第18話 メンバー選考

 基本的に七人衆のメンバー選考に関しては温井紹春の何らかの思惑が働いたと考えてよいだろう、そこで温井紹春が最も考えていた事は大義名分であると考えられる。これがもしも紹春の私心により己の勢力を拡大するための制度だと思われればその瞬間に畠山家よりこの制度にストップがはいる。

システム自体が強固な力を発動するまではやはり守護の畠山家による鶴の一声の方が力をもつわけだ、とにかく紹春はこのシステムをうまく離陸させ安定軌道に乗せなければならなかった。その為の重要な駒が遊佐続光であった。自分の政敵を進んで七人衆に入れることによって周りからは温井紹春は私心の為にこの制度を創設したわけではないとアピールできる。


そういった大義名分を重んじているとアピールするメンバーと温井の息のかかったメンバーを絶妙なバランスで組み込むことによって七人衆制度はスタートしたのであった。




東京大学蔵文章にこの制度が存在していたという文章が残っている。能登の鳳至郡にある領地の寄進を許すという文章だ。そこには七人の最高責任者の名前と花押が押されてある。




               温井 紹春 花押

                長 続連 花押

               三宅 総広 花押

                平 総知 花押

               伊丹 総堅 花押

               遊佐 宗円 花押

               遊佐 続光 花押



この中ではっきりと温井派であるといえるのは温井紹春、三宅総広、そして遊佐宗円の三人だろう。対する遊佐派といえば遊佐続光ただ一人という状態である。残りの態度不鮮明な三人は、その時々の勝ち馬にのるタイプと考えてよいだろう。


とにかく続光は首の皮一枚残して生き残った。

もしも温井紹春に畠山家を超えるという野心がなければ殺されていただろう、そういう意味で続光は運がよかった。


だがそれでも続光は疑問に思っていた、重臣同士の争いを調停する為には重臣同士による寄り合い機関が必要であり、その寄り合いのメンバーは家中で利益が対立する者同士が望ましいという大義名分が大事なのは分かった、しかしそれが紹春にとって必要なのはしばらくの間だけではないだろうか?


この七人衆という制度が軌道にのれば続光はお払い箱になるのではないか?

その時、紹春は続光を生かしておくだろうか?


続光は背中に強烈な悪寒が走った。


「ワシは殺される、このままじゃと殺される」


かといって続光にそれを打開する案は思いつかず、七人衆の中で借りてきた猫のように過ごさざるを得なかった、守護代であるにも関わらずだ。


ちなみにこの制度の発足によって守護代という制度は存在はしているが意味のないものになったと考えてよいだろう。


七人衆の寄り合いで決定された事項は守護・守護代に覆す事はできず、実質的にこの寄り合いを牛耳る者こそが能登国の権力者の頂点になったのである。


遊佐続光の権威が失墜したことにより、七人衆の鍵を握るのは温井紹春と長続連の動向次第だった。

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