第15話
桜は転校生だ。
中学一年の夏休みを過ぎたころにやってきた。
初めは大人しく、一人ぼーっとしていた。
そしていつも悲しそうな顔をしていた。
桜は親の仕事の事情でこっちに来たと聞いていてが・・・・・。
大宮 桜。
この名前は親がつけてくれた名前ではない。
好きだった人の苗字と仲間の名前を借りたものだった。
私、大宮桜がこの町に来るまでの名は、
性格は今と変わらない天真爛漫な美少女だ。
私は以前他の地区でタクティスいやそこではビーストと言われていたモンスターを倒していた。
そのモンスターはドラグレスとは違い熊の形をしたヴェアハノンと言うモンスターだった。
私とともに
春翔。中称ハルくんは
さくら。中称サクちゃんは大きな
力をくれる六つの魂もすべて集めた。
三人はとても仲が良かった。
ビーストが現れないときでも三人でよく城について調べたりしていた。
そんな楽しい日々が続くと誰もが思っていた。
いや、思っていたかった。
神様はなぜ私たちを選んだのか。
そして、なぜこのような存在を作ってしまったのか。
その時は毎日のように考えていた。
それはサクちゃんがソルシオンとの戦いで戦死してしまったからだ。
サクちゃんは悪いことなどしていない純粋でおしとやかな少女だったのに。
誰からも恨みなどを持たれない私の掛け替えのない心友が戦死してしまった。
その後もソルシオンは泣いている時間もないくらい暴れたのだ。
私たちは戦い続けた。
サクちゃんと集めてきた魂。
そして平和を守るために死ぬものぐぬいで戦い続けた。
サクちゃんが戦死する間際にソルシオン目がけて投げ突き刺さっている槍のお蔭で何とか封印することが出来た。
それから一か月が過ぎたころ私の持っている魔道書、ハルくんが持っている銃の本に新しいページが生まれた。
そこには
《私と戦うにはまだ若すぎる。次の機会にまた会おう。》
なんだよこれ。
そう思った。
苛立ちもした。
そしてその言葉と他に
《あなたの願いを逆に叶えてあげる。願いはいくつでも》
と。二文が浮かび上がってきたのだった。
私はしばらくして親の仕事の事情でここいのり市へ引っ越すことになった。
私の願いはハルくんとずっと一緒にいることと大切な人を失いたくないだった。
引っ越すことでハルくんと会うことが出来なくなった。
ハルくんは私と別れる前に魂とソルシオンを封印した石を赤色の祠に封印した。
封印するのが遅くてハルくんは右腕が動かなくなったり、私は左目が見えなくなったりはしたけど数日で治った。
そして私の両親はしばらくして他界した。
私は叔父に引き取られることになった。
しかし、私は新しい家にいたいと駄々をこね、一人で住んでいる。
たまに叔母がうちに来るという約束の下でだ。
ギガンレスとの初めの戦いの時にも叔母は来ていた。
その時はこっぴどく怒られた。
私は何もできない最低な女だと思った。
何もかもが嫌いになった。
そして自分の名前までも嫌になった。
ネーミングセンスのない私は好きな人の大宮という苗字と心友のさくらという名前をもらった。
大宮桜として新しい人生をほかの学校で歩むと決めたのだった。
そして、いつかハルくんに会いに行こうと決めていた。
しかし、その夢も夢で終わってしまった。
ハルくんは病気で亡くなった。
だから編入した当初は毎日悲しい顔をしていた。
しかし、ある少年と出会ってから桜の学園生活いや人生は変わっていったと思っていたのだ。
彼のお蔭で好きな野球のマネージャーになることも出来た。
友達もたくさん出来た。
彼に出会えて本当に良かったと思い次第に彼に惹かれていった。
しかし、現実は甘くなかった。
人生を変えてくれた少年も聖剣を振るう戦士となってしまった。
もしかしたら彼も同じ体験をさせてしまうのではないかと毎日心配で仕方がない。
しかし、そんな不安を振り消してくれる。
彼の太陽のように明るい笑顔。
そして戦う姿を見ていると同じようにはならないと思っている。
☆
「いたぞ。行くぞ桜」
「うん。いくよ」
太陽は力強く走っていった。
その時桜は決めたのだ。
過去の事はまだ太陽には内緒にしておこうと。
「あれ?ソルシオン倒れてるよね?」
すごく苦しそうである。
よく見ると背中に大きな槍が刺さっていた。
「うん。何でだろう?」
桜はわかっていた。
小鳥遊さくらが放った槍がソルシオンをまた動けないようにしていた。
サクちゃんの槍のお蔭で私たちは助かった。
あの時みたいになってしまうのが怖くて正直ソルシオンと戦いたくなかった。
「新しい技を試してみたかったんだけどな」
太陽は残念そうだった。
「またいつかの機会までとっておこうね。今は封印だよ。」
「そうだな。アーカイブの記録を頼り我に力を。封印されよソルシオン。そして我とともに戦へ。長き眠りにつけ!」
ソルシオンはまた深い眠りへとついたのだった。
桜はさくらに言いたいことがあった。
「サクちゃんありがとう。そしておやすみ。」
石は元に戻った。
「良かったね。タイちゃん」
「そうだな。早くモコのところに戻って再検査だな」
二人の間には笑顔でいっぱいだった。
モコも心配していると思うので二人は足速にモコの元へと戻った。
「はやいですねです。お疲れ様なのですです。ですが何故無傷なのですかです」
太陽はモコに無傷な理由を話した。
簡単にいうと、追いかけていたらなぜか瀕死状態にすでになっていたと。
二人はなぜ瀕死状態になっていたのかと考えていた。
しかし、頭の上にははてなマークがたくさんありすぎて答えは見つかりそうもなかった。
しかし、桜にはさくらへの感謝でいっぱいであった。
その後石は念のためモコに見てもらった。
異常はないと診断された。
「封印出来て異常もないことだし炎の力も試してみようぜ」
「わかりましたです。しかし封印したばっかりですし気をつけてくださいです」
「了解!いくぞ!アーカイブの記録を頼り火の精霊よ我に力を解き放て!
太陽は赤い光に包まれ変身した。
「最後です。お願いしますです」
「はい。頑張ります。アーカイブの記録を頼り火の精霊よ我に力を解き放て!FLAME DANCE」
聖剣は炎に包まれた。
そして火花も散っている。
花火みたいで個人的には好きだ。
しかし、桜にまた地味だと言われた。
少し落ち込んだ。
別に地味であれ相手がこの必殺技を苦手とするならいいと開き直っていた。
桜は太陽に地味だといった際に杉並春翔のことを思い出した。
春翔も地味であった。
モードが変わると太陽みたいに服装が変わることもない。
武器が変わることもない。
ただ、モードが変わると使える技が変わるだけ。
必殺技もない。
太陽も地味だが春翔の方が地味だったと思い吹いてしまった。
「何笑ってんだよ」
太陽に怒られてしまった。
しかし、なぜか嬉しかった。
今好きな人のほうがカッコいいことに気づいたからであろうか。
桜にも分からなかった。
「異常はなさそうです。これでテストは終了です」
「え、これで修行終了?」
そんなはずはない。
桜が立てた計画でもないのだし。
「終了なわけないです。ここからが本番なんですよです。」
とか言ってもモコは甘いのだろう。
「腕立て、腹筋、スクワット、背筋十回。七セットその後丘の周りを十五周それから・・・・・はい。以上です。日が暮れるまでに頑張って下さいです。夕飯は私がつくっておくです。」
モコは意外と鬼教官であった。
俺らは強くなるために必死にメニューをこなした。
何とか夕飯までには間に合ったが、喉を通らない。
というよりも食事中に二人は寝てしまっていた。
「やりすぎちゃいましたです☆でもよく耐えてくれたです。二人ならもしかすると・・・・・」
モコも二人を寝袋の中に入れた後寝たのだった。
次の日二人は筋肉痛であまり動けない。
しかしお昼にはここを出発しなくては家に帰れない。
苦痛に耐えながらも片づけをしている。
テントはやっぱり俺の仕事らしい。
テント以外を片付け終わるとあとはヨロシクと言って川へ水遊びに行ってしまった。
遊びに行きたかったが我慢してテントを片付けることにした。
三十分くらいだろうか片づけ終わったと同時に二人が帰ってきた。
少しばかり早いが帰宅することにした。
家に着いたのは予定より一時間早い十六時であったが四時間以上もバスや電車は苦痛なものだ。
足もパンパンになっていたのでモコより先にお風呂に入らせてもらうことにした。
太陽が洗い終わり湯船で疲れ切った体を休めているときだった。
お風呂場のドアが開きモコが入ってきたのだ。
しかもタオルケットなしで。
そして小悪魔的な感じで、
「待ちきれなかったですです。テヘ♡」
テヘ♡じゃなくて。
男子中学生がお風呂に入っているのに発育真っ盛りの体を・・・・。
湯船は赤く染まっていった。
それから数か月が過ぎ三月も終わりが見えている。
三年生は卒業し今は春休み。
ソルシオンを封印してからタクティスやドラグレスは何ヶ月も出てこない。
出てこないならそれで良い。
このまま平和でいてくれれば嬉しい。
「まだ敵がいるならかかって来い。強くなって全体倒してやるぞー」
太陽は自分に言い聞かせ一人学校へ走っていく。
その後を桜とモコが追いかけていく。
太陽、桜、モコの三人の戦いはまだまだ続く。
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