第6話 心霊スポット

「深夜、心霊スポットに行って来たよ!」


学食の2階のテラスで、悦ひろとコセに話かけてきたのは、学科違いの女友達サヤカだった。

悦ひろは、怖い話に目がない。

それに夏休み直前。

このような話題には恰好な時期である。

なので、その一言に食い入るように飛びついた。


サヤカは夜中に同級生の男友達2人と共に、近場にある心霊スポットに夜な夜な乗り込んだという。

そこは、かなり有名な心霊スポットで、行けば必ずなにかしらの災いが起きるともっぱらの噂の場所。

更には、あの霊能力者、宜保愛子が潜入を断念したほどに最恐の場所だという逸話もあった。


「よくそんな恐ろしいところに行ったね。怖かった?大丈夫だった?」

「いや、そんなに〜。なにも起こらなかったよ。ほら今も元気でしょ?」


興味津々に質問するとサヤカは楽しそうに語った。

しかし噂にあるような怪異は全く起こらなかったとのことで、肝試しの経緯を淡々と聞いた。


「またそういう話あったら、教えてよね!では!」

「じゃあ、またね!」


案外、平気なもんなんだなぁ。

あの宜保愛子の逸話もデマかもしれないなぁ。

と思いながら悦ひろはコセと共に午後からの授業に備えた。


その話からちょうど7日が経った。

コセが、鬼気迫る勢いで教室に駆け込んでくると悦ひろに話かけた。


「今さっき、事故目撃したっけ!目の前で人が車に跳ねられてさ!しかもそれが、あのサヤカちゃんだったんだよ!大丈夫かなぁ…!!!」


通学中に交差点で信号待ちをしていたときの出来事だったという。

2人でサヤカの安否を心配した。

と同時に「祟り」の二文字が頭をよぎっていた。



翌日、包帯をぐるぐると左腕に巻いた彼女がいつもどおり学食にいた。

左腕を骨折したとのことだった。

悦ひろとコセが、挨拶がてら確認するも命には別状がなさそうだったのが何より。

本人も笑顔で「心霊スポットの呪いかな?」と、もうネタにもしている。

大したことがなくてよかったと2人は胸を撫で下ろした。

それにしても本当に、偶然であってほしいと願って止まない。

このまま他に何も起きなければいいのだが…。



そのサヤカの事故からちょうど7日後。

件の男子学生の1人が、スケボー中に転倒して、同じく左腕を骨折した。



それからまたちょうど7日後。

やはり、もうひとりの男子学生も階段で転倒して、同じく左腕を骨折したという。



その意味深な偶然の連鎖に周囲が騒然とした。

気づけば、心霊スポットを訪れた3人全員が、行った日から数えてちょうど一週間ごとに1人づつ順番に同じ左腕を骨折していた。

「行けば必ずなにかしらの災いが起きる」

その心霊スポットにまつわる噂が現実のものとなっていた。



マジもんじゃーねーか…。


身近な知り合いの恐怖体験を目の当たりにしてしまった悦ひろとコセは底知れぬ恐怖を覚えた。

なにがあろうともその心霊スポットには絶対近づかないと誓った。

例え遊び半分でなくとも。

触らぬ神に祟りなし。

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