どーでもいい知識その⑦ ウシとクジラは同じ仲間
波の反射を使った状況把握は、イルカやクジラの十八番だ。
彼等は頭部の脂肪「メロン体」を使い、二万から一六万ヘルツの
「ヘルツ」とは音の高さである
音は
音階の場合、高さが一つ上がるごとに
当然の話だが、水面に石を投げると波が生じる。同様に何らかの要因によって液体や気体が振動すると、波が発生して鼓膜に伝わる。これが音だ。
人間が聞き取れるのは二〇から二万ヘルツまでで、この範囲の音を「
また両者は歩幅も違う。
これは、大人と子供が並んで歩いていると考えると判りやすい。
歩幅の広い大人は一歩で長い距離を進める。一方、歩幅の狭い子供は、大人と同じ距離を進むのにも、小刻みに足を出さなければならない。
音の場合、この歩幅を「
音は秒速三四〇㍍――一秒間に三四〇㍍進む。
小学生でも知っている通り、山で「やっほー」すると他の山から声が跳ね返ってくる。この反響が山彦だ。
他方、同じように「やっほー」しても、コップや茶碗からは音が戻って来ない。食器くらい小さいと、大股の
小さい物体から音を返って来させるには、もっと歩幅を狭めなければならない。一〇〇ヘルツなら三.四㍍の波長も、一万ヘルツなら三.四㌢になる。道に石が落ちていても、大股の大人は
イルカやクジラが
音が広がれば、四方八方から波が返って来る。これではどこから返って来たのか判りにくい。またエサの魚を狙った場合、大股の音だと跳び越えてしまう可能性がある。
浴槽の
イルカの下顎には、反響を増幅させる脂肪が詰まっている。音はここを通り、鼓膜の奥にある
イルカのように骨で聞き取る音を、
人間も同様の能力を持っていて、骨で聞くヘッドホンも商品化されている。
歯をかち合わせた時の音や、誰より聞き慣れた自分の声、これも実は耳で捉えた音と
反響を捉えたイルカはそれを解析し、相手の位置、大きさを特定する。
彼等の
このように音波で状況を把握する能力を、「
同量の水を放つのでも、水鉄砲と広範囲に散布する霧吹きでは勢いが違う。
広がりにくい
イルカ同様、
「さーて、敵さんの残存兵力はどーかしら」
マントを振るのをやめた〈ダイホーン〉は、モニター上にあるビデオテープのアイコンに目を合わせた。
変身後の一部始終を録画しているレコーダーが起動し、モニター上部をサムネ状の画像が横断する。ハゲモグラの映ったそれを目線でドラッグし、逆波によって小石の位置まで把握したクワガタさんに重ねると、迷わずに首を振った。少なくとも光の波が届く範囲に、同じ形をした物体はない。
確かにナスの攻撃範囲、威力には特筆すべきものがある。小動物のハゲモグラなら、命中せずとも爆発後の延焼でウェルダンに出来る。
ただ今回の場合、元々が視界を肉色に塗り替える数だ。到底焼き尽くせたとは思えない。恐らく彼等は全滅したのではなく、形勢不利と見て引き下がったのだろう。
「修理班」の
ピンポーン!
途端にウルトラクイズっぽい効果音が響き、頼れる相棒が鐘の下を指した。参道へ這い出ていた上半身は消し炭と化したが、下半身は青銅のシェルターに守られたらしい。
〈ダイホーン〉はアルコール漬けの魔王とは違う。普段なら死体を蹴るような真似はしない。
――が、今回は話が別だ。
普通の生物なら「遺体の一部」と形容される下半身も、餓鬼の場合は合体した大群に他ならない。安全と言う単語を使うには、指一本まで火葬する必要がある。
「
ゴーン! と格調高い重低音が轟き、釣り鐘の表面に「米」の字そっくりの亀裂が走る。煙幕のようにススが噴き上がり、
「向こうは女の子でウチはナスか。色っぽくてイヤんなっちゃう」
日本には先祖の霊が帰郷するお盆に、旅の足となる
なぜ行きと帰りで別々の交通手段を用意するのか?
これには双方の速さが関係している。
駿足のウマに乗れば、楽しいシャバに素早く戻って来ることが出来る。一方、帰りはのろいウシを使うことで、辛気臭いあの世への送還を、牛歩戦術的に遅らせると言うわけだ。
ただし、〈ダイホーン〉は世のご先祖様に忠告がある。
不信心な現代人に乗り物を準備してもらえなかったからと言って、水牛の吐くウシには絶対乗ってはいけない。そのウシ、ウシはウシでもランボルギーニだ。帰りの足になんかしたら、ものの数秒後には
また新しい被告を
フリスビー状の金属片と共に飛び交ったのは、爆発的な地響き。縦横入り交じった震動が〈ダイホーン〉の視界を
熱せられた空気が上昇気流となり、少しずつ黒煙を晴らしていく――。
壁のごとく釣り鐘が
熔岩のように赤熱し、ばらばらと転がった青銅の破片だけが、そこに何があったのかを
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