[3] 反撃
ルーツク=ドゥブノ地区に集結した南西部正面軍の4個機械化軍団(第8・第9・第15・第19)はそれぞれ他の軍団がどのタイミングで反撃を実行しているか互いに把握しておらず、全く統制が取れていない状態でバラバラに突撃した。
6月26日、第26軍(コステンコ中将)はブロドイの南から第8機械化軍団(リャブイシェフ中将)のKV1とT34を先頭に立て、第57歩兵師団(ブリュンム中将)に襲いかかった。有効な対戦車砲を持たない第57歩兵師団はパニックに陥り、陣地を放棄して西方に敗走した。勢いづいた第8機械化軍団はそのまま北へ突進した。
6月27日、第8機械化軍団の第34戦車師団(ヴァシリーエフ大佐)が第11装甲師団からドゥブノを奪回した。
第6軍の第15機械化軍団もKV1とT34を保有していたが、ドイツ空軍の第71高射砲大隊が持つ8・8センチ高射砲の反撃を受けて大損害を被った。第15機械化軍団に所属する第10戦車師団のある大尉はこの戦闘について、次のように書いている。
「敵の砲弾は我が(KV)戦車の装甲を貫通できなかったが、履帯を破壊したり砲塔を吹き飛ばしたりする威力を持っていた。KV戦車は頑丈な車両だったが、速度と機動性に大きな弱点を抱えていた」
ドゥブノの北翼では、第19機械化軍団(フェクレンコ少将)が第1装甲集団の2個装甲師団(第11・第13)と第29軍団(オブストフェルダー大将)に反撃した。一進一退の攻防が繰り広げられたが、第1装甲集団の装甲部隊が態勢を立て直すと、第15機械化軍団の反撃は食い止められてしまった。
この反撃に参加するはずだった第5軍の第9機械化軍団(ロコソフスキー少将)は輸送用のトラックが不足していたため、部隊の集結が間に合わなかった。第9機械化軍団長ロコソフスキー少将は戦場のごく一部しか見ていなかったが、反撃が非現実的なものだと感じていた。
6月27日、第9機械化軍団は反撃に転じた。しかし第19機械化軍団との連携がとれず、多くの旧式戦車を失って撤退せざるを得なくなった。ロコソフスキーは再び攻撃するよう命令を受け取った。その際に部隊に対しては、待ち伏せ攻撃をするよう命じた。
6月28日、ロブノへ進撃していた第13装甲師団(ロートキルヒ少将)は第9機械化軍団の集中砲火の中に突っ込んで大きな損害を被ることになった。ロコソフスキーの待ち伏せ攻撃は成功したかに見えたが、第1装甲集団の東進を食い止めることは出来ず、ロブノを占領されてしまった。
両翼から執拗な反撃を受けた第1装甲集団は、空軍のJu88(シュトゥーカ)による航空支援と部隊の立て直しによって、前線に空けられた突破口を次々と塞いでいった。第48装甲軍団は第16装甲師団を中心とした増援部隊をドゥブノに派遣した。
6月29日、ドゥブノで第8機械化軍団のポーペル支隊が包囲された。これ以上の反撃は自軍の損害を増やすだけだと悟ったキルポノスは反撃の一時中止を決断し、各部隊の再編と退却を命じた。第8機械化軍団は東方のジトミールに脱出に転じたが、航空攻撃と湿地帯に行動を制限され、多くの部隊が大きな損害を被ってしまった。
6月30日、モスクワの「総司令部」は南西部正面軍に対し、前線を東方の旧国境地帯「スターリン線」まで撤退させるよう命じた。
南西部正面軍による激しい反撃は失敗したにせよ、南方軍集団の進撃を多少なりとも遅らせることには成功したのである。
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