第15話 黒装束

長続連の軍隊は全てが黒で統一され、その行進が乱れる気配がなかった。

行進が乱れないというのは軍の戒律の厳しさをあらわしており、よく訓練された軍であることを示していた。混成の軍隊である遊佐続光の軍隊とは対照的である。



次の瞬間、続光は不思議な光景を目にすることになる。

その黒で統一された軍団が遊佐の包囲軍に対し足を速めたのだ、足を速めた軍隊は天を向いていた槍の穂先を遊佐軍に向けて前進してきていた。


これは誰がどうみても「突撃」である。


この最初の突撃で鞍川清房、清経親子の部隊が壊滅し包囲軍はパニック状態に陥った。この黒い塊の軍隊はまだ人を喰い足りないらしく、ちりぢりになった部隊を飲み込んでいった。


気づくと続光の周りには人がいなくなっていた。皆逃げ出したのだ。続光も慌てて逃げる。それと同時に城から温井の軍隊が飛び出してきた。


(殺すつもりだ!あいつら遊佐の者を全員殺すつもりだ!)


続光も雑兵の一人となって逃げる。

逃げながら続光は全てを理解した。


(あの珠洲を襲った謎の黒装束の一団とは長続連の軍隊であったのだ)


(温井は長がけっして遊佐側につかないことを知っておったのだ、それもそのはずだ・・・もうとっくの昔に長続連は温井総貞に調略されておったのだ・・・)


(ある時期を境に温井は急に武力衝突を望むようになった・・・これは長を調略し、長と対決しない事が決まっていたからであったのか・・・もっと慎重にそのことを考えるべきであった・・・)



遊佐続光は死に物狂いで領国である珠洲に逃げ帰った。



そして最後の徹底抗戦をするために珠洲にいる兵力を集結させた、その数僅かに100人。


しかし、待てど暮らせど追手がこない。

続光は数千の強大な軍団が自分を引きちぎりにくると想像していたのだが・・・。


2カ月ほどたって来たのは温井総貞からの1人の使者であった。

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