第12話 能登の天文の内乱


西暦1550年、遊佐続光ついに挙兵する。



その一報は能登中を駆け巡った。これに手を叩いて喜んだのは他ならぬ温井総貞だった。


「阿呆せがれめ!ついにしびれをきらしたか!」


「父上の読みどおりにござるな」


「こうまでワシの為に踊ってくれるとはやはり阿呆よ、して挙兵した遊佐につき従ったのはどこぞ」


伝令がそれに答える


「平と鞍川の旗を確認しました」


一瞬、総貞と続宗が目を合わせる



「鞍川?」



どうも聞きなれない名である。そんな者達が能登にいただろうか?続宗が不思議そうな顔をしていると、総貞が一瞬早く気付く。



「氷見の鞍川か??」



氷見の鞍川とは能登ではなく越中の氷見地方の豪族である。この氷見地方と能登畠山家は少し複雑な歴史を持っている。


以前紹介したように越中は元々河内畠山家が守護をして治めていた、その越中の守護代の家系が神保家といい代々畠山家に仕えていた。だがこの神保家が畠山家から独立するという事件がおこる、これを征伐する為に能登畠山家と長尾家の合同軍が越中を攻めた、義総の代の話である。


この時に能登畠山家は越中に進出するための越中の最北端の地域である氷見に前線基地である【 湯山城 】を築き元々氷見の豪族であった八代氏にその防衛の任務につかせた。とにかくそのことで、氷見地方は神保と畠山のどちらの勢力も入り乱れる土地になった。



鞍川氏は氷見で神保派の重鎮として長らく神保家に仕えていたが、ある日突然能登畠山家に鞍替えをした。そのこともあってかあまり能登の事情に明るくない、続光はそこにつけこんだのである。




「鞍川殿は氷見の重鎮、こたびの戦で功があれば四家老の一角に推薦いたしましょう」



きっと鞍川氏にとってもこの続光の申し出は光り輝いていたに違いない。とにもかくにも鞍川氏の「鞍川清房」「鞍川清経」親子が続光の切り札として参戦したのだった。

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