第12話

マラソン大会も無事?に終わりテスト期間となった。

部活動はテスト期間中で休みなので勉強会を開いた。

本来なら誰かの家や図書館で行うものなのかもしれないが夏美が

「誰かの家だと遊んじゃうし、図書館だと逆に静かすぎてやる気が出ない」

と言うので桜とマラソンを開始した初日に寄ったファーストフード店で勉強をすることにした。

テスト期間中は午前中で授業が終わるため十二時前にお店に入ることが出来た。

「いらっしゃいませ~」

と明るく朗らかでクリーム色の髪の店員さんが窓際でテーブルも広い席に案内してくれた。

「やったー。広い席だー」

「本当ですです。日当たりも良く最高ですです」

このような店でこの席のような場所を座ったことがないのだろうかと言わんばかりに嬉しがっているが周りのお客さんのご迷惑になりそうなので少し注意をした。

するとシュンっとなってしまい周りの男性客からの冷たい視線を感じた。

「桜はどこ行ったんだ?」

「サクちゃんならあの店員さんと何かしゃべっているよ」

夏美が指を指した方を見ると、明るく朗らかでクリーム色の髪の店員さんと何か話していた。

俺らの視線に気が付いたのか桜はゴメンねと手を合わせながらほこりを立てない程度に駆け足で来た。

「ごめんごめん。お待たせ。もうみんな何頼むか決まった?」

まだ誰も決まったいないだろうと思ったのだが二人はもう決まっていた。

「あれ?もう二人とも決まってたの?」

「当たり前です」

「来店する前から何を食べるか決めてたし」

ねー。と息の合った・・・・・って早く決めなきゃ。

「もしかして桜も?」

え?そうだけどと首をかしげる。

メニューを見て選んでいたらすべて食べたくなってしまったので目のあった夏美が食べるものを食べることにした。

「決まった?」

「決まってないから夏美と同じの食べるよ」

夏美はあっそっと言うような顔をしていたが桜とモコは夏美だけずるいというような顔をしていた。

「ご注文をお伺いします」

「明太子ソースシシリー風を二つお願いします」

「いや三つ」

「四つでお願いしますです」

「あ、あとドリンクバーを四つお願いします」

桜とモコも同じだったのか今変えたのか分からないけど四人とも同じ明太子ソースシシリー風を頼むことにした。

「ご注文を繰り返します。ご注文は明太子ソースシシリー風を四つとドリンクバーですか?」

店員さんのにこやかな笑顔には値段などつけられないほど綺麗で見とれてしまった。

店員さんがいなくなったと同時にみんなからの冷たい視線を感じた。

何が悪かったのか分からないが心の中で謝った。

ドリンクバーを一人でもらいに行くことになった俺は、一人寂しく順番待ちをしていた。

みんな何でもいいと言うので桜のが炭酸にならないように気を付けて持っていくことにした。

他の二人はいつも飲んでいるし大丈夫だし。

四つのコップをテーブルへ置くとそこには明太子ソースシシリー風が四つ置いてあった。

やっぱりファミリーレストランは侮れないな。


お昼も食べ終わりみんな集中して勉強に取り組んでいる。

「あーもー。なんで日本人が英語を覚えなきゃいけないの?日本人なんだから日本語だけでいいじゃん。太陽もそう思わない?」

思いません。

「最近は海外へ派遣されることとかも良くあるし覚えていて損はないと思うよ。てか今後、日本が英語を話すようになったらどうするんだ?」

「海外に行けなんて言われても飛行機嫌いだし行かないもん。日本が英語を話す時代になるなんてそんなことあるわけない。私がそういうんだからないよ多分」

おいおい多分ってなんだよ多分って。

はいはいとあしらいながらも何が分からないのかと夏美のノートを見てみると・・・・。

同じく英語を勉強していた桜とモコのノートも見てみると同じ間違いを三人ともしていた。


問題一

『それはオレンジです。』を英語で表せ。

桜とモコの解答

『That's orange.』

夏美の解答

『That's orenzi.』

これはまあ可愛い間違いだ。


問題二

『これはいのりのリンゴです。』を英語で表せ。

正しい解答

『That's inori's apple.』

三人の解答

『That's an apple of a prayer.』

え?

「これカッコ内に収まらないです」

「普通収まるように問題って作るものだよね?」

「普通そうだよね」

そこまで分かっているならこの解答が違うことに気づこうよ。

あの解答を訳すと『これは祈りのリンゴです』って意味になって全く違う意味になるから。

何で祈った?ていうか逆に何で祈りだけは知ってんだよ、とツッコみそうになるのを僕は飲み込んだ。

他の問題も見てみると同じようにかっこより多い単語を書いているなどミスが多い。

この三人ダメかもしれない。

そんなことを思いながらも点数を取ってほしいと教えていたのだが夏美は寝ていた・・・・・。


「あれ太陽。私よりも点数したなの?ダッサ。ってか合計点数いくつだよ」

集中力が切れ休憩をすることにした。

そこでみんなの点数を聞いてみると・・・・・。

「そんなにいったら太陽さんが可哀想です」

「タイちゃんは何点だったの」

「九十五点・・・」

この点数で落ち込んでいるのと驚いている。

まさに、鳩に豆鉄砲だ。

「まあ私は九十八点だけどね」

「国語は?」

「九十一点」

「社会は?」

「六十三点」

「理系の合計点は?」

「四十六点」

「夏美は毎回理系が足ひっぱてるよな」

夏美は不満げな顔でこちらを見てくる。

まあ俺は

国語 八十四点

社会 六十八点

理系の合計は五十二点と俺も理系が苦手なのだ。

まあ合計点数では二点勝っているからいいんだけど。

「やったです。二人に勝てる教科があったです」

「うちもあったよ」

モコは

英語 五十三点

国語 四十五点

社会 五十八点

理系の合計は百四十三点

桜も

英語 三十二点

国語 五十二点

社会 五十八点

理系の合計は百五十五点と理系が得意らしい。

「俺と桜。夏美とモコが合体したら五百点も手に届きそうだな」

何て冗談で言ったのだが・・・・桜は顔を真っ赤にしてどこかに行ってしまった。

そして二人は

「太陽(さん)のバカ」

と言ってビンタされた。

そのせいでほっぺたは赤くはれ上がっていた。


試験当日

「あれだけ勉強したんだから大丈夫」

何処からそんな自信が出てくるんだよ夏美は。

でも、当日までには文系だけはしっかりと点数取れるくらいは毎回勉強してくるんだもんな。

理系までやれば本当に学年一位も夢じゃないと思うんだけど。


率直に言おう。

今回のテストも俺が勝った(二点差で)。

高い順に言うと

杉並太陽 三百十二点

大宮桜  三百十一点

吉川夏美 三百十点

モコ   三百十点

の順番だった。

得点も近く、成績も上がっているし勉強会の成果はあったのかもしれない。

夏美と俺は桜とモコに文系を教え逆にモコと桜は夏美と俺に理系を教えてくれたおかげで成績が伸びたんだな。

テストがあるときはこれから毎回できるのなら毎回上がるかもしれないし楽しみだ。


それから日はたち、冬休みとなった。

俺は試験の疲れと毎日敵と戦って疲労が溜まってしまった。

そのせいで冬休み前の学校の数週間は気持ちも何もかもトゲトゲしていた。

みんなともろくに話していない。

周りからはイメチェンしたなどと言う会話をよく耳にするがそれは違う。

ただ単に学校に居る時が一番体を休められる場所だから無駄な体力を使いたくないと思っているだけだ。

俺のことを気にしてくれたのか夏美が家に来てくれた。

そして俺は夏美に酷い言葉をかけてしまった。

「お子ちゃまにはまだ早いのだよ」と。

なんて、最低だよな。

と、思うのはまだまだ先のことかもしれない。

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