楽しい文化祭

第7話

太陽たいようどこをほっつき歩いてたのよ?」

「ゴメン。ゴメン。ちょっとトイレに行った後に外の空気吸ってた」

俺は嘘をつくのが苦手なタイプだ。

「外の空気吸ってたってどうしたの?」

「人酔いした」

顔によく嘘ついてると書いてあると色んな人に言われるので心配して苦笑いをしてしまった。

「本当昔っから変わってないよね!昔から人が大勢いる所は本当苦手ね」

夏美なつみは嘘を見破るのが苦手だ。

相手が夏美で良かったと少し思ってしまう。

いや、嘘を見破れるのはこの場には多分誰もいないのかもしれない。

「あぁ。だからこれからもちょくちょく抜けるかも知れないがよろしくな」

「私も一緒にいようか?」

「大丈夫。大丈夫。一人の方が落ち着くから」

「わかった。あ、音源は私がやっておいたから」

「サンキューな」

持ち場に着くがやっぱりヒマだ。

何もすることがないが交代時間まで残り十分を切った。

あと数分の辛抱しんぼうなのだがその十分が異様に長く感じてしまう。

「太陽ひま」

「あと数分の辛抱だ」

「太陽ひま」

「あと数分の辛抱だ」

「太陽ひま」

「ってうるさい!何回同じこと言うねん」

とうとうクラス委員長の耳まで届いてしまっていた。

しかしお客さんはある意味怖がっていたのだ。

「終わるまで」

「いや、具体的に言わなくていいから。仕事やって」

ごもっともである。

「はーい」

ルーム長は仕事熱心だな。将来が楽しみだ。

「太陽君もね」

「了解」

そうこうしている間に時は過ぎ交代の時間になりチャイムが鳴った。

「うっしゃぁー遊ぶぞー」

夏美は交代のチャイムが鳴ると同時に大声を出した。

中にいるお客さんはお化けが脅かすよりもビックリしていた。


太陽たち四人はまず軽食を取るため食品販売の店へと向かった。

「私ほっとくが食べたーい」

夏美も可愛い間違えをするんだな。

ほっとくじゃなくてホットドックだろ。

夏美をからかってやろうと思い

「ほっとくってなに?ホットドッグじゃないの?」

「タイちゃんほっとくを知らないの?」

さくら、夏美に乗らなく良いんだぞ。

「桜まで何言ってんの?」

「ほっとくとはですね、韓国では主に冬季、間食系の屋台などで売られている、安価で庶民的な菓子料理だそうよです。一言でいえば、中に甘い餡が入ったホットケーキで日本の『おやき』に近い食べ物らしいです。韓国では人気のある屋台には行列ができるなど広く親しまれているらしいですよです。太陽さんわかりましたかです」

「「「おぉ」」」

本当にこの世の中にある食べ物だったとは。

それよりモコは何でこんなに知識があるのに客寄せパンダが分からないのが不思議だ。

「分かりやすかったわ。ありがとな!俺も食べてみたくなってきたわ」

今一まだ分からないがそう言うのがベストだと思う。

「よーし。ほっとく食べに行くぞ。私についてきなさい」

「「「おぉ」」」

夏美について行くとそこは韓国の料理なのか人気があり三十分待ちらしい。

「並ぶぞ」

夏美のこの一言で俺たちは三十分待つことになったのだが・・・・・。

「長い時間お待ちいただいたお客様、申し訳ございません。ほっとくは売り切れてしまいました。申し訳ございません」

俺たちのひとつ前の組で売り切れてしまった。


ほっとくは諦めて他の屋台を色々と周りお腹も満腹となった。

あとは遊ぶだけだな。

その時だった。

ガタガタガタと大きな揺れ。

そしてレーダーも反応を見せた。

しかも二つの反応がある。

多分あの二体だろう。

しかしどうしよう。

この場所で変身でもしたら夏美や他の生徒たちにばれてしまう。

あんまりばれたくない。

と、桜が良いものを持ってきてくれた。

タイガーマスクだ。

ありがとう桜。

でもなんでそんな物を持っていたのだろう。

疑問に思ったが、「行くぞ」と目で訴える。

地震が起きているのであまり夏美を動かしたくない。

だから夏美をモコに任せ、俺たちはその場から走り出した。


「アーカイブの記録を頼り忍者よ我に力を」

「アーカイブの記録を頼り風の精霊よ我に力を解き放て!緑龍サイクロンドラゴンよ我とともに戦え!」

緑色の光に包まれながらプールへと向かう。

やはりあの二体であった。

「意外と早かったなあ」

「急いだだけ無駄だ。この水の場で俺らが負けるはずがない」

勝てる気でしかないと言わんばかりの貫禄がある。

「そうは言うが二人とも俺たちに怖気ついて逃げているんだぜ?逆に俺たちがそんなやつに負けるかな?」

太陽は剣に今までと違う気を送った。

そして、二体を包み込むように竜巻を発生させる。

プロ野球のスタジアムを破壊できるくらいの竜巻だ。

ほんの数秒しか太陽が持たなかったがかなりのダメージを与えることは出来たはずだ。

「ゔああああああ」

多分ギガンレスのほうは叫んでいるがギガントスのほうは平然としている。

未だにどちらがギガントスか分からないでいる。

いや~似すぎやわ。

一卵性かなぁ?

「弟よ。自己犠牲をしてまで俺を守るとは、良いぞ。その根性」

傷ついて片耳が外れているほうがギガンレスと言うことはあっていたのか。

ならばギガンレスから片付けますかな。

桜も同じ思いであったらしく軽自動車くらいの大きさの手裏剣しゅりけんを投げつけた。

相手もこちらの攻撃を読んでいたせいかギガントスがギガンレスをかばった。

ややこしや。

見た目も名前の似すぎてこんがらがるわ。

ギガンレスはギガントスを抱きかかえた。

そして、

「兄者。大丈夫か?」

「何のこれしき。次は俺らだな」

お~い。ここれBLか?俺はそんなの望んでいないぞー。

と心の中でも突っ込めなくなるくらい凄まじいものが飛んできそうなほど怖いさっきを感じる。

そのくらい凄まじい光景である。

二体はプールの水を吸い込んでいる。

そしてその水を天に向かって吹く。

「おーい。俺たちはこっちだぞー」

天に吹いても自分たちにかかるだけで意味がないと思っていたのだが、

「バカめ」

「タイちゃん。上上。気をつけて」

上を見上げると野球ボールほどの大きさの水球が何個も降ってきた。

ドバババーン。

避ける隙間もないほどのたくさんの水球だ。

プールサイドはめちゃくちゃになってしまった。

桜の魔法のおかげで少しは耐えられた。

俺らもあれを全て受けていたら死んでいたかもしれない。

「はぁ。はぁ」

桜は魔法の使いすぎで疲れているみたいだ。

そして俺は、信号無視で飛び出したときに車を前にして、早く動かなくちゃいけないのに動けない時のような感覚に襲われている。

闘い続けて初めて恐怖を味わった。

「怖気つくのはまだ早いぜ」

しかしこのまま闘っても勝ち目はない。

ここは退散することにした。

すんなり逃げられるはずもないので俺は必死の思いで叫んだ。

「アーカイブの記録を頼り火の精霊よ我に力を解き放て!火龍ファイヤードラゴンよ我とともに戦え!」

赤い光に包まれ風から火へと変わった。

ただの火ではない太陽の桜を守るという魂がこもった火だ。

太陽は二体を炎で斬りつけようとした。

ギガンレスも水の球を打ってきた。

太陽は待っていたかのように球を斬りつけた。

すると、水蒸気が発生し辺りが見えなくなった。

「小賢しい真似を」

その言葉は太陽には聞こえていなかった。


太陽は水蒸気が発生してからすぐに桜を担いで逃げて行った。

そして今はプールから遠い校舎裏まで走ってきた。

「大丈夫か桜?」

「大丈夫。大丈夫。心配しすぎ。寝不足なだけだから」

昨日の戦い?と教室での戦いのダメージ大きかったのだろう。

しかし、昨日桜は戦ってないはずなのだが。

「教室での戦いで力いっぱい出してたもんな。大変だよな。一緒にいてやるからゆっくり休め」

桜は太陽に甘えて太陽の膝の上で深い眠りへと着いた。

実際太陽も睡魔に襲われていたが桜のためにもとたえて桜か起きるのをまった。

二人が逃げてしまい勝ち誇った二体は満足気にどこかへとかえってしまった。

太陽はレーダーでそのことを知りほっとため息をついた。

太陽は男だ。

そして今女の子が自分の膝の上で寝ている状況だ。

思春期の男ならこの状況で誰もが思うだろう。

襲ってみたいと。

「太陽? どこー?」

「桜さーん。どこですかです?」

二人が探しに来てくれたらしい。

太陽は少し複雑な気持であった。

しかし、襲っていたら後で痛い目に合っていたと思い感謝もしている。

夏美たちは俺たちの背後まで来ていた。

「あ、いたいた。あれ、二人でなにやって・・・・・んグググ」

太陽は夏美の口を手で隠した。

すると夏美は赤面したが桜の事を見つけすぐに冷静さを取り戻した。

「寝不足で倒れそうだったから寝かしてるんだから静かにしろ」

モコはニコニコ笑っているが夏美は少しムッとした顔をしていた。

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