第33話 全米連邦 チリ州 サンティアゴ市 プラザコースト エントランス

プラザコーストのエントランス前の大通りには、RPGー7の餌食になったM4AT小隊が見せしめとばかりに擱座する


エントランス前には別れを惜しむ、美久里阿南北浜

阿南、揚々と 

「ここでお別れとは寂しいですね、やはり空港までお見送りしますよ」

美久里、頬笑む

「いいえ、9時には使いの者が来ます」近くのポーターのカートにはキャリーバッグ3個と巨大白猫のぬいぐるみ

阿南、首を傾げるも

「使いの者ですか、」

北浜、苦笑しては

「やはり、最後迄ピンと来ないか」

美久里、微笑

「ええ、これでも資産家ですからね 阿南さん、お金持ちは嫌いですか」

阿南、不思議顔で

「資産家ですか、嫌いも何も、いや成金が嫌いなだけです」

美久里、破顔

「それなら良かったです、ちゃんと社会に貢献してますよ」

阿南、逡巡しては

「しかし、経歴書に載ってたかな 美久里さん銀行員でしょう、改めてお嬢様がこんな無茶されては、私が怒られますよ」

美久里、改めて

「家族親族は2055年の事故で皆死に別れました、寂しい事を言いますね」

阿南、慌てては

「ああ、いや失礼、ここはお友達にですね、宮武はしばし置いといて」

美久里、転けては

「はは、」

北浜、被せては

「しかし、今回の件でお仲間が増えましたよ、これから先もです」

阿南、踏み出しては

「そう、美久里さんも80才なら、まだ若い 語弊有りますが、見た目はまだまだ20才そこそこです、これからでも家族は作れますよ」

美久里、苦笑しては

「そこが難しいのですよ、取引先等の縛りで自由恋愛はほぼ皆無ですからね」

阿南、大仰に

「そこは、また旅に出たら宜しいでしょう、そこでは窘める人などいませんよ」

北浜、従容と

「阿南、止めておけ、また招集されるぞ」

美久里、頬笑み

「それ、いいですね 困ったお客様紹介しては、また『あなたの向こうで』に出演しますよ」

阿南、手を差し伸べる

「ええ、喜んで、但し今回の様に豪快な回は控えめにして下さい」

美久里、手を差し伸べ

「阿南さん、弁えてますよ」阿南と握手、がっちりと、かなりがっちりと

阿南、顔が強ばる

「美久里さん、筋目読まれてますね、私でも折れますよ、」

美久里、破顔

「ふふ、」北浜に向き直り「北浜さんもですよ」

北浜、恐る恐る

「痛いのは無しですよ」こわごわと手を差し出す

美久里、手を差し伸べ、にこりと

「大丈夫ですよ」北浜と固く握手

北浜、絶叫

「おおおー」


朝9時、時間通りエントランスにリムジンが乗り付けては、透かさずドアマンがドアを開け、美久里が滑り込む様に乗り込む

阿南、呆然と

「美久里さん、この車、トヨタ:センチュリービリオネア、この紋章、一橋財閥ですか」目を見開く

美久里、こくりと

「またお会いしましょう、阿南さん、北浜さん、グッドラック、」乗り込んだ席から親指を上げる

阿南、漸く得心

「グッドラック!」渾身のポーズ

北浜、負けじと

「グッドラック!」ポーズを固める

美久里、祈る様に

「皆さんに幸あれ」

ゆっくりドアマンが後部ドアを閉め、程なく発車


歩み寄る、保科総支配人

「いやー、絵になりますな、現時点では良いラストシーンです」ビデオカメラを下げては茶目っ気たっぷりに親指を立てる

北浜、親指を立てては

「決まったな」

阿南、これでもかと

「勿論ですよ」尚も親指を立てる



復興に勤しむサンティアゴ市内を走るリムジン

初老に入ろうかの、三坂

「美久里様 一橋財閥としても、そろそろ第三次世界大戦復興の次の段階に入らねばならないのに、おふざけが過ぎますよ」

美久里、溜息も深く

「ふう、三坂専務きっと来ると思ってましたよ 各種案件は概ね結構です、まずは人材の確保をしなくてはいけません」

三坂、ほくそ笑む様に

「所詮は高性能コンピューターの前では人材など アップル、IBM、HP等々全部買い取った一橋財団を甘く見られては困ります」

美久里、凛と

「三坂専務そうでしょうか 人類の最高峰と謳われたオートマシーンも所詮は延命のタネ、そしてもし今回ドミネーターが流出していたら、またもや戦争のきっかけとなり第四次世界大戦になっていたでしょうね、たかが蟯虫紛いにですよ ハイテクノロジーはやはり危険です、身の丈に合った世界で生きるべきです」

三坂、従容と

「極端な選択ですね いつまで戦中のおつもりです、私もこの齢に至り長過ぎる人生ですが、このままではいけないと焦っております 如何です、人の進むべき道を遮るのは無理が有ります 例え戦争が始まっても問題は有りません、豊富な資金力とコネクションを元に如何様にでも収めましょう 美久里様、進むべき道を確と見据えて下さい」

美久里、ぴしゃりと

「三坂さん、第三次世界大戦を看過した結果が今日迄の顛末です、滅多な事は言わない様にお願いします」

三坂、慇懃に

「これは失礼しました これ以上は水掛け論ですね」

美久里、くすりと心が澄み渡る様に

「いいえ、切に真理を述べています」

三坂、微笑

「その笑顔初めてお見受けします さては宿願のお役目ご苦労様でした それではご機嫌直しにこれをどうぞ 気掛かりの案件です」アタッシュケースから調査書の封筒を差し出す

美久里、封筒を開き

宮武誉みやたけほまれ、察しが良い事ですね 保科さんにも気苦労掛けますね」苦笑

三坂、感嘆

「美久里様の慧眼には毎度恐れ入ります 宮武誉、文武両道、一先ず子種が出来たら追い払いましょう」

美久里、調査書をぱらぱらと碌に見ようともせず

「三坂さんも、えげつない条件出しますね」調査書を突き返す

三坂、溜息混じりに

「一橋財閥の未来を憂い、美久里様の夢を叶えるなら、妥当なスケジュールです 男女問わず子供は可愛いですよ」

美久里、剥れるも

「三坂さん、個人的な事は二度と口を挟まない様に、もう」

三坂、慇懃に

「分かりました、と言いたいですが、ご機嫌の良い日に改めてご提案させて頂きます」

美久里、頬を膨らませ

「まず武士への敬意が足りませんよ、追い出すなんて本当に、凄い伸びしろの人達なんですよ」

三坂、尚も

「さて、言葉尻を捉えるなら、彼等が救世主とでも 間近に見られて昨日迄の戦さ振りでは無理もありませんか」

美久里、目をゆっくり閉じ

「それは、まだ先のお話です、全ては御心のままに」胸で十字を切り胸で手を組む

三坂も付き添い

「御心のままに」胸で十字を切り胸で手を組む

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