第7話
『第一章 十月一日〜十日』
【十月一日(木)】
学校が終わってから部活なので十六時くらいには卓球場へ来れた。
一年生は僕よりも前に来ていたが台も出さずにスマホゲームをして盛り上がっていた。
僕は制服を脱ぎ、急いで練習着に着替え台を出しに行った。
それでも一年生は台を出そうとせずスマホゲームで盛り上がっている。
うちの高校の卓球場は狭く卓球台を横に六台出すのが限界だ。
無理をして五・六台目の横に縦に台を一台置いているので、感覚はとても狭い。
左利きが隣だと特に卓球場の狭さを感じられる。
五台目を出そうとした途端思い出したかのように一年生がやって来て六・七台目を出す。
最近はこんな感じの日が多い。
他の二年生とはクラスが違うため僕の方が早く来ることが多い。
それは仕方が無いことだと思っているが、なぜ僕よりも早く来ているのにスマホゲームで遊び台を出そうとしないのか僕には不思議でたまらない。
しかし、僕は何も言えなかった。
一年生が怖いわけではないが、夏休み前から何度も言っていて言う事を聞いてくれないのでもう諦めている。
実際、部活としてそのようなことは良くないとわかってはいるが、僕にはそんな力はまだない。
今の僕は部を犠牲にして自分が強くなろうとしているが本当にそれで強くなれるのか。
最近は
僕にとっては強い人が練習してくれること、好きな人が練習してくれることの二つで嬉しいが後者の方は部活中、封印している。
そうしなければ練習してくれている水瀬に失礼だと思うからだ。
その水瀬が来るまではサーブ練習をして待っている事にした。
僕のサーブは下回転・横下回転・ナックルの三つの回転だ。
二種類のサーブを使うが、下回転とナックルを相手がすぐに見破ってしまうので改善をしたいと思った。
横下回転とナックルはあまり見破られないのだが二種類のサーブとも回転が少ないのでどちらにしても、打たれてしまう。
ケンちゃんや
「小さくならず大きく腕を降ってラケットの先端でボールを擦り、当てる時にインパクトをつければ回転が今より出るよ」
とアドバイスをくれたのを思い出し、まずは見破られるか見破られないかではなく回転をかけることを意識してサーブ練習を行うことにした。
オーソドックスなサーブで、ボールを下から擦り、下回転をだそうとしている。
今までと違い大きく振りかぶるのでラケットが体に当たって痛い。
当てないようにとしているが、力が入りすぎてしまう。
力が入りすぎてしまうためボールもネットに引っかかってしまう。
このままでは試合にもならないと焦り始めたが、焦る分だけボールがネットに引っかかってしまう。
そんなときに
ピクッと驚き子犬みたいと笑われたがそのおかげて力が抜けサーブが入るようになった。
回転は・・・・まだあまり変化はないように感じる。
「レモンがサーブ練してるなんて明日雪でも降るの?」
「降りません! それより、今日なんかテンションマックスだね。何かあったの?」
佐倉はニヤニヤしながら話してもいいと目で訴えてくるのであえて、サーブ練を開始する。
「ひどくない? まあそのままでもいいけど。今日席替えでね窓側の後ろから二番目の席が当たったの! そこって主人公席じゃん! てことは、これから私を中心とした――――」
そんなことはありません。
佐倉がいじけながら卓球場を出ようとすると水瀬が卓球場へやってきた。
水瀬は何も言わず更衣室へ入り着替えに行った。
その様子を二人は同じような顔をしながら眺めていた。
サーブ練習で使っていたたくさんのボールとネットを片付け十六時半になり、
「基礎練やるよ〜」
僕しか打っていなかった静かなこの場所がうるさく騒がしい空間と変わった。
基礎練習はフォア・バックのラリー、フットワーク、二球目、三球目攻撃などを行っている。
ケンちゃんと佐倉のフォア打ちラリーととても速くタ・タ・タ・タ・タのタイミングで打っているのだが僕と水瀬のラリーはタン・タン・タン・タン・タンと遅いし、僕のミスが多い。
遊び感覚で今までやっていただけに速い球にまだなれていない。
それだけではなく、中学のコーチから習ったことが全て抜けて打ち方も汚くなっていたことに気づいた。
コーチに言われたことを思い出しながらフォア・バックとラリーをしたがなかなかうまくいかない。
フォームが崩れていた方がまだ入っていた。
そのまま三球目攻撃などを行ったがドライブもろくに打てず勝ちパターンを作っていかなくてはいけないのだが何をやっても自滅で終わってしまう。
サーブ練習も大切だがフォームが崩れているままでは何も始まらないので、明日も僕の方が水瀬よりも早く来ていたら一人でフォームの確認をしていようと決めた。
基礎練習を一時間行い残っている時間はだいたい一時間だ。
この後は毎回二チームに分かれて団体戦を行っている。
多分今日もそうなんだろう。
部長のケンちゃんはメニューをあまり考えてくれないので僕が考えて行動することになっているがまともに卓球を経験したことのない僕には団体戦しか思いつかない。
水瀬と佐倉に聞いてもいいんじゃないとしか帰ってこないことが多い。
「たまに申し込みだけでいいでしょ」
などと案は出してくれるが団体戦と申し込みしか基礎練習のあとは何も行っていない。
それが、うちの高校が弱い理由なら改善をしたいが良い改善策が見当たらない。
あ、うちの高校の新人戦の団体戦で予選は当たりくじが良く、予選は突破したが決勝トーナメントでは全敗して県大会には出場出来なかった。
予選も当たりが良くなければ落ちていただろう。
そんな高校だが春の総合体育大会では当たり関係なく決勝トーナメントに進出し、県大会に出たいと僕は思っているが今のこの状況では行けるかどうか・・・・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます