行こうみんな」

桜は一人で緑色の祠へ走っていくのを俺たちは追った。

「タイちゃん、はやくはやく。ここに持っている石をすべて入れて」

訳が分からなかったが置いてみた。

「え、何で何も起きないの?前は、前は・・・・」

「前って何ですかですです」

桜はすべての事を話した。

二人はなんて声をかければいいのか分からなかったが急がなくてはいけないことは分かった。

するとモコが

「あ、それならやり方を知っているです。太陽さんがもらったハート形の石を祠のどこかにはめるです。本当なら祠には必ずついているはずなんですけどです。この場所は以前、誰かに荒らされ私たちの住む町にドラグレスを隠し何かをしようとしたのではないのかです」

「そうよ。よく気づいてねモコちゃん」

そこには海の家に行っていたはずの夏美の姿があった。

「夏美、いつからそこに?」

「初めからずっといたわ。この祠を荒らしたのは私の・・・・・パ、お父さんなの。パ、お父さんは赤いドラグレス(ソルシオン)にめちゃくちゃにされた知らない街があることを知ってからドラグレスについて研究していた。するとね太陽。この街にも昔、ドラグレスの伝説があったの。しかもね、太陽の・・・杉並の一族がそのドラグレスを倒しこの祠に封印したとこのノートに記されていたの」

夏美は海の家から持ってきたのだろうと思われるかわいらしいカバンの中から一冊のノートを取り出した。

そのノートの中にはきれいな字で夏美が言ったことと同じことが記されていた。

「なっつん。タイちゃんに緑色の石を渡したのも」

「そう。お父さんからの命令なの」

夏美はうつむき、悲しい顔をしている。

「今までずっと私たちを騙していたってことですかです」

夏美は必死で校訂をしたが二人の心には届かなかった。

「みんな。本当にごめんなさい。危ない思いをしていることは分かっていたけどみんなに本当のことを言うのが怖かったの。ごめんなさい」

泣き崩れていく夏美を太陽は後ろから抱きしめる。

「泣くなよ。もう終わったことだ。みんな死なずにちゃんとここにいる。だからいいんだ。実際少し俺らも楽しんでいたし」

桜もモコもにっこり笑顔で夏美たちに抱き着いた。


「それじゃあ封印しようか。・・・・・ってさっきできなかったんだよね。どうしようか」

夏美はノートの最後のページを見た。

するとそこには、ハートの石をはめる場所が記されていた。

太陽はハートの石を記されていた場所にはめ、桜はノートに記された順番どおりに石を置き、モコは何か呪文らしきものを唱えている。

桜が最後の石を置き終わるとその場はまぶしい光に包まれ祠の中から人が出て来た。

祠から出て来たから女神か何かかと思ったのだが・・・・・え、黒髪ショートカットの女の子?女性?が現れた。

身長は中学生の俺らよりか高いがロリッぽい顔立ちだ。

ロリ女神は俺たちにこう言った。

《私と戦うにはまだ若すぎる。次の機会にまた会おう。》

《あなたの願いを逆に叶えてあげる。願いはいくつでも》

桜は以前の街では魔導書から文字が出てきたりして同じ質問をされたがここではなぜ人が出てきてこうなったのか分からなくなっていた。

今回は何もないのかと確認したがこの魔導書は石をゲットしたことも分かっていないらしくいまだに破れたままで何も置きそうもない。

太陽が俺たちに願いはないと答え去ろうとしたときロリ女神が中指を立て願い叶えてやる言ってんだから何か言えと襲ってきた。

四人は追わてて祠を出て大笑いした。


夏美からすべてを聞き、帰ろうとした時夏美は突然

「あ、そうだった。ちょっと太陽を借りていくね」

そういって夏美は太陽を一人岩場に連れ出した。

そこは赤くなった空と海が一番きれいに見える場所。

「いろいろ迷惑かけてごめんね。本当はこんなこととかなく前から言いたかったんだけど・・・・・」

そして夏美は太陽の頬にキスをし、

「好きです」

と、まんべんな笑みを浮かべ夏美は言った。

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