第8話-名古屋の有名どころしか紹介しない観光雑誌は間違っている。

一日目の「擬似デート」を終えた中川 八熊は、早くも来週に迫った次回のプランを練っていた。

いわゆる王道なプランは今回の港エリアだが、名古屋にはもっと知られていない、素敵スポットが多く眠っている。

資料を漁りながらも、次回のプランを纏め終わった中川 八熊は、深い眠りについた。











集合場所は、砂田橋駅の改札口だった。

…砂田橋と言えば、地下鉄ホームを渡っている動画をUPして炎上した女子高生は元気だろうか。

…そんな事を考えながら改札口に立っていると、程なくして大高 和音が姿を現した。



「おはよう。エコきっぷは買った?」


「はい! 今日もよろしくお願いします!」


今日も眩しい笑顔を振りまく美少女 大高 和音は、嬉しそうにエコきっぷをこちらに見せる。


「とりあえずモーニングでも行こうか。」


そう言って向かったのは、名古屋市内の至る所にある「支留比亜珈琲」

名古屋市内の至る所にある、名古屋発祥の喫茶店だ。

モーニングサービスはもちろんの事だが、ランチやカフェタイムの利用では「カルボトースト」という重めの軽食も楽しめるのが魅力だ。



「…さて、今日のプランなんだけど…、メールでも伝えた通り、割と歩くけど大丈夫かな?」


「はい!スニーカーで来たので大丈夫です!」


そう言いながらトーストをかじる大高 和音は、中川 八熊が心配するまでもなく元気に溢れていた。

そもそもヒキニートの中川 八熊より、現役女子高生の方が体力があるに決まっている。


「じゃあ、今日行く所のパンフ渡しておくね。」


そう言って中川 八熊は、鞄から数枚のパンフレットを取り出す。


「水の歴史プロムナードと、恋の三社巡り。これが今日行く所だよ。」


「すごい!1回も聞いた事ないけどデートっぽい!!」


「名古屋散歩って感じのプランだね。会話の時間が多く取れて良いと思うよ。」


「じゃあ早速行きましょう!」


そう言ってコーヒーを飲み干す美少女に合わせて、中川 八熊もトーストの最後の一口を口に放り込んだ。



…しかし、水の歴史プロムナードも恋の三社巡りも聞いた事がないなんて…

…やはり有名どころしか紹介されない観光雑誌は、間違っている…。

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