第4話 ポルタ―ガイスト

まだちょっと蒸し暑い深夜のこと。

数日後に控える行事で配布する冊子作成の作業を同僚たちと遂行していた。


それにしても日をまたぐことになるとはなー。

と机の上で保管用の書類の原本を手に揃えているときだった。

悦ひろの焦点があいまいな左目ギリギリ視界に黒い動くものあり。


まさかゴキブリか?


と思い息をのみながら咄嗟に目を向ける。


スススー。


なんと机の上で書類などをまとめる黒いダブルクリップが右から左へと自走している。

しかも見始めてから10cmほど滑って止まった。


もう一回動かないかな?と思ってしばらく観察したが、以降動くことはなかった。


不思議なこともあるものだと悦ひろは今すぐこの衝撃を伝えたかったのだが、みんな忙しそうだだったので、黙ってそのまま仕事を続けた。



集中してがんばったかいあって、ようやく冊子が目標部数完成した。

最終チェックも完了!


「お疲れ様ー。終わった~。そう、言えばさぁ、さっき不思議なことあったけど、みんなドタバタだったから言えなかったわ」


「えっ?エツなにがあった?」

「エツくんなになに?」

「悦ひろさんなにがあったんですか?」

「悦ひろさん怖い話ですか?」


「怖いっちゃ、怖いかもしれないけど…。書類まとめてたらこのクリップが10cmくらいスーって移動したんだよね。ポルターガイスト!」


「気のせいだよ」

「疲れてるんだよ」

「机が斜めってたんですよ」

「エアコンの風ですよ」


その冷たい反応に悦ひろは

「ちくしょー誰も信じてくれない!えーいレッツポルタ―」

といじけながらダブルクリップを指ではじいて滑らしてみせた。


するとそれが、

「エツ!いいねぇ~それっ!!!」

という反応になって、いつのまにか、

「レッツポルタ―!」

と掛け声に合わせて、各々の手元にあるモノを動かすというノリに発展していった。

可笑しなテンションだ。


残業後の未明、みんながつかれていた。

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