水獲得 ⁉

第10話

文化祭は無事に終了し、それから二週間ほどすぎた。

プールサイドは地震でタイルが割れたことになっていた。

無様な負け方は今後一切したくない。

そう俺たちは誓って早寝早起き朝ごはんを心がけた。

健康な身体でないと思うように戦えもしないし。

そして今日から毎日ジョギングを行うことにした。

基礎体力は大切だとテレビでやっていたからだ。

「おはようタイちゃん。今日からジョギング頑張ろうね」

「おはようさくら。もうあんな負け方はやだからな。まずは体力をつけて、持久力を高めようぜ」

開始し始めた二人はペースなど何も考えずに思いっきり走った。

そのためすぐにばててしまいこんなのヤダと思い投げ出そうかと思ったがたまたま近くの電気屋さんでジョギングの番組がやっていて見てみると『ペース配分をするべし』と言っていたのでペース配分をしながら改めて走ることにした。

二人は一キロ走った頃だった。

桜のペースが遅くなってきた。

「大丈夫か?」

「ダメ。死にそう。少し休憩ちょうだい」

二人はその後近くのファミリーレストランへ向かった。

「何か食べるか?」

「うん。走ったらお腹減ったよ~。ゴチになります☆」

え、なにこのキラキラとした感じは。

「わかったよ」

これしか言えないよな。

「やったー!えーとね。私はこれとあれとそれとうーん。これも」

「あれやこれじゃわからねーつーの」

まぁよく食べるなぁ。

それでいて太らないなんて全国民怒るぞ。

「タイちゃんなら私のことわかってくれると思ってたのになぁ」

桜は下水道の溝に五百円玉が落ちてしまったくらい落ち込んでいた。

「あー。わかってるよ。冗談。冗談」

実際何が欲しいかわからないから適当なものでいいよな。

まぁとりあえず王道のトマトのピザとカルボナーラとスタミナになりそうな手羽先とドリンクバーでいいよな。

「すみません」

明るく朗らかでクリーム色の髪の店員さんが来た。

「お待たせいたしました。」

この店員さんに見覚えがあったが思い出せない。

「あ、あの以前僕と会ったことありますか?」

思わず聞いてしまった。

「お客様。申し訳ございませんがお客様とお会いするのは多分初めてです」

店員さんは困った表情を見せていた。

「すみませんでした。では、トマトのピザとカルボナーラと手羽先とドリンクバー二つ下さい」

「注文を繰り返します。ご注文はトマトのピザとカルボナーラと手羽先とドリンクバー二つですか?」

注文してからドリンクバーを桜の分まで取りに行って帰って来た時には注文した品が全てテーブルの上にあった。

改めてファミリーレストランの速さを実感した。

ちなみにメロンソーダーと昆布茶を持ってきた。

「は、早いね」

「本当だね。どっかの誰かさんとは違うね」

桜はちらちらこちらを見てきた。

「人におごらせておいて。あげないよ」

少しいじめてみた。

「すみませんでした」

すぐにショゲるところがまた可愛い。

「そうだ。あのさっきの店員さんに見覚え無い?」

「え?あの人?う~ん」

桜も知らない人かと諦めたその時

「あ、あの店員さん知ってるよ」

と言ってスマートフォンを取り出し一枚の写真を見せてくれた。

その写真には桜と桜と同じくらいの顔立ちの女の子と男の子がいた。

三人の後ろにはあの店員さんらしき人と他四人の女性の姿があった。

「私転校生じゃん。前の町に住んでた時に小学校の近くにあったカフェの店員さんだと思うよ。何で今ここにいるかは知らないけど、聞かないであげよう」

何で俺はあの人に見覚えがあったのか分かった。

初めて桜にあった時に今見た写真を見せてもらったことがあったからだ。

ありがとうと桜に言い、持ってきたものを渡すとなぜか引きつった顔をしている。

「食べられないものとかあった?あったらごめんね」

「え、うんん。大丈夫だよ」

そうは言うものも引きつったままだ。

悪いことをしたと思っていると

「食べられないものは一つもないんだけど・・・・・。炭酸が苦手かな。だからもし良かったらタイちゃんのお茶と交換してくれない?」

炭酸が苦手だったのか。

俺にはわからないが苦手な人多いんだよな。

次からは気をつけなきゃ。

「ごめんね。初めに聞いておけばよかったね。昆布茶で良ければ」

そう言って交換したが少し空気が重く二人とも話題が浮かばない。

お通夜のあとみたいだ。

その時だった。

カバンの中に入れていた聖書がスマートフォンくらいに小さくなり、いきなり光ったのだ。

光はすぐに消えた。

店内にいるお客さんや店員さんは今の光に動揺している。

光の発生源は分かっていないようでよかった。

「タイちゃん何したの?」

「何もしてないよ。突然これが・・・・・」

何かあるのかと中を開いてみると切れていたページが数枚戻っていた。

その中には火、風の取り扱い説明書が書いてあった。

「中に何が書いてあるの?」

とは言っても俺が知っていることしか書いていない。

「うーん。新しいことは何もかいてないなあ」

新しい発見は出来なかったものも、石を集めると聖書も元に戻ることはわかったから良かった。

しかし、他の必殺技などが書いていなのはなぜなのか太陽の頭上にはてなマークが並んでいる。


それから一週間過ぎた。

二人は一キロも走れなかったのに今では三キロも走れるようになっていた。

「体力がついてきたな」

「だね。マラソン大会が待ち遠しいよ」

桜も夏美なつみと一緒に昨年まではマラソン大会なんてこの世になくていい存在よねと二人そろって言っていたのが懐かしい。

あの頃の桜に聞かせてあげたいくらいだ。

しかし、マラソン大会は五キロもあるのだ。

まだまだ先は長いのだが・・・・・大丈夫かな。

大会は一週間後だし大丈夫だ・・・・・よね。


そして今日はジョギングの成果を試す日だ。

一週間前は三キロを完走することが出来たんだ。

今朝だって走ったし大丈夫だ・・・・・よね?

逆に走っちゃったからってことはない・・・・・よね?

「マラソン大会なんてこの世になくていい存在よね〜」

予想通りの言葉を夏美は言った。

「また今年もそんなこと言うのか?」

「だって。ただただ辛いだけじゃん。モコ説明してやんな」

なに威張っているんだ。

行事なんだからちゃんとやれよな。

「マラソンは軽いジョギング程度では健康には良いと言われていますが、マラソンは健康の害になることが指摘されているらしいですです。マラソンはすべてのスポーツの中で突然死が発生する数が最も多いと言われているスポーツなのですです。」

「ほらー。やらないほうが良いんだよー。ってあれ?桜は嫌じゃないの?」

そこには、何で嫌なの?と夏美に聞きたそうな桜がいた。

「私は平気だよ。何てったって最近ジョギングが日課だからね」

「意外」

嘘をついているな。私は見破っているぞ。的な目で桜を見るな。

桜は毎日真面目に走ってるんだから。

「モコは本当に凄いね。知識が豊富で羨ましいよ」

「ありがとうです。太陽さん。 mère《お母さん》は日本人なので日本の文化をよく教わったからです」

「「「モコってハーフだったんだ」」」

「C'est le Japon et une personne britannique de parentage mélangé(日本とイギリスのハーフです).言ってなかったですかです」

何を言っているのか分からなかったが、日本とイギリスをあらわす単語が聞こえたから、私は日本とイギリスのハーフです。とでも言っているだろう。

そう話している間に先頭はスタートしていた。

「俺たちも遅れを取らないように行くぞ」

やる気のない「おぉ」という声も聞こえたがとっとと走って行った。

桜も俺もジョギングの成果で、なんとか半分までは行けたが夏美はまだまだ見えない。

モコは長距離が得意らしく本来なら先頭集団についていけるらしいが夏美についていてくれている。

「二人を待つか」

「そうだね。四人でゴールしたいもんね」

待ってはいるものの一向に二人の姿は見つけられない。

「遅いね〜」

「倒れてはないと思うが・・・・・。少し心配だ」


そのころ夏美たちは―――――


「ぷはぁ~。おじいちゃんの入れてくれるお茶はホントおいしいわ」

お茶をして楽しんでいた。

いのり中のマラソン大会は近隣の商店街などを通る。

そのため自宅の前を通る生徒も数知らずといる。

夏美の祖父家はその中の一つの家だ。

祖父の家に上がり込んでモコとお茶と甘いお菓子を食べていた。

「マラソン大会の途中でお茶を飲めるなんて幸せ〜」

「こんなことをしていていいんですかです」

「大丈夫。バレはしないって。そう言ってももうそろそろ出なきゃだね。それじゃあおじいちゃん、私行くね。ありがとう」

「ありがとうございましたです」

「二人とも気をつけてね」

「「はーい」です」

二人はマラソン大会へと戻って行った。


「おそ〜い。本当何やってるのよ」

桜はしびれを切らしていた。

「あ、太陽たちじゃん。もしかして待っててくれたの?」

その声は二人には聞こえていなかった。

そして二人は走って行ってしまった。

「あれ〜行っちゃうの」

なぜならレーダーが反応してしまったからである。

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