第14話 七尾城

遊佐軍は一時は七尾城を陥落させるほど強く攻めたが、結局七尾城は落城せず、その堅城ぶりを続光に見せつけた。普段この城に通っている時は、この山を足腰が鍛えられる程度にしかおもっていなかったのが、戦の相手をしてみるとこうも頑丈な城であったのかと感心せざるえない。




 実はこの七尾城、インターネットサイトの「Suzie」の生活というページの特集で==日本で4万あるお城の中で「最も難攻不落だったお城トップ5」==のベスト3にランクインしている。


1位は西南戦争時、西郷隆盛が2万の軍勢を使っても落城させることが出来なかった城として熊本城がランクイン。この時のセリフが有名で「官軍に負けたのではない清正公に負けたのだ」といったとか。

2位は鎌倉時代後期、楠木正成が迫る20万の幕府勢を翻弄して、鎌倉幕府が倒れるきっかけを作った千早城。これに続く3位という事は・・・おわかりだろうか?1位と2位が明治後と鎌倉時代後期であることを考えると、なんと戦国時代で最強のお城という事になる。秀吉の大阪城や北条氏の小田原城よりも上なのだ。こんなお城を攻めた続光はさぞ辛かっただろう、それから続光は城の力攻めを不可能と判断し遠巻きに包囲する戦術に切り替える事になる。


後に上杉謙信がこの城に挑戦するがやはり力攻めしてもビクともせず包囲しても持ちこたえ最終的に内応者に頼るしか無くなったというのは、この城がいかに堅固であるかという証明になるのではないだろうか。


まぁ軍神様がこの有様なのに続光ごときがおとせるわけがない。


とにかく、この時の続光は包囲するという選択をする。




数日後、待ちに待った長続連から連絡がある、もうすぐそちらにつくという便りであった。この時、続光は勝利を確信した。温井の主力は輪島にまだ健在だが、その主力の半分は先日の天神河原で葬ったばかりなのだ。つまり城の中に500人、輪島に1000人しか残っていない。こちらが1000人しかいないとなると輪島と城の温井勢に挟み撃ちにあう危険性があったのだ、だが長の1500人がこちらに加われば、輪島の温井軍を各個撃破できるほどの戦力を有することになる。



ここまでの辛い道のりが一気に報われた気になってくる。父の総光(早雲)が守護代職につけずに畠山家中から白い目で見られていた思いも、遊佐の領地である珠洲が温井総貞による虐殺で村がいくつも無くなったことも、全てが報われる。



数日後、長続連の軍隊が七尾に現れる。

そのいでたちは全身黒装束の武者達であった。


その光景が実に頼もしく映る。


しかし何やらその“いでたち”に不安を覚える。


「黒装束・・・」


この時の遊佐軍は七尾城を囲む為に薄く広く展開している。


そう「薄く」「広く」展開しているのであった。

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